第16話 背比べは二人じゃできない

とりとめないわ 門田 陽

クリスティアーノ・ロナウド。特にファンでなくても、一度覚えたら口ずさみたくなる名前です。なぜか世界的なサッカーの選手には、口に出すと気持ちのよい二酸化マンガンみたいな名前が多い気がします。その昔はベッケンバウアー、少し前はロナウジーニョ。なんだか耳に残る名前。スベスベマンジュウガニやジブラルタル海峡、マイコプラズマ肺炎もこの類でつい言ってしまいます。いきなりの余談でした。

そのクリスティアーノ・ロナウドの故郷であるマディラ島(ポルトガル領)に行ってきました。と言っても、仕事(撮影)です。わずか10日ばかりの滞在でしたが、その間に初めてだったり懐かしかったりヘンだったり、フシギな感情になることがいくつかありました。

まずはザビエルくんのこと。海外で撮影の場合、カメラや照明の助手は現地の若手にお願いすることがほとんどです。彼はふだん島ではカメラもやっているそうですが、今回は照明の助手です。年齢は21歳。どこの国でも思うことですが、コピーライターやプランナーと違って撮影部や照明部の人たちはすぐに現地のスタッフと仲良くなります。それはハード面(機材)もソフト面(技術)も共通なことが多いので、言葉がバラバラでもやることが通じるのです。これは羨ましいけどここまではふつうです。さてザビエルくんは何が違ったのか。彼は僕たちがその場で何を撮りたがっているのかが直感的にわかるらしく通訳さんよりも先に相手に伝えるのです。最初は「おいおい何やってるんだよ(怒)」と感じたのですが、確かにきちんと伝わるのです。日本に行ったこともなく日本語もまるで知らないのです。途中から通訳さんも僕たちも彼に頼る場面も多々あってどう言っても信じてもらえそうにないですが、初めて出会ったタイプです。なぜわかるのか聞いたところ、一言「カン!」と答えました。マディラに行く予定の人がいたらぜひ彼と仕事してみてください。きっと驚きます。(写真①手前の椅子に座っているのがザビエル君。後ろに立っている石川監督の言葉を出演者に伝えています。まるで通訳のようですが照明の助手です。)

写真①

写真①

ま、フシギなことって、続いてあるのかもしれません。撮影の途中で寄った食堂の屋根に犬がいました。猫じゃないです。犬です。どこから上がったのか、まさか下からジャンプはムリだと思う高さ。「オレ何でこんなところに上っちゃったのかな~?」としばらくウロウロしていましたが諦めたのか屋根の上でくつろいでます。おい、いいのかお前、それで!犬の認識が変わりました(写真②そしてくつろぐ写真③)。

写真②

写真②


写真③

写真③

夜、ホテルの部屋でテレビを付けると島のローカル局はどこもサッカーをやっています。
三つのチャンネルが同じ試合を映しているのですが、どの局も肝心の試合(ピッチ上)は映っていません。放映権の問題なのでしょう。解説者が現場からときどき届く写真(静止画)を見ながら話す局、カメラが選手ではなく線審だけをずっと追う局、そしてひたすら観客の模様だけを90分間映す局(写真④)といずれもシュールなことになっています。でもどれも制作者の熱い気持ちと工夫が伝わってきました。これって、何かふだんの企画で応用できそうです。

写真④

写真④

撮影終了後スタッフが煙草を吸いに行っている間、駐車場でボーッと日向ぼっこをしている僕のすぐ前で10才くらいの男の子が二人で背比べを始めました。やり方は世界共通。背中と背中を合わせます。大体同じくらいの高さ。右の子の方が少し高いかも。しかし彼らは背中合わせなのでどちらが高いか自分達ではわからないのです。その瞬間、二人は僕と目を合わせました。僕は手で右の子が少し上と示すと二人は「オブリガード!」と叫んで走っていきました。何だか凄くいい気分になりました。

ところで中学生の頃、覚えたてのビートルズの「サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド」というタイトルにすっかりはまって意味もなく連呼してはクラスの女子に気持ち悪がられた話はまたの機会に。

Profile of 門田 陽(かどた あきら)

門田陽

電通第5CRプランニング局 クリエーティヴ・ディレクター/コピーライター 1963年福岡市生まれ。 福岡大学人文学部卒業後、(株)西鉄エージェンシー、(株)仲畑広告制作所、(株)電通九州を経て現在に至る。 TCC新人賞、TCC審査委委員長賞、FCC最高賞、ACC金賞、広告電通賞他多数受賞。2015年より福岡大学広報戦略アドバイザーも務める。 趣味は、落語鑑賞と相撲観戦。チャームポイントは、くっきりとしたほうれい線。