プロダクト2017.02.08

自社ブランドを立ち上げ 女性が輝けるスポーツウェアを一から創り出す

京都
新創企業株式会社 代表取締役社長 尼川雅教氏
スノーボードやサーフィン等の自社ブランドを立ち上げ、企画から販売まで一貫して手がける新創企業株式会社。創業者であるお父様の跡を継ぐ形で、代表取締役社長に就任した尼川雅教(あまかわ まさのり)さんは、ご自身の代でターゲットを女性に絞りました。女性の美と健康を考え日々奮闘する尼川さんに、入社の経緯から今後の展望まで熱く語っていただきました。

会社の危機的状況を知り、海外留学を断念、入社

御社の創業者は尼川社長のお父様だそうですが、立ち上げまでの経緯をお聞かせください。

会社の創業は、僕が生まれた1975年でした。父は、レストランの経営から始まり、当時京都では他になかったレコードレンタル業を経て、今の会社の礎になるウィンドサーフィンの商品を扱い始めました。自社でウィンドサーフィンに関するオリジナル商品を作るメーカー業もしていたので、その流れで、僕も今スポーツに関する商品を扱っています。僕の代で女性だけにターゲットを絞り、女性のものだけしか売らないスポーツメーカーを目指そうと思いました。

お父様の会社を継がれたということですが、社長ご自身には元々そういうビジョンがあったのでしょうか?

全くありませんでした。父が仕入れ等で度々海外に行っていたこともあり、外国で仕事をしたいという夢はありました。それで海外へ留学しようと、英語を必死に勉強したり、大学の4年間でバイトをして費用を貯めたりしていました。
僕が大学4回生で、ちょうど卒業論文を書いていた頃でした。留学先の大学も3つくらいに絞って、いざ行こうと思った矢先に、突然、父から会社の危機的状況を聞かされまして。それで、留学を止めて入社することにしました。

最初は本当にお金がなかったですし、社員もどんどん辞めていくという状況の中、退職した社員が投げ出した仕事の処理に追われました。何もわからない状況でしたが、取引先へ伺って状況を聞いたりしてとにかく目の前の仕事に集中しました。7年ほど、意識がないくらい仕事をしていましたね。過酷でしたが、すごく勉強になりましたよ。父が会社をやっていた頃から今日まで、母も経理面等でサポートしてくれているので、すごく助けられました。

自社ブランドで自分たちの作りたいものを作る

女性にターゲットを絞ったのは、どのような理由からですか?

女性って服やお化粧ですごく変わるじゃないですか。着飾れるのは女性だけですし、そのギャップがすごいなと思いまして。そこから例えば恋が生まれたりとかもあると思いますし、そういうことを応援できたら嬉しいなと思ったのです。
例えばスノーボードのウェアは、男の子が見て女の子を抱きしめたくなるかどうか、ということを基準に考えているので、かっこいいというよりは可愛らしいウェアを作りたいといつも思っています。

自社でブランドを立ち上げられた経緯についてお聞かせください。

通常、弊社くらいの規模ですと、例えばアメリカで流行っているブランド等を代理店契約という形で輸入して売るのが一般的だと思うのですが、先代の社長である父は会社の規模とは関係なく、自分の作りたいものを作ればいいという考え方なんです。今もその考え方を受け継ぎ、中国やベトナム等、海外の工場と直接交渉をして、自分たちの作りたいものを作っています。生地もデザインも100%オリジナルです。作りたいものを作る喜びがある反面、一から作り出すむずかしさも感じています。

商品のアイディアはどのようにして生まれるのですか?

社員がお店で聞いてきたり、ネット上で売れ行きをリサーチして、そういった情報を社内の企画部で整理します。冬はスキー場、夏は海など、出来るだけ現場に近いところでのリサーチもしています。僕自身も提案を聞いてアドバイスしたり、みんなで作り上げています。僕一人では何もできないので、社員の皆には本当に感謝しています。

ECサイトと実売の相乗効果が最大の強み

サップヨガ用ウェアの「SPOUT」
http://www.rakuten.ne.jp/gold/supyoga/

現在の事業内容についてお聞かせください。

「SISTA.J(シスタ ジェイ)」というブランドでスノーボードのウェア、「Shawnee(ショーニー)」というブランドで水着を作っています。もう一つ、4年前から始めた「SPOUT(スポウト)」というヨガのブランドがようやく認知度も上がってきたので、拡販に入ろうかというところです。今までターゲットは主に若い女性だったのですが、ヨガでターゲットの年齢層を上げようという狙いです。
ヨガを扱い、女性に第二の人生を楽しんでもらいたいと考えたのがきっかけです。ヨガは身体を温めるという意味でも医療につながるところがありますので、自分としては力を入れていきたいですね。

販売は主にウェブサイトでされているのでしょうか?

今までは主にウェブでの販売でしたが、今年から200店舗程に絞って、販売店でも取り扱っていただいています。ヨガの良さや商品への思いを理解していただいたことで、商品に対して期待をしてくださっているのだと思います。
インターネットでの販売と実売を組み合わせて相乗効果を狙うというのがうちの強みで、どちらも広告し合うような形になれば、より早く認知度が高まるのではないかと思います。

カスタマーの声というのは聞かれたりするのですか?

