WEB・モバイル2013.07.31

クリエイターのモノづくりの強い味方 クラウドファンディング ~CAMPFIREさんに聞いて来ました~

Vol.96
株式会社ハイパーインターネッツ 広報担当 矢崎海さん
インターネットで多くの人に支援を呼びかけ、資金を調達する「クラウドファンディング」。夢や目標を持つ人にとって、必要となる資金を調達する新たな手段となったこの仕組みは、日本でも広く知られるようになりました。そこで今回は「クリエイターのためのクラウドファンディングのサイト」と掲げる「CAMPFIRE」の運営会社である株式会社ハイパーインターネッツの広報担当・矢崎海さんにインタビュー。クリエイターにとってのクラウドファンディングの活用メリットや成功事例、さらに今後の展開についてお話を伺いました!

支援をしたパトロンに必ずリターンを返す 「購入型クラウドファンディング」

最近はあちこちで「クラウドファンディング」を耳にします。CAMPFIREの立ち上げはいつですか?

2011年1月にクラウドファンディングのサイトを立ち上げるために会社を設立しました。当初はすぐにサイトをローンチする予定だったのですが、3月に震災があった影響もあって、6月2日になりました。サービスインからちょうど2年が経過した、というところです。

震災の復興に際し、資金提供をインターネットを通じて多くの人に呼びかけるクラウドファンディングが広まったように思います。例えば被災した子どもたちが使う体育館や運動場を再興するための資金を調達するために、寄付を多くの人に募るプロジェクトなどが立ち上がっていましたよね。

確かに、震災直後は「寄付型」のクラウドファンディングは、注目されていましたね。CAMPFIREは「寄付型」ではなく、「購入型」のクラウドファンディングです。資金提供をしてくれた人(パトロン)に対して、必ずお返し(リターン)を返すことになっています。

CAMPFIREでは500円から支援ができるようですが、どんなに少額でもリターンがあるのですか?

はい、あります。500円支援してくれたパトロンに対しては、お礼のメッセージやPCやスマートフォンの壁紙といったデジタルコンテンツなどが多いですね。

500円から支援を募り、初期投資の壁を乗り越える! マーケティングにもつながる仕組み

CAMPFIRE

CAMPFIREホームページ
多くの「プロジェクト」が紹介されている

どんなパターンのプロジェクトが多いのでしょうか?

新しい商品アイデアがあるのでぜひ開発したい、というモノ作りのプロジェクトは多いですね。プロダクトを開発するにはどうしても初期投資が必要ですが、その資金をCAMPFIREを通して募ります。金額は例ですが、500円の支援をしてくれたパトロンにはお礼のメッセージを、5,000円の支援をしてくれたパトロンには完成したプロダクトをプレゼントする、というのが典型例です。これまでは開発資金を用意するために銀行や投資家を回って頭を下げて資金を確保してから始めなければならなかったのですが、CAMPFIREを活用すれば、その手間とリスクを回避できます。

また、早くから賛同者やファンを募ることができます。どれだけのパトロンが現れるか、その反応を見ることができますし、開発前のマーケティングにもつながりますよね。パトロンが殺到すれば市場が求めているプロジェクトである、ということです。

クリエイターにとっては、どのような利用法がありますか?

個展を開くための資金や、作品集を自費出版するための資金を調達するために利用されている方はいます。最初は自費出版でも、形になった本を持って売り込みに行けば書店のアートコーナーに置いてもらえたり、CAMPFIREへの掲載をきっかけに出版社の目に止まった例もあります。

クリエイターが提供する「リターン」は?

500円の支援の場合は作品を印刷したポストカード、完成した作品集は5,000円、実際の作品は30,000円、というようにリターンの幅を持たせることができます。また、イラスト系のプロジェクトで人気なのは「似顔絵を描いてもらえる」リターンです。最近はSNSのアイコンなどで似顔絵を使うシーンも増えていますからね。もし気に入った作風の作家がプロジェクトを掲載していて、似顔絵を描いてもらえる権利がリターンに設定されていたら、ぜひパトロンになってみてください(笑)

プロジェクトは、クリエイティビティがあり 世の中に新たな価値を提供できるもの

資金提供を呼びかけるプロジェクトは、どんな内容でも良いのでしょうか?

CAMPFIREの仕組みを使ってパトロンを募るには、プロジェクトの審査があります。基準としては、クリエイティビティがあって、世の中に新たな価値を提供できるものであればOKですが、実現の可能性が著しく低かったり、個人的な生活費を募るプロジェクトなどはNGになります。

資金提供の呼びかけは、期限があります。支援総額が期限までに目標金額に届かなかった場合はどうなるのでしょうか?

