センスは特殊技能ではない 経験の積み重ねこそが糧である

Vol.116
株式会社method 代表 / バイヤー 山田遊(Yu Yamada)氏
 
モノがあふれている時代だからこそ、店頭にどんな商品を並べるか、その「目利き」により、店の売り上げは変わってきます。 この「目利き」をするのが、売れるモノを見つけ出し、買い付ける「バイヤー」、その重要性はますます高まっています。 今回は、国立新美術館のミュージアムショップ「スーベニアフロムトーキョー」や、これまでのお土産店にはない品が揃う「Tokyo’s Tokyo」など、話題の店を次々と手掛ける山田遊さんにインタビュー! 店舗を持たない独立したバイヤーになった経緯や、転機となった仕事、今後の展望など、興味深いお話をお聞きしました!

業界では珍しいフリーな立場のバイヤーとして活動。 バイヤーを超えた領域に仕事が拡大中!

山田さんの現在の仕事内容について教えてください。

基本的には「バイヤー」ですが、バイヤーは会社に所属して、自分が勤めている会社が運営するショップや、自分のショップの商品を買い付けるのが普通の働き方。僕の場合はフリーランスの立場で様々なショップのバイイングをしています。「雇われバイヤー」「独立バイヤー」という感じでしょうか(笑)。バイヤーとして品揃えを任されることからスタートしましたが、小売の新業態をディレクションしたり、モノづくりをデザイナーと一緒に行ったり、商業施設のコンサルティングをしたり、単純なバイヤーにはとどまらない領域に仕事は広がっていますね。

フリーな立場のバイヤーは、珍しいんでしょうか?

独立した時は、フリーのバイヤーはほとんど存在しない職種でした。自分としても、バイヤーにこだわっているわけではなく、求められることに取り組んでいるうちに、自分で新しい仕事を作ってきた感じです。「肩書きは?」と聞かれることがあるので、そういう時はわかりやすく説明するためにも「バイヤーです。」と答えていますが。

山田さんは、もともと小売業界やバイヤーという職種に興味があったのでしょうか?

いや、まったく興味ありませんでした。他の仕事に興味があったわけではなく、自分が何をしたいのかわからない、よくいるモラトリアム学生でしたね。

羽田空港内にある「Tokyo’s Tokyo」は、「旅」がテーマのニューショップ。旅の道具や東京土産、旅に持っていく本の提案が一つの空間に共存する。

羽田空港内にある「Tokyo’s Tokyo」は、「旅」がテーマのニューショップ。旅の道具や東京土産、旅に持っていく本の提案が一つの空間に共存する。

IDEEに入社し、2年目にバイヤーに。 必死に勉強しながら、バイヤーの仕事にのめりこむ!

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IDEE(イデー)に入社されたのは?

単純に面白そうだな、と思ったからです。IDEEは基本的には家具屋ですが、家具のカタログを本屋で販売したり、カフェをやったり、花屋をやったり、ギャラリーをやったり、複合的な展開をしていました。今でこそよく見かける業態かもしれませんが、15年前はそんなことをやっている会社はなかったですからね。何をやりたいのかわからなかったので、いろいろやっている場に身を置いていれば、やりたいことがわかるのではないか、とも思ったんです。

 

入社してみていかがでしたか?

いろいろなことに手を出すカルチャーがあって、刺激的な環境でしたね。普通は販売などの経験をもっと積んでからなるものですが、2年目にはバイヤーになっていました。乱暴な人事なんですけど(笑)、おかげで若いうちからチャンスをもらって、責任のある仕事も任せてもらえました。

バイヤーになってからは?

単純に知識が圧倒的に不足していたので、必死に勉強しました。勉強といっても、前もって準備したスキルよりも、現場で学んだことこそ役に立つと思うので、仕事をしながら覚えていきました。これはマズいな!と危機感を仕事の中で感じ、その危機を脱するために必死に勉強していくうちに、バイヤーという仕事にのめりこんでいきました。

多くの商品を扱う中で“小さなモノ”に興味。 ジュエリーギャラリーの立ち上げに参加し「疑似独立」。

やりがいがある仕事を任されている中、IDEEを退社したのは?

僕が就職したころは超就職氷河期で、終身雇用に疑問を持っていたこともあって、最初からあまり長くいるつもりはなかったんです。とはいえ、会社に貢献する前に辞めるのは違うと思っていたので、バイヤーとしてひと通りのことを経験し、ちょっとでも会社に貢献できたと実感したころに、次のステップを考え始めました。

どんな方向性を考えたんですか?

インテリア業界にいると、徐々に大きなことをやりたくなるんですよ。例えば、家具屋なら、次は部屋全体のコーディネートを手掛けたくなる、そのうち内装や建築も手を出したくなる。花屋なら、ブーケを手掛け、次は花の生産、造園…と膨らんでいく。ですが、僕は大きなモノよりも小さなモノに興味が出てきたんです。IDEEでもアクセサリーのバイイングをやっていたんですが、大きな家具と同じ、またはそれ以上の値段のものがポンと売れていく。そんな家具屋とは異なる価値観が面白いなと思って、ジュエリーギャラリーの立ち上げに参加しました。

ギャラリーでの仕事内容は?

ほぼ2人ですべてをやっていたので、「疑似独立」のようなものでした。バイイングはもちろん、卸や小売りもやりました。

「雇われバイヤー」としての依頼があり、手応えを感じて独立。 変革を求める小売業で、外部バイヤーとして活躍!

