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CREATIVEクリエイティブ好奇心

福岡移住計画~地方での暮らし方・働き方をサポートする~

Vol.105
株式会社スマートデザインアソシエーション 代表 須賀大介さん
どこで誰と、どんなふうに生きてゆくか? 2011年の東日本大震災で手渡された問いに将来を見つめなおした人も多いでしょう。株式会社スマートデザインアソシエーション代表の須賀大介さんもその一人。震災後、東京から福岡へ移住した自身の経験を生かし、地方へ移住を考えているクリエイターたちをサポートできる場所が作りたいと「福岡移住計画」(http://www.fukuoka-ijyu.jp/)という活動を始めました。

今後の生き方を見直すきっかけになった震災 移住者たちの支えになれるサービスを

御社はWebデザインやマーケティングが主軸の制作会社ですが、今回のような地域支援事業を始めたきっかけは何だったのでしょう?

僕の祖母は米農家をしているのですが、いつかはWebマーケティングの技術を生かして何か農家さんのお手伝いができないかなと思っていました。そんなとき、僕の同級生がIT企業を辞めてイチゴ農家へ就農したんです、2010年頃ですね。農家と地域がつながる場所を提供したいとの想いから、まずは東京下北沢にあるお寺で月1回、野菜や果物を直接販売する「ママンカ市場」を開催することに。しばらくして、それらの食材を利用した加工品も作っていこうという話になり、僕らは商品パッケージのデザインやそれを販売するルート作りをメインに本格的に事業としてスタートしました。地域や地方に対して何かしたいという想いが芽生えたのは、これが最初だったと思います。

その想いが「福岡移住計画」という活動へつながっていくわけですね。 須賀さん自身も現在は福岡で生活していますが、移住を決めた経緯を教えてください。

2011年の東日本大震災で僕の実家である茨城も被災しました。そんななか自分たちは東京にいて地方の応援や、Web制作をしているだけでいいのだろうか…という問いが生まれたんです。もともと家族としてはいつか地方に住みたいとの想いがあったので、それならこの機会に地方に住んでもっと地に足をつけた生活をしたいと妻に相談して移住を決意しました。場所は山梨や長野などいろいろ見てまわりましたが、直感的に福岡でしたね(笑)。 職場のスタッフに伝えたときは、突然の決断に驚いていたし、みんな不安もあったと思いますが、僕が移住したい理由やこれからの働き方について時間をかけて話し、理解してもらいました。

実際に移住してみてどうでしたか?

一筋縄ではいかないことを実感しました。東京で実績があるから、福岡でも同じようにやっていけるかと思っていたんです。でも、地方にだってプライドがあるし、コミュニティもある。 壁にぶち当たったときに、たまたま自分のことをサポートしてくれた人がいたんです。僕たち家族の住む家を探してくれた不動産会社の人たちなんですが、地元のコミュニティを紹介してくれたり、精神的な支えになってくれたり、とても助かりました。そうした自分の経験から、今後移住する人たちを手助けするサービスが提供できたらいいなと思ったのが「福岡移住計画」スタートのきっかけです。

多くのクリエイターが集ったイベント これからは地方でものをつくる時代へ

ぼくらの移住計画

「ぼくらの移住計画」チラシ

最初から須賀さん一人で活動されていたんですか?

活動のきっかけは、福岡へ移住して半年後に、僕の移住をサポートしてくれた、不動産のメンバーのメンバーと自分の体験から、『福岡移住サポート』のプロジェクトを立ち上げたのがきっかけでした。そのプロジェクトメンバーと一緒に活動しています。 その後、偶然に、福岡のイベントで、移住者のサポート活動をしている「京都移住計画」代表の田村さんという方と福岡で知り合う機会があったんです。僕も福岡でこんなことをやりたいという話をしたところ、一緒に東京でイベントをやろうという話になりまして。それが「ぼくらの移住計画」という最初の活動でした。

どんな内容だったのでしょう?

実際に移住したい方を集めて、僕と田村さんと、もう一人山梨へ移住された方が実際に移住してからの体験談を話したり、参加者の不安ややりたいことをシェアするワークショップを行いました。フェイスブックで告知しただけでしたが50人くらい集まったことに手ごたえを感じて、地方でものをつくることがひとつの大きな流れになるだろうという確信を得ました。

 
交流会では福岡を代表する企業のブース出展や説明会も実施

交流会では福岡を代表する企業のブース出展や説明会も実施

最近開催された福岡市主催の「ぼくらの福岡移住計画」についても教えてください。

ちょうど、LINE(株)が福岡社屋を作り九州の人材確保を進めるなど、企業が福岡へ進出している背景もあって、福岡市にイベントをやろうと提案して実現しました。移住経験者のトークセッションや福岡にオフィスのある企業との交流会など、官と民が一体となって作ったイベントで、来ていただいた方にとっては福岡のことを知れる、経験者の生の声が聞ける貴重な時間になったと思います。

何人くらいの方が参加されたんですか?

