パンフレットにはみんなの愛と情熱がいっぱい詰まっているんです

東京
エンタメ批評家・インタビュアー・ライター
これだから演劇鑑賞はやめられない
阪 清和

 劇場ロビーの柱から顔を半分のぞかせてただ一点を見つめている男がいた。それは私。見ているのはパンフレットの販売カウンターだ。一人また一人と手に取りページを覗いて微笑んでいる。私の安堵心と幸福感は例えようもないほど。初めて編集や取材に関わったパンフが劇場に並んだその日のことははっきり覚えている。

 制作着手から公演初日までの約1カ月間、編集・取材・デザイン・撮影にあたる関係者は刻々と迫る印刷締め切り日に向けて壮絶な日々を過ごす。デザイナーとアートディレクションした後は、ページ内容を設定。カメラマンに撮影を任せて、編集者は識者に寄稿文の発注をしたり、演出家・出演者にインタビューしたり、時には外国の著作権管理団体に写真などの使用許諾を得る交渉も。キャストアンケートを回収して、それぞれのキャラクターを活かしつつ、日本語としての整合性も整える。スタッフのプロフィルも工夫して綴る。中核となる出演者には心の底から言葉を発してもらわなければならない。インタビュースキルは高いレベルを要求される。後は原稿の校正との闘い。校了しても完成しても間違いがないか最終確認してからでないと劇場に運べない。そして販売カウンターを凝視する人となるのだ。

 舞台を観に行って、あなたはパンフを買う派?買わない派? これだけお話ししたんですから買ってくださいますよね。パンフにはみんなの愛と情熱がいっぱい詰まっているんですから。

プロフィール
エンタメ批評家・インタビュアー・ライター
阪 清和
共同通信社で記者として従事した30年のうち20年は文化部でエンターテインメント分野を幅広く担当。2014年にフリーランスのエンタメ批評家として独立し、ウェブ・雑誌・パンフレット・ガイドブック・広告媒体などで映画・演劇・ドラマ・音楽・漫画・アートに関する批評・インタビュー・ニュース・コラムなどを幅広く展開中です。パンフレット編集やイベント司会も。

日本中のクリエイターを応援するメディアクリエイターズステーションをフォロー!

TOP