職種その他2019.05.15

ボローニャの風が吹く @Dilston Grove

vol.83
London Art Trail
Miyuki Kasahara
笠原 みゆき

Dilston Groveの外観

オーバーグラウンドのサリーキー駅を出て北へ、サダックパークを横切り東へ向かうと、 緑豊かな公園の一角に教会のような建物が見えてきます。今回はこの旧教会を利用したギャラリー、Dilston Groveから、Beth Collarの個展、「Daddy Issues」(親父の問題)をお伝えします。

「Daddy Issues」2019 ©Beth Collar

まずガラス張りのモダンな増築したらしい部屋に入り、展示のプレスリリースをもらいます。そして奥の畳一畳はある大きな木のドアを引いて冷んやりした教会に足を踏み入れます。この教会、もしかして、コンクリートでできてる?そうなんです、1911年に建てられたイタリアンスタイルで、英国でも珍しい、20世紀前半のコンクリート製の教会なんです。

「Daddy Issues」2019 ©Beth Collar

さて、広々とした会場に散らばったテラコッタ製の彫刻インスタレーソンを見ていきます。これは足?でしょうか。表の皮はバナナの皮のようにペロリと剥けていて、中から木の枝をボキッと折ったように中から筋肉や血管部分が露出しています。

「Daddy Issues」2019 ©Beth Collar

こちらもやはり、脚のようです。ヨーイドンと今から走り出しそうな脚です。

「Daddy Issues」2019 ©Beth Collar

ヘンゼルとグレーテルのように破片(パンじゃなくて体のですが…。)を一つ一つ追いながら奥へ進みます。 祭壇に上がると、今度は骨盤のあたりでしょうか?

「Daddy Issues」2019 ©Beth Collar

もう少し、体の全体部が見たいものだと思っていた矢先、最後に現れたのは上半身部分。仰向けに横たわっているようで、顔はわかりません。そしてその胴体部からキノコのように寄生してにょきにょき生えてきているのはケシの花、それともアネモネの花でしょうか。ここで、ふと思い当たるのがギリシャ神話に出てくるアネモネの話。ギリシャ神話にアドーニスという美少年が登場します。アドーニスは、美と愛の女神アプロディーテーに愛された美少年です。ある日、狩りが好きだったアドーニスは、森のなかで一頭のイノシシを見つけます。アドーニスは槍を投げてイノシシに傷を負わせたものの、反撃してきたイノシシに脇腹を突かれて死んでしまいます。女神アプロディーテーは悲しみの涙をアドーニスの上にこぼし、それがアネモネの花になった、あるいは女神アプロディーテーがアドーニスの血からアネモネを咲かせたともいわれています。アネモネの学名はギリシャ語の「anemos(風)」に由来するそう。 英語での別名も「Windflower(風の花)」というそうです。

Collarは今回の伝統的なテラコッタ彫刻を製作するにあたり、15世紀のイタリア、ボローニャのテラコッタマスターである彫刻家、 ニッコロ・デラルカ( Niccolo dell’Arca) の研究に加え、フランスやイングランドの教会に収められた解剖用の死体の研究を行いました。

実はこのDilston Groveと第26回で紹介の同じサダックパーク内にあるCGP London はバーモンジーアーチストグループという、地元の美術家グループによって1984年から運営されています。(今回はまた、Matt’s Galleryとのコラボレーションです。)広大な公園の一角にある二つのギャラリーは美術家にの運営するギャラリーとしてはロンドン最大級。新緑の美しくなるこの季節、ぜひ訪れていただきたいギャラリーです。

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