当初は100人くらい集まればいいよねと話していたのですが、3日間で160人の申し込みがあって、急遽座席を増やして最終的には300人くらい申し込みが集まったと思います。参加者は福岡出身者や以前働いていたことがあるなど、地元にゆかりのある人が半分強。年齢層は30代が中心で、社会に出て10年くらい働いて家庭をもち、これからの自分の生き方を考えているような人が多かったですね。

実際の暮らしを体感するツアーも計画中 「住」と「職」両方の充実がカギ!

今後はイベント以外の活動も計画されているんですよね。

イベントは福岡を知るきっかけを作れるので、今後も定期的に月1~2回、40~50人規模の交流会は続けていきたいです。そのあとは、移住希望者を対象に実際に福岡での暮らしぶりを体験できるツアーを計画しています。福岡は中心部から30分電車で移動すると、海や山など自然豊かな場所にすぐ出られるんですよね。都会的な場所と自然豊かな環境の両方の良さがあるのが魅力なので、どちらも体験してもらおうと思っています。

仕事はもちろん、移住したら毎日生活していくわけですから暮らしぶりを知ることは重要ですね。

そうですね。移住って仕事があるだけでもその場所に根付けないし、住む家があるだけでも根付けない。だからこそ、僕らは「住」と「職」どちらもトータルにサポートしていけたらいいのかなと思います。まずは僕たち民間でやりながら、今後は福岡市や地域のコミュニティ、企業とも連携しながら進めていけたらいいですね。

クリエイター自身の考え方や生き方まで 問われるからこそおもしろい

須賀さんが考える地方で働くよさってなんでしょう?

東京で働いていると、大企業のマーケティングの仕事をしたり、予算の大きい仕事をしたり、それもおもしろいと思うのですが、僕はどこか作った作品だけが独り歩きしているような感覚があったんです。地方のコミュニティの中で仕事をしていると、この人はどんな考え方で仕事をしているんだろうと、自分自身の生き方そのものを問われる機会が多いように思います。売り上げを上げるテクニックや知識が先行するのではなく、「なぜあなたは作っているんですか?」という真の部分を問われるような気がしますね。でも、本来のクリエイターってそこが大事だと思うので、地方にいると実はやりやすいというのはあるんじゃないでしょうか。

おすすめの地はやはり福岡ですか?

よく言われる、食べ物がおいしい、女性がかわいい(笑)、空港に近くて便利という良さももちろんあるのですが、なんといっても一番は“ライフコストが東京より格段に低いのに、生活のクオリティが高い”ということ。クリエイターにとっては作ることに集中できるとてもよい環境だと思いますね。

故郷はいくつあってもいいもの “都市と地方”、“地方と地方”を結び付けたい

最後に、今後の展開を教えてください。

“都市と地方を結ぶ”、“地方と地方をつなぐ”この2つの柱で考えています。 まず1つ目の“都市と地方を結ぶ”プロジェクトについては、「ローカルショーケース」という取り組みを考えています。地方のその土地に行かないと手に入らない、触れる機会がなかったものを、都市圏でもっと手軽に見聞きできるようなサービスです。アンテナショップのように大きな箱が点在しているというよりは、複数の地域のことをまとめて知れるような場所を作りたいですね。 2つ目の“地方と地方をつなぐ”プロジェクトでは、地方各地をつないだツアーを計画中です。今予定しているのが、島根から山口を経由して福岡へというルート。単純に旅行するだけじゃなく、地域のコミュニティと触れ合ったり、ちょっと農業をしてみたり、地域の課題を解決するようなwebサイトを作ってみたり…。短期というよりは中期的なスパンで複数の地域をまわりながら、その地域のことを知っていけるような取り組みをやってみたいと思っています。

福岡以外の地への展開もありそうですね。

そうですね。最近、1か所の土地に根付くこともいいけれど、故郷を複数持つこともいいのではないかと思いはじめたんです。生まれた場所でもないし、親戚がいるわけでもないけれど、その土地でものづくりをしたり、人と出会ったりするなかで生まれる故郷。いつでも「おかえり」と迎え入れてくれるような人や場所があるのっていいなと思います。これからは、故郷がいくつもあるような生き方が日本全体に広がっていくといいですよね。

取材日:2014年4月25日 ライター:香取 亜紀子

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