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日本初の実写長編デジタル3D映画 『戦慄迷宮 3D』を語る

Vol.54
映画監督 清水崇(Takashi Shimizu)氏
 
いろいろ言う必要は、ないでしょう。日本のホラー映画界が、世界に誇る監督です。『呪怨』シリーズで、誰にも真似できない恐怖をつくりだし、ついにはハリウッドに招聘されて興行成績第1位となる作品も送り出した。そんな清水さんが、3年間の沈黙を破って(本人曰く、「ちょっと休んだけど、他の仕事でしっかりがんばっていた」とのことですが)リリースする劇場公開映画は、日本初のデジタル3D実写長編によるスリラー『戦慄迷宮 3D』。第66回ヴェネチア国際映画祭では、“ワールドプレミア 3D フッテージ”上映されました。作品の性格上、「ネタバレ」回避のために内容にはほとんど触れられないのが残念ですが、かなり怖くて綺麗なムービーでした。

『戦慄迷宮 3D』 10月17日(土)より全国ロードショー! ■『戦慄迷宮 3D』オフィシャルサイト http://3d-shock.asmik-ace.co.jp/

日本初の実写長編デジタル3D映画『戦慄迷宮 3D』、 とうとう完成!

とうとう完成した『戦慄迷宮 3D』ですが、監督として、満足度は?

自分らしい、おもしろい作品に仕上がったと満足しています。ただ、まだ完成したばかりで、公開も近いので客観的には把握しきれていない部分があります(笑)。デジタル3Dの長編映画製作は、僕もスタッフも全く初めての経験でしたから。

どんな点に気をつけた?

効果としては3Dを使いますが、すべてがその技術に寄りかかった映画ではいけない。通常の2D上映で観ても、面白くなくてはならないと考えました。

恐怖のクライマックスのひとつであるウサギのリュックが飛ぶシーンなどは、3Dならではの演出もありましたが、それをはずしても映像としてとても綺麗だった。

あのシーンは、とても手間がかかっています。もちろん、3D効果を意識した場面ですが、それを抜いても「とにかく美しい」シーンにしたかった。時間のない中、CGチームに次々新たな要求を出して、完成ギリギリまで手を加えてもらいました。

樹海を俯瞰でとらえた風景映像も、驚くほど綺麗で、デジタル3Dにはこんな効果もあるのだとわかりました。

「記憶の迷走」という裏テーマを暗喩するために、樹海はとても重要なモチーフでした。撮ってみて、想像を超えて風景が綺麗に撮れるとの感想は、僕自身感じました。

役者さん、つまり写っている人間のリアリティも、2Dにはないものでした。

確かに…特に女優陣の体や目鼻立ちの凹凸や丸いラインは意識されますよね(笑)。映像を確認しながら、少々「困った」と思ったほどです。この役は、あんまりセクシーであってほしくないのに、なんてね。 表情や存在感もクリアに再現されますから、メイクはもとより体調管理まで、役者さんは大変でしょうね。

3Dは長回しが生きるが、それはホラー、スリラーの手法とは 矛盾する。そこをしっかり頭に入れた。

3年ぶりの劇場公開映画です。

たしかに、それはそのとおりです。ですが、3年間長編を手掛けなかっただけで、TVや自主製作などで作品作りはしていましたから「久しぶり」という感覚はあまりありません。

本格的3D映画を演出した監督第1号という称号も得ることになりますね。

野心家ではないので、そんな大袈裟に受け取られると…。僕自身は機械音痴なアナログ人間ですし。たまたまです。

演出上の3Dの扱いで気をつけた点は?

3Dという技術には、演出上、長回しが生きるという特徴があります。ですがその特徴は、カットバックが多用されがちなホラー、スリラー、アクションなどの手法とは明らかに矛盾する。まず、それをしっかり頭に入れました。もうひとつ大事な点は、3Dは観客の目に負担をかける側面があること。その辺を総合して、「ロングと寄りを極端にカットバックしない」を心がけて演出しました。

この作品でも「飛び出し」の演出はありましたし、映像がすべて2Dにはない立体感を持っています。「飛び出し」や「でっぱり」の度合いは、撮影中に把握できるのですか?

今回の撮影は、その点が素晴らしかった。撮影時、まだ日本にはなかった立体映像を確認できるモニターを韓国から取り寄せてもらっていたので、現場の時点でカットごとにすべて専用メガネをかけて、3D基準値によるバランスを確認しながら撮影できたんです。

撮影開始ぎりぎりまで、専用カメラ開発がつづいた。 だが、むしろ、それが現場の結束力につながった。

日本初の本格的3D映画を手がけた感想をお聞かせください。演出家としては、こういう大仕掛けな、革新的な技術のプロジェクトは躊躇する部分もあると思うのですが。

躊躇は、確かにありましたね。3D技術をどこまで使いこなせるかの、検討がつきませんでしたから。ですから製作サイドにはどんなことがどれくらいできる技術なのかは何度も確かめましたし、既存の3D映画の研究などもかなりしました。仕上げの体制についても、かなりつっこんだ質問を繰り返しましたね。

で、結局、撮影開始ギリギリまで専用カメラの開発がつづいたと聞いています。撮影の現場には、それなりの負担もあったのでは?

「いつになったらカメラテストができるのだろう」とやきもきしたのは、事実です。ですが今回の場合、むしろそんな要因が現場の結束力を生んでくれました。総体として、俳優も含めた参加者全員が楽しんで取り組めました。

最後に、読者である若手クリエイターたちにエールをお願いします。

人には、自分でこそ気付いていない、しかし自分にしかない能力やセンスがあるものです。周囲から引き出してもらえることもありますが、最初は誰でも0からの出発です。ですから、そんな運気を呼び込むためにも、どんな規制や事情があろうと、その時点での自分の土俵で精一杯やるしかありません。それはプロになっても一緒です。外に向かって、「恥ずかしがらずに」取り組むだけです。

取材日:2009年8月21日

Profile of 清水崇

清水崇氏

2001年、『富江 re-birth』で映画監督デビュー。 2004年には自らの手で『呪怨』のハリウッドリメイク版『The Grudge』(邦題『THE JUON/呪怨』)を製作して、日本人監督の実写作品としては初めて全米興行成績No.1を獲得する。2006年には続編『The Grudge2』(邦題『呪怨 パンデミック』)も全米興行収入初登場1位となる。

【作品】(劇場公開映画)
2001年『富江 re-birth』
2002年『呪怨』
2003年~『呪怨2』
2004年~『The Grudge』(邦題『THE JUON/呪怨』)
2006年~『The Grudge2』(邦題『呪怨 パンデミック』)
2009年~『戦慄迷宮 3D』
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