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映像・音・インタラクティブを融合したまったく新しい表現で広告の未来を創造

福岡
株式会社しくみデザイン 代表取締役 中村俊介氏
 
システム・メカニズム・デザイン・アーキテクチャー、これらをまとめて表現できる「しくみ」を社名に冠する福岡の注目企業、それが「しくみデザイン」です。通常の電子看板・広告では表現できない斬新なシステムが生まれた背景や今後の展望などを、同社代表取締役・中村俊介氏にうかがってみました。

建築系から芸術工学への転身、しかし道は決して甘くなかった

中村さんがクリエイティブの分野を志したきっかけは何だったのでしょう?

小さいころからモノ作りが好きで、それが一番の理由になっているのは間違いありません。父親が転勤族だったこともあり、これまでに滋賀、群馬、愛知、福岡と移り住んできましたが、進路を決めたのは高校時代、群馬県の頃になります。 当時はまだ子供ですから就職に対する知識も世界観も狭く、モノ作りといえば建築分野に進むのがベストだと考えたんですね。そこで選んだ進路が名古屋大学の建築分野だったわけです。

その後、福岡に拠点を移していますが、その背景とは?

実は卒業後は名大の大学院に進もうと考えたのですが、受験に失敗しまして(笑)。当時、私の中で建築に関する興味が薄くなっていたこともあり、教授に「オススメの大学院はありませんか?」と尋ねたところ、「君にぴったりの場所がある」といって薦められたのが九州芸術工科大学だったのです。 1年の浪人生活を経て無事、芸工大の大学院に進めましたが、ここで新たな壁にぶつかります。それは建築出身の私と比べて、周囲の仲間は美術・芸術に関するレベルが高過ぎたという点です。この段階で、私の中では美術・芸術系の進路は完全になくなりました。

それでもクリエイティブの分野を歩もうと考えた理由は?

名大に進んだとき、親は私がどこかのゼネコンに就職すると考えていました。しかし、実際にはそれを蹴って福岡に移り住んだわけですから、当然仕送りは断たれます。それでも自活はしなければいけないので、何とか生活費を稼ぐために、アートのコンテストで賞金を稼ぐことを思いついたのです。 本格的な美術・芸術の分野では仲間には到底及びませんが、私の場合はパソコンが好きで、学生時代にプログラミングのバイトをしていたのでコンピュータを使ったアート作品を作れたのが幸いでした。当時はまだ「メディアアート」という言葉には馴染みも薄く、音と映像を組み合わせた作品などは非常に狙い目だったんですよ(笑)。

それが現在の仕事に結びついていくわけですね。

そうですね。コンテスト主催者の意図を汲み取り、作品を応募するという経験はいい訓練になりましたし、賞金は生活していくのに本当に役に立ちました。 また、大学院にはマスターコースで2年、ドクターコースで3年の計5年在籍しましたが、コンテスト参加の他に、とあるベンチャー企業の福岡支社設立に参加し、学生ながら責任者になるという貴重な機会も得ました。当時、私が見込みアリと考えた大学院の仲間をこの会社に誘っていたこともあり、その中からしくみデザインの設立メンバーに名前を連ねてくれた者もいます。学生ながらビジネス的な視線を養えたこと、また福岡支社の運営に携われたことは、起業を考えるにあたって非常に大きな財産となりました。

オフィスにはレゴつくられたユニークなテーブルが

オフィスにはレゴでつくられたユニークなテーブルが…

ガラス天板の下にも細かなこだわり!

ガラス天板の下にも細かなこだわり!

映像と音の表現にお客様を参加させることで、広告に新しい可能性を生み出す

株式会社しくみデザインの現在の業務内容を教えていただけますか?

「インタラクティブ・デジタル・サイネージ」と私たちは呼んでいますが、主にそのシステム設計とサービスの提案を手がけています。 デジタル・サイネージとは言葉通り電子看板のことですが、これは単に広告や案内などをディスプレイに映し出すだけのものです。私たちがこだわっているのは「インタラクティブ=参加型」の部分で、ディスプレイに映し出される映像にユニークなギミックを組み込むことで、見る人により強いインパクトを与えることを得意としています。

具体的にはどのようなシステムですか?

