グラフィック2019.10.09

広告クリエイター必見!ヤングライオン日本代表に聞くグローバルに通用するクリエイティブとは

Vol.170
面白法人カヤック
Yuji Takahashi, Takafumi Kaneko
高橋祐司氏、金子嵩史氏

広告クリエイターあこがれの場といえば、カンヌ広告祭!今回は、2019年のヤングライオンズコンペティションデザイン部門の日本代表選考会でゴールドを受賞し、カンヌ本戦を日本代表として戦ってきた面白法人カヤックのプランナー高橋祐司さんとデザイナー金子嵩史さんにインタビュー!選考会の戦い方や、カンヌ本戦の様子など、経験者ならではの貴重なお話をたっぷり語っていただきました。

二人で組んだ最初のエントリーでブロンズ受賞。 経験をもとに、今回こそゴールドを!

まず、お二人の現在の仕事について、教えてください。

高橋さん:

2012年卒で入社して、現在8年目です。デジタルコンテンツを中心に、プランナーとして企画を考え、デザイナーやエンジニアと一緒にクライアントへ提案をしたりしています。

金子さん:

私も新卒で2014年に入社しました。アートディレクター兼デザイナーとして、クライアントワークを中心に仕事をしています。また、うんこをテーマにした「うんこミュージアム」では、アートディレクターを務めました。

ヤングライオンズコンペティション(ヤングカンヌ)に挑戦しようと思った理由は

高橋さん:

ヤングカンヌにはいろいろな部門があって、それぞれに出願資格があるのですが、私は入社2、3年目からチャレンジできる部門を探して、日本代表選考にエントリーしていました。普段の仕事は、ひとつの案件に10人以上関わっているので、なかなか自分の思いを実現することが難しいのですが、コンビで参加するヤングカンヌは、自分の思いやアイデアだけに向き合って、ピュアに表現できる貴重な機会です。また、同世代のクリエイターに負けたくない思いもありました。 デザイナーの金子とは、前々回から一緒に組んでエントリーしています。初めて組んだ前々回のエントリーでブロンズを獲れましたし、普段の仕事の案件でも一緒になることが多く、お互い何を考えているかわかるんですよね。今回も組んで、今度こそゴールドを獲ろう!と気合いが入っていました。

金子さん:

私はもともとヤングカンヌに興味があったので、高橋さんから誘われた時に良い機会だと思って、チャレンジを決めました。私にとっては最初のエントリーでブロンズを獲れたので、ゴールドを穫れるかもしれないと、自信が出てきました。

前々回、前回のエントリーで学んだことは?

金子さん:

グローバルな賞なので、パッと見てわかりやすい明快さが重要だと感じました。わかりやすさにプラスして、アイデアが優れているかどうかが問われます。2回の経験で、この作品はブロンズ以上を獲れるかな?という感覚がなんとなくわかるようになりました。

高橋さん:

エントリーすると、他の入賞作品をすべて見ることができます。そうすると、順位の付け方というか、ゴールドを獲る作品とそれ以外の違いがわかるようになりました。やっぱりゴールドは「よく思いついたな!」と感心するようなアイデアが光るんですよね。企画を考えている段階で、このアイデアはかぶりそうだなとか、賞を獲るための感覚がつかめるようになりました。したたかになりましたね(笑)。

3回目の挑戦となる今回は、どのような作戦を立てて臨みましたか?

高橋さん:

ゴールドを獲るか、思いっきり外すか。大胆に行こうと決めていました。
ヤングカンヌは毎年ルールが変わるのですが、今年は土曜のお昼に課題が発表になって、翌週の日曜20時が締め切りでした。社会的課題がテーマになることが多く、今年は「フェアトレード」が共通したテーマで、デザイン部門は主にパッケージに用いるフェアトレードコーヒーのマークと、その展開案が課題となりました。
コーヒー豆は、生産者から消費者に届くまでに仲介者が多く、生産者にお金が届かないという現状があります。そのことによる生産者の貧しさや困窮は何となく想像がつきますが、日本に住んでいる私たちにリアルな実感はないので、そこを表現しても勝てないと思いました。
「もっと取引をシンプルにして、コーヒーを飲みたい人と作っている人がつながったほうが良いよね!」ということをポジティブに伝えられないかと考えました。この思いを、どんなモチーフで伝えれば良いか、いろいろと試行錯誤しました。今までの経験から、コーヒー豆そのものをモチーフに使うことは避けて、他のポジティブな表現を探していくうちに、人と人をつなぐ“橋”のモチーフにたどり着きました。
マークができあがった時、オシャレでさわやかで、自分たちが好きなものができた!と思いましたね。自信はありました。あらかじめ知らされていた発表時刻になっても連絡が来ないのでヤキモキしましたが、ゴールドが獲れたとわかった時は「やったー!!」と素直にすごくうれしかったです。

ヤングカンヌ本戦は短期決戦! 課題が出た翌日にはアウトプットを完成させ提出。

日本代表選考会を勝ち抜き、次はいよいよカンヌ本戦ですね!どんな準備をしましたか?

金子さん:

パスポートを取ることから始めました(笑)。小学生以来の海外だったので。

高橋さん:

日本代表として得られたのは参加権だけで、入場パスの購入、宿や飛行機の手配など、他はすべて自分たちでやらなくてはならないんですよ。宿は作業しやすい大きな机があるところをAirbnbで探して選びました。あと、準備としては、本戦経験者の話を聞きに行きました。

ヤングカンヌ本戦は、どのようなステップで進むのですか?

