20周年を迎えるSSFF & ASIAに「学生部門」新設!フェスティバルディレクターに聞く映画祭の今

番外編 SSFF & ASIA「学生部門」情報 Vol.1
SSFF & ASIA フェスティバルディレクター 東野 正剛 氏
1968年生まれ。カリフォルニア州ペッパーダイン大でジャーナリズムを専攻。卒業後、渡仏。3年間をクレルモンフェラン市に滞在する。以後、ロサンゼルスでショートフィルムの制作、ハリウッド映画の製作に携わる。2000年からは、毎年6月に原宿表参道で開催されるSSFF & ASIAの事務局長として参加。現在は、同映画祭のフェスティバル・ディレクター​をつとめる。
今年で20周年を迎えるSSFF & ASIAのフェスティバルディレクター東野正剛さんに、SSFF & ASIAの変遷や今年初めて開催される「学生部門」についてお話をうかがいました。

SSFF & ASIAはどのような映画祭でしょうか。

1999年に東京・原宿で誕生した米国アカデミー賞公認・アジア最大級の国際短編映画祭です。今年の6月の開催で20周年を迎えます。初年度はジョージ・ルーカス監督が学生時代に撮影したショートフィルム6作品を上映し、注目を集めました。国内での開催や、海外での展開をかさね、これまでに延べ38万人を動員しています。映画祭は、オフィシャルコンペティションをはじめ、「音楽」「環境」「CGアニメーション」など、様々なカテゴリーのプログラムで構成されています。

SSFF & ASIAはどのように始まったのでしょうか。

代表の別所哲也が1997年にロサンゼルスでショートフィルムの魅力に触れ、ショートフィルムを見て味わった感動や驚きを日本でも伝えたいと思ったことがきっかけです。映画祭というフォーマットにしたのは、別所がサンダンス映画祭(俳優のロバート・レッドフォードが主宰する映画祭)に参加して、著名な監督や俳優と地域の方がコーヒーを片手に分け隔てなく映画について語り合っていたところに感銘を受けたからです。(ベン・アフレックやクリスティーナ・リッチ、スパイク・リーが会場にいたとのこと)日本では、海外で認められたものを称賛するという傾向が強いと思うのですが、われわれは、日本発の映画祭として日本人の評価軸を通して「新しい価値」をつくりたいと考えています。

この映画祭はアカデミー賞公認とのことですがどのような経緯があったのでしょうか。

2002年にロサンゼルスで開催したのですが、アカデミー協会関係者が多く参加してくれまして、これが公認映画祭に認定されることに繋がりました。SSFF & ASIAのグランプリ作品は、次年度のアカデミー賞短編部門のノミネート選考対象になるのですが、SSFF & ASIA 2016のグランプリ作品『合唱』(Sing)が、2017年度のアカデミー賞短編部門でオスカーを初めて受賞しました。ネット中継をみていたスタッフからは歓喜の声があがりました。その後、作品賞発表時に『ラ・ラ・ランド』と『ムーンライト』の読み違えも大きな話題になりましたよね(笑)

東野さんの映画祭でのお仕事の内容について教えてください。

2000年より事務局長としてSSFF & ASIAに参加し、現在は、フェスティバル・ディレクターをつとめています。ノミネートする作品の選定から製作案件のプロデュースまで、映画祭全体を統括しているほか、海外映画祭に参加する機会も多いですね。フランスのクレルモンフェラン国際短編映画祭(※短編映画祭としては世界最大規模)には、バイヤーが集まるマーケットがあるのですが、毎年参加しています。その他にも海外映画祭の審査員として招かれたり、日本文化の発信を目的として海外に日本のショートフィルムを紹介したりもしています。珍しいところでは、2016年はチュニジアのガベスという街に行きました。このプロジェクトでは、SSFF & ASIAから特別セレクションをした2つのショートフィルムのプログラム(ジャパンショート)を上映したほか、現地の中学校、高校の授業の一環として学生に「ジャパンショート」を見てもらう取り組みを行いました。上映会は「シネマ・レッスン」と題され、日本のショートフィルムを上映したあとに、各作品の日本文化的要素を講義し、学生たちとの質疑応答も行いました。中学生、高校生ともに、日本人が珍しいのか、授業終了後には記念写真を一緒に撮るなど、終始友好的な雰囲気で、映画祭の仕事における国際交流という要素を改めて強く感じた瞬間でもありました。

今年20周年を迎える映画祭はどのように変化してきたのでしょうか。

SSFF & ASIAは1999年に始まりましたが、当時の日本には「ショートフィルム」という言葉にあまり馴染みはありませんでした。初年度はショーケース的なイベントだったのですが、コンペティションを設置して作品募集をするようになり、今ではグランプリにつながるオフィシャルコンペティション以外にも環境、CG、音楽をテーマにした部門や多くの特別プログラムがある等、時代とともに成長してこれたなと思います。最近では、企業がブランディングのために制作したブランデッドムービーを特集する「BRANDED SHORTS」という部門もできました。作り手の環境も、機材が安く手に入るようになり20年前とは大きな変化を遂げましたよね。参加してくれた監督の中には、長編映画デビューを果たした監督や、CMやミュージックビデオで活躍されている方も多数いらっしゃるので、映画祭としては今後もそういったクリエイターをどんどん輩出していきたいです。