例えば最新の案件だと、大手衣料品販売店「GAP」各店舗に専用のサイネージ端末を38台導入しました。カメラとディスプレイが一体になった大きな端末にお客様の映像が映し出されると、そこにカラフルなイラストや背景が施されます。そのためお客様の中には思わず「おっ?」と足を止める方が多く、お子様などが端末の前でずっとはしゃいでいるという姿も見られます。 また、インタラクティブ・デジタル・サイネージは画面の変化でお客様の注目を集めるだけでなく、ネットワークと連携することで「どのような方が・どのくらいの時間に・どの程度立ち止まったか?」といったこともわかるのです。そのため、通常のデジタル・サイネージよりも集客効果が高く、うまく活用すればマーケットリサーチのサポートにもなるのが強みといえます。

「参加型」のデジタル・サイネージは御社が日本で初めて手がけたサービスといわれますが、その発想はどこから生まれたのですか?

私が大学院生の時に発表したアート作品の中に「神楽」というものがあります。これはカメラの前で動きがあると、それに連動して音が出るというシステムで、たとえばモニタの上の部分が動けば高音、下の部分ならば低音といったように、変化を感知することでちょっとした音楽が奏でられます。 もともと楽器を弾けない私が気軽に楽曲を楽しむことを目的として作ったシステムですが、この「自分が参加することで変化が生まれる」というのは、実はそれまでにないまったく新しい発想だったのです。

非常にユニークな視点ですが、ビジネスとして成立させるのに苦労はなかったのですか?

見た目が楽しく斬新な「神楽」は、人に見せると確かに面白いと思わせるものがありました。ただ一方で「これをどう活用すればいいの?」と問われたときに、当時は比較対象もなく、なかなかいい回答ができないシステムでもあったのです。 その後、私がしくみデザインの起業家と九州工業大学の講師という二足のワラジを履いている頃、2006年に北九州空港の開設があり、この時、九工大の人間として「神楽」の発展系となる「画楽」を空港開設時の目玉アトラクションとして推したのです。研究提案という形なのでビジネス的なメリットは見込めませんでしたが、人の目に付くという点に期待はできます。結果、これが面白いシステムということが多くの人に認知され、次のチャンスを得ることにつながります。

そのチャンスとは?

2008年2月に人気テレビ番組「笑っていいとも増刊号」のインダストリーXというコーナーで、未来の広告ということで「神楽」をベースにしたシステムが採り上げられたのです。「笑っていいとも」のロゴが映し出された画面にタレントさんが映ると動きに合わせて効果音が流れたり、ディスプレイの中の番組ロゴをタモリさんが手で振り払うなど、それまでにない表現性が大きく注目されることになりました。 特にスタジオの中でも好評だったのが、カメラに映されたお客様の一人ひとりの顔にタモリさんの髪型と黒いサングラスのイラストがリアルタイムで追従作成されるというもので、14分のコーナー枠の中でしくみデザインのシステムが10分以上流されるという特別扱いになったほどです。このときの反響は北九州空港にシステムを導入した時よりもはるかに大きく、改めて「参加型の広告は受け入れられる」という手応えを感じさせてくれました。

「神楽」が多くの人に受けた理由は何だったのでしょう?

