地獄からのクライアント!?
- Dig It! NYC Vol.34
- Dig It! NYC 藤井さゆり
夏ですね!NYでは、巷で子どもたちが水遊びをしていたり、公園の芝生エリアでは水着姿で日光浴をする女性がいたり、街を行く男性が上半身裸だったりと、男女とも露出度が高くなり、夏真っ盛りといった感じです。みなさまは、いかがお過ごしでしょうか?
私はつい最近まで、母親が運営する音楽教室のウェブサイトを作っていました。 前々から「作ってよー」と言われていたものの、なかなか重い腰が上がらず、最近になって時間ができたので、ようやく作ることになりました。
が、しかし・・・ウェブ制作をするにも、教室案内も作っていないので、必要な画像素材や、テキストの用意がないのです!これは困ったクライアントさんです(笑)過去の発表会で撮影した写真があるのですが、生徒と先生の集合写真で、これは使えず。
結局、ロゴも一から制作、キャッチコピーなども含め、すべて自分で文章を起こすことになりました。時間もなく、お金はあまりかけられないので、画像を購入するにもどうしようと思っていたところ、子供ウケしそうなかわいい動物イラストを描いている作家さんのサイトを見つけ、連絡したところ無料使用オーケーとの快いお返事を頂戴し、使用させていただくことができました。
さらに、ウェブサイト制作のほか、発表会で使う看板、教室案内のチラシも同時進行で作ることになりました。無事、締め切り日までには納品できたのですが、ドメインや、サーバーの用意なども必要で、「ドメインとは・・・、サーバーとは・・・」と母親に一から説明しなくてはならず、ウェブサイト&パソコンの知識がないクライアントさんとお仕事をするのは、結構大変だなーと実感した次第です(笑)
しかもクライアント様(母親)からの予期せぬ発言。
「ここのテキストの色、グレーよりも黒がはっきりしていいのでは?」 (色に関して言ってくるなんて・・・正直ノーマークでした)
「ごめん、3枚の看板のうち、1つはキャンセルで」 (この時点ですべて制作済み、データを印刷会社に送る直前でした)
(グレーのテキストを黒に変えたところ) 「やっぱりグレーのほうがおしゃれっぽくてよかったかも」
私:(メールで)「看板届いてると思うけど、サイズは大丈夫そう?」 母:(返信メール)「送ってくれた(看板とは関係のない)添付画像の印刷ができないので、スカイプして」(私の質問への回答は?無視ですか?)
この場合、対会社のようなきちんとしたお仕事ではなく、家族同士だからあり得るのだとは思います。ですが、クライアントさんとお仕事をされているクリエイターさんには、これに近い苦笑い的な出来事、経験あるのではないでしょうか?
母親とのこのやりとりを友人に話したところ、「それは、CLIIENTS FROM HELLだね」と言われ、面白いサイトを紹介されました。
CLIENTS FROM HELLでは、「これアリ?」というようなクライアントからの発言や依頼を、クリエイター同士が投稿してシェアしているサイトなのですが、これが結構面白いのです。
以下、すべてCLIIENTS FROM HELLより引用。
「こんな感じにサイトを作れる?」 (真ん中に「画像」、まわりに丸い枠と四角の枠が散りばめられている図)
クライアント:「ウェブサイトは素晴らしい。が、もっと子どもたちの画像が必要だと思う。子どもたちの画像が取得できるデータベースを知ってる?」 -その後しばらくして、2回目のEメール。 クライアント:「今自分が言ってたことに気付いたんだけど、"子どもたちの画像が必要だ"って書いた、私のEメールを全部無視、かつ削除してください」
「矢印をもっとセクシーにできますか?」
「輪郭が太すぎるので、半ピクセル細くできません?」 -ピクセルが私たちが計測できる最小サイズだということを知らないクライアントより
私:「マックかウィンドウズ、どちらをお持ちか知りたいだけなんです」 クライアント:「(何秒か沈黙後)DELLを持ってるよ」
オチの流れがいかにもアメリカのコメディっぽいですよね。こういった「はてな?」なクライアントとのやりとりは、世界共通かもしれません。
見方によれば他人を嘲笑しているような、ある意味2ちゃん的な感じもあるかもしれませんが、どちらかと言うと、スタンドアップコメディのノリ、ユーモアなんだと思います。アメリカのコメディアンが社会的ジョークを飛ばして、市民の気持ちを代弁するように、CLIENTS FROM HELLでは、「あるある!」的なクリエイターの日常、気持ちを代弁していて、共感しつつ思わず笑ってしまう投稿が多く載っているんです。
さらに、CLIENTS FROM HELL STOREもあり、Tシャツ、ポスター、ストレスボール、ステッカーなどを売っています。また、過去の投稿をネタに本も作っていました(価格はアマゾンで12.99ドル/1,328円)。商売してるなあ。
制作で煮詰まったときには、このサイトをのぞいてみてはいかがでしょうか。「私だけじゃないんだなー」とガス抜きを適度にして、クライアントさんとよい関係を保ちつつ、さらによいお仕事ができるといいですよね。結局、クライアントさんがいないと、お仕事ができないのですから。
■CLIENTS FROM HELL http://clientsfromhell.net/
Profile of 藤井さゆり
東京生まれ、アメリカ在住。日本とアメリカでの職務経験あり。
東京丸の内にある公益法人にて8年間勤務の傍ら、友人が企画したクラブイベントのフライヤーや、CDジャケットのデザインを行う。
公益法人では「地方の街づくり・街おこし」支援事業の一環で、ウェブサイト業務に携わる。 公益法人退職後、2004年より4年間、都内商業施設のサイト更新・管理、販促サイトのキャンペーンページ企画と取材・撮影を含めたライティングワーク、ウェブデザインを経験。
2008年ニューヨークに移住。ニューヨークではウェブマーケティング、サイト管理を企業にて経験、それと共にウェブデザインとライティングワークをフリーランスとして行う。現在は日本の着物をインスパイアしたオリジナルTシャツブランド「Foxy Lilly」を立ち上げ、オーナー兼デザイナーを務める。
Foxylilly.com
facebook.com/foxylilly
instagram.com/foxylilly