高橋さん:

火曜の13時に課題が発表になり、そこから考え始めました。翌日の水曜8〜19時まで会場内に1カ国1台割り当てられたPCを使って、アウトプット作業をし、提出。その翌日の木曜12時45分には結果発表です。
今回の課題は、気候変動から地球や自然を守るために行動を起こす世界的な若者ネットワーク「Youth for Our Planet」のロゴと展開案3つ、という内容でした。ロゴのモチーフは、早い段階から“旗”にしようと考え、そこは最後までブレずに仕上げることができました。

各国代表のクリエイターと真剣勝負できる貴重な経験。 グローバルで通用するアイデアや表現を体感!

本戦の結果は?

高橋さん:

残念ながら受賞には至りませんでした。講評では、デザイン力は上位と評価してもらえたのですが、「若者が動く」ということを世界基準で考えられなかったですね。例えば、ゴールドを獲ったロシアやブロンズのブラジルの作品は、デモで用いやすいことが光るアイデアでした。日本では“若者”と“デモ”は遠い存在で、まったく思いつかない方向性でしたね。日本とは違う、グローバルな賞だからこその考え方が必要なんだと、改めて体感できました。

カンヌで学んだこと、得たことは?

高橋さん:

カンヌ広告祭は、世界中で同じ仕事をしている人が一堂に会する場なので、その雰囲気をリアルに見て感じられたことが大きいですね。入場パスは約50万円(30歳以下は20万円ほど)するので、それを買った人が集まっている、というセレブ感があるというか、特殊な場だなという雰囲気も感じました(笑)。また、本戦では各国から選ばれたクリエイターと同じ条件で戦うのですが、同じ課題なのに、アプローチがこんなに違うのか!こういう考え方なんだ!と衝撃でしたし、勉強になりました。

金子さん:

実際に現地に行くと、発見がたくさんありました。授賞式はとにかく派手で、ダイナミックな演出。それなのに、プロダクトの展示はわりと雑だったり(笑)。几帳面な日本人にはありえない展示で、価値観の違いを肌で感じました。また、本戦では、高橋さんと同じで、各国の代表がゴールに向かって何を考えて、どう表現しようとしているのか、そのプロセスをリアルに感じることができました。得難い経験になったと思います。

チャレンジするからこそ学べることが多くある。 レベルアップを実感し、モチベーションにもつながる!

ヤングカンヌの日本代表になったことで、周りの反応はどうでしたか?

高橋さん:

お祝いの電話をくれたクライアントの方もいましたし、社内も喜んでくれました。カヤックはデジタルコンテンツのイメージが強いので、デザイン部門で受賞できたことはうれしかったですね。「カヤックはデザインもできる」というアピールができたと思います。

金子さん:

広告業界の人の、自分を見る目が変わった気がします。次の仕事が大事になってくるんですが、正直言ってちょっとやりづらいです(笑)。

ヤングカンヌにチャレンジしたからこそ、学べたこと、得たことはとても大きいようですね!若いクリエイターは、どんどんチャレンジすべきでしょうか?

高橋さん:

もちろんです!日々の仕事に忙殺されて、エントリーに躊躇している若いクリエイターは多いと思います。でも、ヤングカンヌの受賞作品を見ているだけなのと、エントリーして、1週間考えてアウトプットまで作ることには大きな違いがあります。自分で作ってみた上で受賞作品を見ると、これは捨てたアイデアだなとか、これは自分たちがあそこで考えたアイデアにもう一歩踏み込んだものだなとか、作品からストーリーが見えてきます。学べる深さは、実際に作ったかどうかでまったく違うと思います。

金子さん:

私は美大出身なので、学生の時は自分のアイデアや表現を競い合う場がありましたが、社会人になるとその機会がほとんどなくなります。クライアントの案件でコンペになることはありますが、それは様々な制限がある中での競い合いです。また、クライアントワークをしていると、やり取りしているうちにアイデアや表現が丸くなってしまうこともよくあること。 クライアントの事情抜きで、自分たちが作りたいものを作り、他のクリエイターからシンプルに評価される機会は、本当に貴重です。毎年チャレンジすることで、自分のレベルアップを実感できましたし、他の参加クリエイターからも刺激をもらって、モチベーションにつながります。仕事に追われている中で参加する時間を作るのは大変ですが、それを言い訳にせずに、ぜひチャレンジしてほしいです。

取材日:2019年8月2日 ライター:植松織江

カンヌライオンズ

世界にある数々の広告・コミュニケーション関連のアワードやフェスティバルの中でも、エントリー数・来場者数ともに最大規模を誇るのが「カンヌライオンズ 国際クリエイティビティ・フェスティバル(Cannes Lions International Festival of Creativity)」です。毎年6月下旬のカンヌライオンズ開催期間、地中海沿いに位置するフランスのビーチリゾート、カンヌの街は昼夜を問わずカンヌライオンズの参加者で溢れ返ります。 ヤングライオンズコンペティション(通称:ヤングカンヌ)、及びヤングスパイクスコンペティションのカンヌライオンズは、30歳以下のプロフェッショナルを対象としたコンペ形式のオフィシャルプログラムです。 各国の代表2名1チームが参加し、現地で与えられた課題に対し、定められた時間内に作成した映像や企画書の提出、またはプレゼンテーションにより、GOLD, SILVER, BRONZEを決定します。

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