【新作映画情報】『宇宙でいちばんあかるい屋根』9月4日全国公開

東京
映画プロデューサー
【新作映画情報】Vol.08
村田徹

なんて綺麗な映画なんだろう。
私が率直に思ったこの映画の印象です。

映像の中に映っている全てが美しい。
観終わった後に、久しぶりにそんな気持ちさせてくれる作品でした。

撮影を行っているロケーション、人物(家族)の設定、主人公の部屋、街並み、水族館のクラゲの水槽(メインビジュアルになってますね)、そしてこの作品で最も重要となるビルの屋上から眺める星空、などなど・・・。
とにかく美術や照明、衣装、小道具に至るまで、画作りの全てに美しさへのこだわりが感じられました。

そして何よりも美しいのは、主人公つばめ(清原果耶)と星ばあ(桃井かおり)との関係。
そして、このお二人の涙。

原作は、小説すばるで新人賞の受賞歴がある、野中ともそさんの大人気小説「宇宙でいちばんあかるい屋根」
私は残念ながら未読ですが、心が洗われるとても素敵なお話なんだろうと思います。
そんな原作から生まれたストーリー(脚本)はもちろん美しい。

でもこういう作品をちゃんと成立させることは、とても難しいんじゃないかなと思います。
とてつもなく悪い奴や人をだますような悪者はほとんど出てきませんし、大逆転もありません。
(ドラマ「半沢直樹」とは真逆!?笑)
つまり大きなドラマやハプニングが少ない。
心の機微が淡々と描かれていく、そんな映画なんです。
でもそれって、普通に考えたら退屈じゃありませんか?

だからこそ、このような作品を成立させることは難しいのではないかと思うのです。

この難題から素晴らしい作品を生み出したのは藤井道人監督。
昨年、映画「新聞記者」で、第43回日本アカデミー賞最優秀作品賞を受賞した監督です。

「新聞記者」をご覧になった方は、この作品を観て驚くかもしれませんね。
なんたって本作は“ファンタジー”です。 カラーが全く異なります(笑)
日本アカデミー賞授賞監督の最新作ですから、否が応でも当然注目は集まりますが、別の意味でも注目されてしまいました。

 

この作品の勝因は、なんといってもキャスティングの妙と実力派俳優の起用だと思います。
(監督の演出と脚本の良さを大前提として。)

主人公のつばめは、藤井監督が当初はオーディションでキャスティングをするつもりだったとか。
今回、初主演となった清原果耶さんは、藤井監督の過去の作品に出演されていたものの、全く異なるキャラクターだった為、当初は考えにも及ばなかったようですが、清原さんの主演ドラマ「透明なゆりかご」を観たプロデューサーからの提案で、確信を持って選んだのだそうです。
様々な要因で心が揺れ動く繊細な女子学生を見事に演じています。
そして、星ばあを演じた桃井かおりさんは、私が申し上げるまでもありません。
ファンキーでクレイジーでミステリアスのおばあちゃん役にピッタリ。

清原果耶さんは、2021年春 NHK連続テレビ小説「おかえりモネ」のヒロインに抜擢される等、今最も注目されている若手実力派女優ですが、私はこの映画を観るまで、正直あまり存じ上げていませんでした。

実は私は、この映画の冒頭から、相手が桃井さんなのに「あれ?このコで大丈夫かな?」と不安を感じながら観ていました。
(桃井さんはいつも通りの桃井さん)
ところが、ストーリーが進むにつれ、波長が合うかのように清原さんの演技がどんどん良くなっていくのです。
最後には桃井さんと堂々と渡り合っているかのようにも・・・。
これは監督の策略なのか、彼女の天賦の才なのかは分かりませんが、主人公の成長と清原果耶さん本人の成長が重なり合っているようにも見え、より感情移入が出来る要因になっていたように思います。

主人公つばめの両親を演じた、吉岡秀隆さんと坂井真紀さん、本当に素晴らしかったです。
つばめが恋心を寄せるお隣の大学生には、今や飛ぶ鳥を落とす勢いの伊藤健太郎くん。
自然で等身大の演技に好感が持てます。

そして私が何よりも注目したのは、撮影手法です。
「宇宙でいちばんあかるい屋根」というタイトルを印象付けるかのごとく、幾度も繰り返される「俯瞰」からの撮影。
街並みの屋根を映し出す目的なのは分かりますが、様々なシーンで同様の撮影方法が用いられ、この俯瞰の映像が、結果的にストーリーをより印象づけることに繋がっています。

「懐かしくていとおしい、
 大切な心を探す奇跡と愛の物語」

大人の私たちには、当時学生だった自分に引き戻されたかのような懐かしい気持ちに触れることができるでしょう。
そして、家族の絆や自分を見守ってくれる大切な人たちを、改めて感じさせてくれる、そんな優しい気持ちになれる映画だと思います。
是非、ご覧ください。


『宇宙でいちばんあかるい屋根』
9月4日(金) 全国ロードショー

出演:清原果耶
   伊藤健太郎 水野美紀 山中 崇 醍醐虎汰朗 坂井真紀 吉岡秀隆
   桃井かおり
主題歌:清原果耶「今とあの頃の僕ら」(カラフルレコーズ/ビクター)
作詞・作曲・プロデュース:Cocco
脚本・監督:藤井道人
原作: 野中ともそ「宇宙でいちばんあかるい屋根」(光文社文庫刊)

配給: KADOKAWA

https://uchu-ichi.jp/

©2020『宇宙でいちばんあかるい屋根』製作委員会

プロフィール
映画プロデューサー
村田徹
㈱フェローズ コンテンツマネジメントセクション マネージャー/映画「スパイの妻」2020年10月16日公開/映画「滑走路」2020年11月20日公開/「ブルーヘブンを君に」2021年公開予定/映画「恋のしずく」2018年10月公開/映画「カノン」 2016年10月公開/映画「ちょき」2016年11月公開/短編映画祭「フェローズフィルムフェスティバル学生部門」/東京在住・石川県金沢市出身

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