例えば家電量販店でビデオカメラのコーナーでは、よく店内の映像をディスプレイに映していますよね。そして多くの人がそのディスプレイに自分が映ると、思わず足を止めます。「神楽」もこの基本的な部分は変わりません。ただ、ディスプレイの前に立つ人にユニークなギミックを施すこと、それがディスプレイを見る本人も周囲の人も楽しくさせることが、大きな違いなのです。 人は誰でも変身願望を持っていると思いますが、そこをダイレクトに刺激するのが面白いといえるでしょう。

「ペイントーン」でモバイルの分野に新しい未来を切り拓く

最近ではAR(拡張現実)の登場などもあり、映像で遊ぶ文化が育まれていますね。

スマートフォンやゲーム機などで人気のキャラクターを映し出すARもそうですが、例えば無人のステージにCGを組み込むことで実際のライブ会場のように映像を配信するといった試みも生まれています。 こうした映像で遊ぶ文化がさらに増えることは、私たちにとって望ましいと考えています。というのも、広告業界内でこそ映像組み込み生成は注目を集めるようになりましたが、一般の認知度はまだまだ低いからです。もっと裾野を広くし、より面白いことをするためにもクリエイターの活躍は必要だと考えています。

しくみデザインでは、今後どのような展望をお持ちですか?

一昔前は、メディアといえばお茶の間にテレビが一台という家庭も少なくありませんでしたが、現在は携帯電話・スマートフォンをすべての人が持つ状況になっています。これは多くの人の手にディスプレイがあり、そこに映像を映し出せるということでもあります。 今マーケティングの世界ではこのモバイル端末のディスプレイを広告表現の場にすることに腐心していますが、これは私たちデジタル・サイネージの企業も同じことです。むしろスマートフォンなどはタッチパネルを採用しているので、画面に触れる=参加するという意味ではインタラクティブ・デジタル・サイネージの弊社こそ有効活用すべきと考えています。そのためのアプローチとして、しくみデザインでは2013年に「ペイントーン」というモバイルアプリを開発・発表しました。

「ペイントーン」とはどのようなアプリケーションですか?

これは子供向けの知育アプリですが、画面に触れることで自分で描いた絵が動き、音が鳴るというものです。こう書くとわかると思いますが、基本的な発想は「神楽」と何ら変わりません。ただ大きなディスプレイで多くの人が楽しめる「神楽」とは異なり、「ペイントーン」は手軽なサイズのディスプレイで映像・音・インタラクティブの融合を楽しめるのがポイントです。もちろん知育アプリと位置づけていますが、大人の方も気軽に楽しめるのはいうまでもありません。 私たちが「ペイントーン」を発表したのは、モバイル端末にインタラクティブ・デジタル・サイネージの未来を預けたかったという狙いはもちろんですが、それ以上に「ペイントーン」で遊ぶ子供や大人の皆さんに次の遊びを創造して欲しいという想いもあるのです。そうした部分を深くくみ取っていただけたのか、おかげさまで「ペイントーン」は福岡ビジネス・デジタル・コンテンツ賞2013で大賞を受賞することができました。

最後に若いクリエイターに向けたメッセージをお願いします。

私は今でも年に2回ほど大学で講師を務めています。そのときに若い方から「選択に迷ったときはどうすればいいのですか?」といった質問を投げかけられます。このとき私からの答えはいつも決まっています。「あなたの選択に間違いはないから、常に自信を持って自分が正しいと考えるものを選んでください。」 私を例に取れば、群馬県の高校で建築関係を志したのがそもそも大きな選択ミスだったといえなくもありません。しかし、現在の私はどうかといえば、自分が面白いと考えて作ったシステムが多くの方から高く評価され、しくみデザインの代表として充実した毎日を送れているのです。だから私は学生さんに言います。「人間は本能で正しい方を選択するようにできているから、私だけが特別なんじゃない、皆さんにも失敗はありません」と。 クリエイターの方もこの文章を読んでいらっしゃると思いますが、自分がなりたくてなったクリエイターです。その選択にミスはありません。だから、どうかご自身の興味・関心を大事にしてキャリアを育むことと向き合ってください。

株式会社しくみデザイン

  • 代表取締役:中村俊介(なかむらしゅんすけ)/芸術工学博士
  • 設立年月:2005年2月
  • 映像と音の表現にお客様を参加させることで新しい表現とするシステムの設計や提案
  • 所在地:〒812-0011 福岡市博多区博多駅前4-8-15博多鳳城ビル401
  • URL:http://www.shikumi.co.jp/
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