目標金額を達成することを「サクセス」と言っています。支援したお金は、目標期間内にサクセスして初めて決済されます。ですから、サクセスできなかった場合は、パトロンの負担はなく、全額返金されるイメージです。

プロジェクトの紹介画面例

プロジェクトの紹介画面例
設定期間内に目標金額に届くと「サクセス」となる

「サクセス」するためには プロモーションが必須!

プロジェクトにチャレンジする側にとっては、サクセスしないとスタートできないですよね。サクセスする秘訣はありますか?

目標金額が達成できない大きな理由は、プロジェクトの構想自体に問題があって支持されていないこと、プロモーションが足りないことのふたつです。プロジェクトの組み立て方は、CAMPFIREのサイトに詳しく掲載しているので、プロジェクトを魅力的に見せるためのタイトルや目標金額の設定など、戦略をしっかり立てて欲しいと思います。

また、プロジェクトはCAMPFIREに掲載はしますが、自分のネットワークやSNSを使って周囲にプロモーションすることが大切です。ただ、CAMPFIREはメディアの人もチェックしているので、注目を集めるチャンスです。掲載されることでメディアの記者から取材を受けたり、より多くの人に知ってもらえるチャンスが広がります。

具体的に、どのようなプロジェクトがサクセスしやすいのですか?

サクセス率は50〜60%ですが、わかりやすいモノ作りのプロジェクトが可能性が高いでしょうか。CAMPFIREをこまめにチェックしている人は新しいモノが好きな人が多いので、ガジェットやスマートフォン関連のプロダクトは反応が良いですね。今までで最高金額を集めたのは音楽ライブをDVD化するプロジェクトで、多くの支援が集まるほど音やパッケージをグレードアップしてリターンのスペックを上げていきました。他にも音楽系は、リターンをライブの優先入場券に設定したり、高額の支援には本人と歌える権利やレコーディングに参加できる権利を設定したりして、人気を集めています。「リターンできること」はプロジェクトによって色々あるはずなので、自分に何ができるかを考えて、魅力的なプロジェクトに組み立てれば、サクセスの可能性が高まっていきます。

出来上がったものを買って使うだけではない 完成する過程を楽しめるパトロン

一方、支援するパトロンになるメリットはどこにありますか?

例えば、すでにファンになっているクリエーターやミュージシャンがいれば、彼らが提供するリターンがストレートな魅力となります。その他にも、モノ作りのプロジェクトであれば、普段は完成したプロダクトを買って使うだけなのが、そのプロダクトが完成するまでの過程を楽しむことができます。プロジェクト発起人(オーナー)は、ブログやメッセージを使ってパトロンに進捗状況などを報告しますので、見守りながら「待つ」ことも楽しいと評価していただいています。

アメリカでは、CAMPFIREのような購入型のクラウドファンディングがより進んでいて、特に映画制作に関しては著名な監督もクラウドファウンディングを活用しています。気になる監督やキャストの映画にあらかじめ支援すれば、プレミア試写会の権利や限定グッズが手に入る。パトロンにとっては映画館で1,800円払って映画を観るだけよりも、先に払っておくことで楽しみが増えますから「おトク」なんですよね。

開発予定だったプロダクトが頓挫したなど、サクセスしたプロジェクトが達成できない場合は?

ガイドラインで明確に記載していますが、約束したプロジェクトが実行できない場合は、パトロンに全額返金することになっています。CAMPFIREは資金を広く集めることができる仕組みですが、それだけ広く多くの人に対し責任が生じると言うこと。期待に沿うためのプレッシャーはあると思いますが、夢を追う人にとっては夢を叶える手段でありチャンスです。それを支援する人も本当に欲しいものが手に入る、みんながハッピーになれる奇跡の仕組みがクラウドファウンディングなのではないでしょうか。

新たなアイデア募集中! 様々なプロジェクトが集まり、サクセスするサイトへ!

【取材対象者】 株式会社ハイパーインターネッツ 広報 矢崎海氏

【取材対象者】
株式会社ハイパーインターネッツ
広報
矢崎海氏

夢と希望が詰まっている、ワクワクする仕組みですね!今後はどのような展開を考えていますか?

より多くのプロジェクトが集まり、多くのサクセスが生まれるサイトにしていきたいですね。先日はプロジェクト立ち上げを検討している希望者を集めて、プロジェクトの組み立て方に関するスクールを開催しました。日本には、新しい価値を提供できるアイデアがありながら、資金面で壁に当たっているプロジェクトが多く眠っていると考えています。多くの成功事例を生み出して、そこからさらに新しいアイデアが生まれて来る、そんな好循環を創り出していきたいですね。

◆CAMPFIRE http://camp-fire.jp/

取材/2013年7月9日 取材・文/植松

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