今では世界各国から応募があるそうですね。

今年の開催に向けて、約10000本の作品が世界から集まっています。ショートフィルムは時代を写す鏡のような側面もあり、9・11の翌年は戦争や宗教をテーマにした作品、東日本大震災の翌年は「絆」を感じさせる作品が多くありました。ただ、固いテーマのお話しだけではなくコメディやアニメーション、ファンタジーなどの作品も多くあるので、それぞれのクリエイターの想いのつまった作品群を鑑賞するのはとても面白いですし、気づきもありますね。

映画祭の入場料は無料ですがどのように運営されているのでしょうか。短編映画のビジネスの可能性について教えてください。

映画祭は、今回学生部門をサポートいただくフェローズさんをはじめ、映画祭の趣旨に賛同してくださる企業からの協賛金や行政からの助成によって運営をしています。ショートフィルムを使ったビジネスという観点では、権利調達したコンテンツを映像のプラットフォームや企業のオウンドメディア配信していただいたり、イベントなどに活用いただいています。やはり現代人は忙しいので、隙間の時間に10分、15分という短い時間で楽しめるエンタメコンテンツとしての需要はまだまだ見込めると考えています。また動画マーケティングの高まりから、ショートフィルムを活用したブランディングに着目する企業も増えています。カテゴリーとしては「広告」になりますが、限りなくエンタメに近いものになりますし、ストーリーテリングを用いて共感を得るショートフィルムの存在価値、それをつくるクリエイターの価値は今後さらに求められるのではないでしょうか。クリエイターからの視点ですと、やはり映画祭での受賞歴というのは、(前述の)『合唱』(Sing)を例にとってみても大きなプラスになるのは間違いないでしょう。

初開催となる「学生部門」について教えてください。

SSFF & ASIAとしては、映像作家を支援することをフィロソフィとして持ち続けていますので、この学生部門は映像業界全体を盛り上げていくという意味でもとても重要な部門です。ノミネートした監督は、映画祭で作品が上映され、審査員から総評を受けられるわけですが、こういった機会はとても貴重なので是非応募いただき、チャンスを活かしていただければと思います。制作した作品を他者にどんどん見せることが大切です。そこでフィードバックをもらうことができたり、思わぬ出会いに繋がったりすることもあります。これまでは学生が応募してもプロのクリエイターとの比較でしたが、学生部門が設立されたことで学生の皆さんにとってはハードルが下がったのではないでしょうか。学生部門へ応募いただくことをきっかけに、映像業界を目指す若い方が増えることを期待しています。

学生に向けてメッセージをお願いします。

ジョージ・ルーカス監督も「1本のショートフィルムが私の映画人生にもたらした、夢のような冒険物語は今も続いている」と、映画祭にあてたレターで述べてくれています。映画は国境を越え、言葉を超え、人種を超えて広がり、世界中の人たちに夢や感動を届けるものです。ちょっと壮大なこと言ってしまいましたが、学生のときにしか撮れないものもあると思いますし、まずは一歩踏み出して応募して欲しいと思います。

東野正剛(トウノセイゴウ)

1968年3月15日生まれ(兵庫県宝塚市出身)
神戸のインターナショナルスクールを経て、渡米。カリフォルニア州ペッパーダイン大でジャーナリズムを専攻。
卒業後、渡仏。3年間をクレルモンフェラン市に滞在する。以後、ロサンゼルスでショートフィルムの制作、ハリウッド映画の製作に携わる。
95年、タヒチ、ニューカレドニアなどを就航する客船に勤務。1年以上を南太平洋上で過ごす。
1997年からは関西の多言語ラジオ局 FM COCOLOでヨーロピアンポップスを中心とするワールドミュージック番組のパーソナリティ担当。
同時に、「大阪ヨーロッパ映画祭」の実行委員長補佐として映画祭の運営にも携わる。
2000年からは、毎年6月に原宿表参道で開催される「ショートショート フィルムフェスティバル & アジア」(2004年度には米国アカデミー賞公認映画祭となる)の事務局長として参加。 現在、同映画祭の実行委員長として、​20周年となる​映画祭​の​準備中。

SSFF & ASIA「学生部門」作品募集のお知らせ

2018年6月の開催で20周年を迎える米国アカデミー賞公認、日本発・アジア最大級の国際短編映画祭ショートショート フィルムフェスティバル & アジア。国内の学生からショートフィルムを公募する新たな部門「学生部門」を立ち上げ、作品を募集中です

  • 募集期間:2017年12月18日(月)~2018年2月28日(水)
  • 登録料:無料
  • 尺:5分以内 (エンドクレジットを含む総尺)。
  • 制作年:2016年6月以降に制作された作品。
  • 応募資格:2018年3月末時点で日本国内の学校に在籍中の学生監督。
  • 言語:英語と日本語以外の言語による作品は、オリジナル言語の対訳の日本語字幕もしくは英語字幕をつけて下さい。
  • 優秀賞:賞金 30万円
  • 上映作品の発表について:2018年4月頃に選考し、ウェブサイトで発表致します。



くわしくは、ショートショート フィルムフェスティバル & アジア 公募サイトをご覧ください。

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