WEB・モバイル2012.02.01

オバマとネットと大統領選

Dig It! NYC Vol.40
Dig It! NYC 藤井さゆり
Illustration by Obey Giant.

Illustration by Obey Giant.

 

来る2012年11月、次期アメリカ大統領が誕生します。

えっ、こないだオバマに決まったばかりじゃん?と思っていたら、あれは2008年のこと。「Yes we can!」って言っていたのも約4年前。時が経つの、早すぎっ!アメリカでは大統領の任期は4年、即ち4年に一度選挙が行われ、前任者が再選すると最長で8年の任期となります。ブッシュは再選されて8年やっていました。

いやー、それにしても、大統領選、面白いです。いろんな意味で。

アメリカは民主党(与党)と共和党(野党)の2大政党から成っていて、民主党からはすでにオバマ大統領が再選出馬表明を、共和党からも対立候補者として4名(2012年1月27日時点)が出ており、最終的にはオバマVS共和党からの最終候補者となります。

現在、共和党内の候補者指名争いで、目下メラメラな戦いが繰り広げられ中。

全米各州での予備選とともに行われる候補者同士のディベートが週1回の頻度で行われ、対立候補の否定的な情報を流してイメージを落とすための宣伝をする日本人からするとエグい?「ネガティブキャンペーン」も本格的に。

OBAMA isn't working

 

ネガティブキャンペーンの一例。共和党、ミット・ロムニーウェブサイトより。Obama isn't working=オバマは機能していない。職業斡旋所に並ぶ人々の長い列、オバマは雇用創出していないという皮肉。

ところで、アメリカの選挙活動に欠かせないのがメディア、広告。その広告にどのくらいのお金が動いているのかご存知ですか?

2008年には、なんと、7億1,150万ドル(約54億5千万円)。その中で、インターネット広告だけでも、4,357万7,879ドル(約33億4千万円)がかかっています!日本の選挙では考えられない世界です。

opensecrets.orgより。2008年大統領選にかかった支出内訳。

opensecrets.orgより。2008年大統領選にかかった支出内訳。

 

アメリカの選挙活動では広告に最もコストがかかるため、候補者は非常に多くのお金が必要となります。なので、候補者は有権者から支持(献金)を集められないと、資金不足となり、途中で脱落することとなるのです。金を制するものが選挙を制するーそれがアメリカ大統領選挙です。

ちなみに、2008年当時、オバマが調達した資金は745億ドル。対抗候補者であった共和党のマケインが調達した資金が368億ドルなので、それと比べると、雲泥の差です。(今年のキャンペーンでは、すでに2011年9月時点でオバマは40億8千万ドルを集めており、次点は共和党のロムニーで13億9千万ドル)※以上opensecrets.orgより

オバマがこんなに多くの資金を集め、大統領選で勝ったのは、第18回(ソーシャルメディアと社会貢献)でも書いた通り、ネット、主にソーシャルメディアの活用により若者の支持を掴んだことが影響として挙げられています。ネットがなかったら、オバマ大統領の誕生はなかっただろうとも言われているようですね。

その背景として、フェイスブックの創始者の一人であったクリス・ヒュージをソーシャルメディア戦略の統括として起用したり、専用のアイフォンアプリ開発など、 新しいテクノロジーを積極的に採用してきたオバマ。

2006年当時には、キャンペーンロゴ制作のため、オバマの地元、シカゴにあるSender LLCというデザイン会社を迎えていますが、その過程でもオバマはいままでにない、新しい形を模索しています。(ロゴ制作に関わり、会社代表であったソル・センダーのインタビューより)注目は、キャンペーンロゴがどのように進化を遂げるのか、その過程について語られているところ。

Sender LLC代表(当時)ソル・センダー氏

Sender LLC代表(当時)ソル・センダー氏

過去の候補者のキャンペーンロゴ

過去の候補者のキャンペーンロゴ

 
最初の段階でのロゴ案

最初の段階でのロゴ案

最終候補案の3点、ファイナリストは一番右のロゴ。

最終候補案の3点、ファイナリストは一番右のロゴ。

 

1:54位からロゴ制作についての話が始まります。

 

過去の候補者のロゴと比べると、オバマが新しいスタイルを求めていて、ファイナルバージョンが、ユニークさ、空間、動きがあり、いかに洗練されたものであるかがわかります。まさに"Change"です。

さて、2012年のオバマは…?!

共和党候補者の熾烈な争いも本格的になってきたこの頃、オバマもネット上で動きを見せています。

1月30日には、ホワイトハウスのGoogle+上で、ハングアウト機能によるオバマ氏と一般ユーザーによるビデオ討論が開催。参加できるのは、事前にホワイトハウスがユーチューブ上で募った公開質問の中で、投票が多かった質問をした人々。一般人が直接大統領と話せるチャンスがあるって、考えたらすごいことですよね。

公開ビデオ討論会の様子

公開ビデオ討論会の様子

 
YouTubeから応募、選出された参加者

YouTubeから応募、選出された参加者

討論会に参加するオバマ氏の様子

討論会に参加するオバマ氏の様子

 

それ以外に新しい試みとして、tumblr(タンブラー)をスタートしています。tumblrについては第33回(NY発!マイクロブログ~Tumblr~)で紹介しましたが、ソーシャルの面で断然機能的ですし、使いやすさと認知度も高く、選ばれたのがわかります。これによりtumblr、今後ももっと注目されそうです。

その他、ツイッターは以前、全てスタッフが管理していたものを、オバマが自らツイートし始めたり、ファーストレディであるミッシェル・オバマもツイッターを始めましたね。スタッフのツイートと区別するために、オバマ氏自身のツイートの時は文面の最後にBO、ミッシェルはMOと、自身の署名を付けているようです。

ミッシェル・オバマ自身のツイート

ミッシェル・オバマ自身のツイート

 

上記全ての動きは、再選の向けてのキャンペーンの一環なのでしょうし、時代の波に乗って、うまくネットを使っているのはもちろんなのですが、オバマの場合、ネットを介して有権者である一般人とより近いコミュニケーションを取ろうとしている点が、評価されることだと思います。

もちろん一番大事なことは政策ですけれでも!

オバマのネットをうまく活用して支持者を増やしていくやり方、会社がお客さんを増やすやり方としても参考になりそうですよね。オバマのウェブサイトもスッキリ感があってイイ感じですので、ぜひ見てください。

Profile of 藤井さゆり

藤井さゆり

東京生まれ、アメリカ在住。日本とアメリカでの職務経験あり。
東京丸の内にある公益法人にて8年間勤務の傍ら、友人が企画したクラブイベントのフライヤーや、CDジャケットのデザインを行う。
公益法人では「地方の街づくり・街おこし」支援事業の一環で、ウェブサイト業務に携わる。 公益法人退職後、2004年より4年間、都内商業施設のサイト更新・管理、販促サイトのキャンペーンページ企画と取材・撮影を含めたライティングワーク、ウェブデザインを経験。
2008年ニューヨークに移住。ニューヨークではウェブマーケティング、サイト管理を企業にて経験、それと共にウェブデザインとライティングワークをフリーランスとして行う。現在は日本の着物をインスパイアしたオリジナルTシャツブランド「Foxy Lilly」を立ち上げ、オーナー兼デザイナーを務める。
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