その仕事を経て「独立バイヤー」となるのですね。

“次”はもう独立しようと、自然と考えましたね。僕らの世界で独立といえば、自分の店を持つことが普通なのですが、どうも自分にはしっくりこない。何をすべきか悩みましたが、まだ会社に所属しているときに、ふと、店を持たない「雇われバイヤー」って世の中に余りないと思いつきました。それでやってみたらうまくいって、そこから他の依頼も来るようになりました。「ここにニーズがある」とわかって、独立したんです。

「ニーズがある」と手ごたえがあっても、それまでは存在しない職種だったんですよね。

タイミングが良かったですね。起業後にちょうどリーマンショックが重なり、モノが売れない時代に本格的に突入しました。小売業はどこも大変で、現状のままお客さんを待っていても売れない。「変化しなければ」とわかっていても、社内ではなかなか自由に動けませんから。

社内だからこその、しがらみとかでしょうか(笑)

そうですね(笑)。打破するためには、しがらみから自由である外部の力が必要なタイミングでした。ただ、バイヤーに関しては外部に頼る文化がなかっただけで、他の職種では外部の力に頼るのは普通のことなんですよ。例えば、広告のデザインは社内のデザイナーだけでなく、外部のフリーデザイナーや制作会社に必要に応じて発注しますよね。それと同じで、外部バイヤーとして成功事例を作ることで、次々と依頼が増えていきました。

転機となった仕事は?

まずは、国立新美術館のミュージアムショップ「スーベニアフロムトーキョー」の仕事ですね。また、「PASS THE BATON」(※)も “NEW RECYCLE”という新しいコンセプトづくりから参加した仕事なので、とても印象深いですね。 ※スープ専門店「Soup Stock Tokyo」を運営する株式会社スマイルズが立ち上げたリサイクルショップ。現在丸の内と表参道に出店し、オンラインショップも運営。

国立新美術館のミュージアムショップ「スーベニアフロムトーキョー」

国立新美術館のミュージアムショップ「スーベニアフロムトーキョー

自由であること、情報量の多さを武器に仕事を拡大。 新たなチャレンジを今後も続けたい。

社内バイヤーとは違う、山田さんの強みとは?

先ほどもお話ししましたが、やはり「自由」であることではないでしょうか。社内のバイヤーは、どうしてもマーチャンダイジングの呪縛から離れられない。マーチャンダイジングは圧倒的に大切なことなのですが、売れない時代だからこそ、マーチャンダイジングは安全第一になってしまいます。しかし、本来は安全策よりも、お客さんの立場で考えて、新しい魅力のある商品政策を作らなければならない。安全策のマーチャンダイジングでは作れない品揃えを、しがらみのない立場だからこそ作ることができます。

もうひとつは、持っている情報量が多いこと。社内バイヤーは、具体的な結果として自分の店の売上しか把握できませんが、僕は様々な業態に関っていますし、売れているモノ、売れていないモノをリアルに見ています。多岐にわたる業態に関っているからこそ、単純な足し算ではなく掛け合わせることで、何十倍、何百倍もの情報量を持つことができる。だからこそ、新しいモノを見たときに売れるかどうか、判断の精度が高くなる。そこが自分の価値だと思っています。

今後は、どんなお店を作っていきたいですか?

昔はいろいろやりたいことがあったんですが、これまでにいろいろな機会に恵まれたせいか最近減ってきてしまったんですよ(笑)ですが、やはり新しいことにはワクワクするので、まだやったことがないことをやりたいですね。海外の店もいくつか作りましたが、国が違えば新たなチャレンジになると思うし、国内も地域が違えば当然やることも変わってきますから。ただ、やはり未知なことにチャレンジしたいので「新しい店を作りたいんだけど、どうしたらいいかわからない」くらいに漠然としたオーダーは大歓迎です(笑)

山田さんのようにクリエイティビティを活かした仕事をしたい若い世代に、アドバイスをお願いします。

基本的には「経験に勝る知識なし」との言葉は正しいと思っていて、あらかじめ身に付けたスキルはあまり役に立たないと思っているんですよ。スキルは仕事の実戦でこそ身につくものと思います。センスも経験から生まれるもので特殊能力ではないと思います。自分も感覚ではなく、どれだけモノを見てきたか、どれだけモノに触れてきたか、の経験をもとに判断しているわけで、その経験の差こそがクリエイティビティにつながると思っています。僕自身、目利きに自信がなかったから、努力して経験を積み上げてきた結果です。

だから、若い人も、目指す方向に対して触れる量をとにかく多くしたほうがいいと思います。例えば、Webデザイナーを目指すならWebにとことん触れること、映像監督を目指すなら誰よりも映画をたくさん見ること、そこが将来的な差になるはずです。

取材日:2015年6月8日 ライター:植松

Profile of 山田 遊(やまだ ゆう)

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株式会社メソッド 代表 / バイヤー

東京都出身。南青山のIDEE SHOPのバイヤーを経て、2007年、method(メソッド)を立ち上げ、フリーランスのバイヤーとして活動を始める。現在、株式会社メソッド代表取締役。 2013年「別冊Discover Japan 暮らしの専門店」エイ出版社、2014年「デザインとセンスで売れる ショップ成功のメソッド」誠文堂新光社より発売。グッドデザイン賞審査委員をはじめ、各種コンペティンションの審査員や、京都精華大学非常勤講師など、教育機関や産地などでの講義・講演など、多岐に渡り活動中。 株式会社メソッド:http://wearemethod.com/

 
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