そうですね。現場の意見はすごく大切です。商品の使用感を実際に使っている方に聞いて、ブラッシュアップしていきます。サップヨガの商品を一緒に作ってくれるサポーターを募集したところ、たくさんご応募をいただきました。スノーボードでも協力してくれる女性ライダーや、水着のサポートをしてくれる方たちもたくさんいます。より良い商品を作るためにすごく助けていただいていますね。

※スタンドアップパドルボードの上で、水の上に浮かんで行うヨガ

少数精鋭でECサイトも自社で手がける

社内の構成について教えてください。

現在、社員は12人で、企画部、営業部、ウェブ部に分けています。企画部はデザイン企画と海外の製造工場との交渉。営業部は量販店との交渉と商品の納品。ウェブ部はオリジナルの商品等の販売に加えて、大手ショッピングサイトをターゲットに商品を売り込むことですね。この規模で大手と同じことをしないといけないわけですから、社員はすごく頑張ってくれていると思います。

ECサイトは自社で作られているんですか?

そうです。本当は外注に出した方が効率はいいと思うのですが、外注すると妥協してしまうところもあると思うので、できる限り自分たちが本当に作りたいページを社内で実現したいと考えています。揉めることもあるのですが、より良いものにしようと思って皆が意見を出し合うというポジティブな議論です。

夏、冬と、シーズンの商品が多いと思うのですが、年間のスケジュールはどのような感じでしょうか?

年に3回くらい展示会があるので、それに向けて企画部が営業から情報を取り入れて商品を組み立てます。それをサンプル発注して出来た物を卸しの量販店等へ営業しに行きます。そこで数量や納品の時期等を細かく打ち合わせして、次にウェブ部の方でモデル手配等をして写真を撮り、サイトにアップするという手順です。この一通りの流れを何度も繰り返します。 今は、企画部でウェブ専用のブランドを作るという新たな試みにもチャレンジしています。

女性が健康で美しくあるために、スポーツ+医療のサービスを提供したい

お仕事をされていて、やりがいを感じるのはどんなところですか?

まずは、うちの商品を通じて女性が素敵に変わっていくところを見ることです。もう一つは、スポーツ業界ってけっこう閉鎖的で、例えばスノーボードでも、「女子がやるスポーツじゃない」という考え方がありました。そういった業界の閉鎖性を会社の皆と一緒に変えていくという点です。「男でないと」という意識を変えていって、女性でも発言権を持つ等、世の中が変わっていくのを見るとやめられないですね。
男性がスポーツをするのも、結局女性に見てほしいからだと僕は思っているのですが、そういうことをお話して、今まで否定的だった人に「やっぱり女子の存在は大事だよね」とわかっていただいた時はものすごく嬉しいです。

逆に、苦労を感じられるところはありますか?

苦労を感じたことはないのですが、世の中の状況の変化が早すぎるという点で、常に新しいものを開発してちゃんと売っていかないといけないと感じています。昔なら5年くらいそのままでも売れていましたが、今は2年くらいで飽きたと言われるような商品もあります。

今後の展望についてお聞かせください。

自分の人生と一緒に皆が進んでいけたら、仕事としても成立すると思うんです。僕自身も社員も年齢が上がるにつれて、身体の不調等が出てくることも考えて、最終的にはスポーツと医療を融合したような商品の展開やサービスを提供したいと思っています。うちの規模では、インターネットを使ってチャレンジする方が効率的ですし、最終的にはアジアの女性が健康で美しくなるためにサービスを広げられたらと思います。
例えば、ヨーロッパではアロマ、アメリカではヨガが治療に使われることも多くなってきて、それが予防医療というジャンルを生み出しています。薬を飲むのではなく、楽しんでできるというのがいいじゃないですか。それが僕たちが携わっているスポーツというジャンルから派生してくれれば素敵なことだと思います。

今後、一緒に働くスタッフに対して、どのようなことを求めますか?

生きる知恵を身につけてほしいと思います。いろいろ吸収して覚えてもらって、一人でも生きられるようになれば、自分のためにもなるんじゃないかと思います。どういう形で教えられるかわかりませんが、いろいろさせて、「何でしなきゃいけないんだ」と思いながらでも皆がやってくれたら、緊急事態にそれまで学んできたことが発揮できると思いますね。

取材日: 2017年1月27日 ライター: 垣貫由衣

 

新創企業株式会社

  • 代表者名:代表取締役社長 尼川雅教(あまかわ まさのり)
  • 設 立 年:1975年6月
  • 資 本 金:10,000,000円
  • 事業内容:レディースを主体としたスノーボード・サーフィン・ボディボード・アウトドア・フィットネスなどのブランドを自社で立ち上げ、企画→製造→販売を一貫して行う
  • 所在地:本社 〒616-8182 京都府京都市右京区太秦北路町25-14
  •     東京支社 〒141-0032 東京都品川区大崎5丁目9-9シティータワー大崎1709号
  • URL:http://www.newcreat.co.jp
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