MENU

九州男児

番長プロデューサーの世直しコラム Vol.145
番長プロデューサーの世直しコラム 櫻木 光

今年の年末年始、平成になって初めて佐賀の実家で年を越しました。
佐賀にいることをみんなにお知らせしたので、なんと言うか同窓会のような
同級生たちの集まりに呼んでもらうことがいくつかありました。
中学の同級生の集まりには結構な人数が集まっていて懐かしい人たちに
再会できて楽しいひと時でありました。

ただ、ちょっと違和感を感じたのは、酔っ払った男衆はずいぶん威張っていて
女の人たちに対する態度がひどくぞんざいでした。
女の人たちは、それで怒るわけでもなく、ハイハイと受け流して笑っています。
客なのに水割り作ってくれたりするし。
男たちも楽しそうです。あれ?なんだこれ?と思いました。懐かしい感じもあります。

ああ、これが俗に言う九州男児か。と思いました。
田舎を出て30年以上東京に住んでいるとやっぱり感覚は変わります。
九州の地元では当然、自分たちのことを九州男児とは呼びません。
これが当たり前だからです。
世代的なものもあるんでしょう。若い人たちは違うと思うのですが、
僕の世代はおじさんおばさんの集まりですから。無神経でいられた最後の世代。

九州男児という言葉を調べてみると、九州出身の男性のこと。一本気、逞しい、勇ましい等、ポジティブイメージがある。反面、短気、曖昧、自己中心さらには男尊女卑などネガティブイメージもある。と書いてある。簡単にいうとそうなのだろう。と言いながら九州もいろんな県があり
風土や気候も、使っている言葉も歴史もずいぶん違う。だから大まかに括られた、他の地方の人が感じる九州地方から出てきた人たちの傾向。ということだと思うことにします。

僕自身も含めた九州男児の、僕のイメージは、今の時代は少しだけネガティブが多くなりました。
ここからはあくまでも私見です。今の九州の若者はどう変化しているのかわからないからです。

もともと九州の男は女の人にずいぶん甘やかされて育つものです。
歴史的には戦争の多い土地ではあるので、男はいつ戦争に行かなきゃいけなくなるから
かわいそうだ。と思われている節もあったと思います。
男の子は戦闘要員として貴重な扱いだったのかもしれません。

女の人の働き口がなかった頃、結婚するしか就職口がない九州の女の人たちは頭が良くて
うちのお父ちゃんはおだてて気分良くしていたら病気せずに良く働く。家が富む。
という作戦に出たんだと考えることもできます。

今はどうか知りませんが、僕の実家は本当に、「男子厨房に入らず」でした。
母親はプロの専業主婦のプライドも高かったんだとおもいます。
台所に入ると怒られていました。家にいるときは親父は母親の手伝いも何もしませんでした。
子供の僕も男の子だから手伝わせたりはしてくれません。逆によその女の子はよく母親を手伝ってたみたいです。
だから僕は掃除や洗濯はできても、今でもご飯の炊き方もりんごの剥き方も知りません。
おひとりさまの自分一人じゃご飯が作れないのです。どうやったらいいのかさっぱりわからん。

親戚の集まりに行くと、お酌は女の人がするものでした。家の掃除をして、料理を準備して、やっとみんな集まったところで会が始まるとお母さんたちはお酌係です。ゆっくり料理を食べさせてももらえません。お腹いっぱいになったおじさんたちが囲碁でも始める頃にお母さんたちはやっと一息つけて残り物を食べ始める感じでした。

九州の女の人たちは、男は、「どうでもいい意地の張り合い」や「クソみたいなプライド」で
できていることをよく知っているので、そこを触ろうとは絶対にしませんでした。
仕事がうまくいかなかったり、喧嘩して負けてきたり、勉強でつまづいたり。
しょんぼりしている男にすごく優しく接します。九州男は単純なのですぐに元気を取り戻しますが、それでもすぐに立ち直らない男に対しては、いつも優しい女の人が急に鬼のような形相になって「男のくせにしっかりしろ、男らしくしろ」と怒ります。とても怖いです。
で、仕方なく立ち上がる男の気持ちにまた優しく接します。見事なものです。
男の精神的なモチベーションを下げない技術が伝承されているとしか思えません。
男は男らしく、外では強くあることを常に女の人から要求されているともいえます。

そういう家庭をみんなそれぞれ持っているので、学校や職場などの男同士の
意地の張り合いは良くも悪くも熾烈を極めます。男の子は外ではみんな頑張ります。
真面目で意固地で短気なので、男同士、意見が衝突すると怒鳴りあったり殴り合ったり、
平気です。当たり前の光景。めんどくさいです。
関西の人がやるボケに突っ込んだりもできません。冗談が通じないと言われています。
ボケる、突っ込む。という文化はありませんでした。ふざけてんのか?となるんです。

古い映画ですが「幸せの黄色いハンカチ」の高倉健さんが演じた主人公は
他の地方に働きに出た九州男児が他の地で通用しない九州男児の特殊性に苦労する。という
描かれ方もしていますね。涙が出ます。

そういう男たちを手のひらで転がしているのが九州の女たちだと思うのです。
一見、九州は男に都合のいい男社会のように見えますが、男は、いつも優しい女の人から
常に成功や勝利を要求されている状態だともいえますね。圧が強い。
実は男は女の人に人前で威張らせてもらっているだけで、家に帰ったら甘えます。
男尊女卑だと言われていますがとんでもないです。たまに気づいてないバカ男もいますが。
そんなバカな男たちのわがままや無神経さを優しく見守るストレスもすごいんでしょう。
ちゃんと見返りがないと愛想をつかされてしまう。
ちゃんと働いて楽させろや父ちゃん。それが女の人たちへのストレスの代償です。

そして女の人は男に優しくするのと反対に女の人同士だと最初から厳しくする印象もありました。ものすごい意地悪な婆さんとか本当にいました。
九州男児と結婚した他の地方の女の人は色々びっくりするんじゃないかと思います。

慢性的なマザコン社会なのかもしれませんが、そうやって男と女の関係がうまく成り立っている土地が九州である。ということじゃないかと思うのです。
私見ですよ、あくまでも。18年過ごした時の感想です。

いま、仕事をしていてビクビクしているのはパワハラ、セクハラの問題です。
毎日そのことに気を使って仕事をしなければならなくなりました。
ちゃんと仕事をやらない奴ですら、むげに叱ってはいけない社会になったし、
男らしい、女らしいという表現も性差別的と見なされることもあります。
それこそ九州男児の僕には本当にやりにくくなりました。
今の定義で考えると表面的には九州男児がパワハラ、セクハラそのものだからです。

九州男児の感覚が東京に出てきた時点で、東京にまるで通じないことは
痛い目に何度もあってわかっていました。よく東京の女の人にガチで怒られました。
そういう毎日を過ごしているから、地元の同窓会の男女関係に違和感を感じたんでしょう。 おいおい大丈夫かよこいつら?と。

女の人の働き口がちゃんとある。どっちかっていうと女の人の方が活躍する世の中になりつつある。ネットのおかげで在宅でできる仕事も増えてきた。会社に育児所があって子連れ出勤という言葉も出てきた。イクメンという形の男の育児がポピュラーになってきた。主夫もいっぱいいる。当然戦争に行くこともなくなった。男が家を継ぐとか継がないとかそういう感じの世の中でもない。威張るって行為がすでにナンセンスに感じられるようになった。
男の役割も価値もすごいスピードで変化しています。そんな社会です。

全国にいる、多分40歳以上の九州男児は本当に気をつけないと痛い目に合うような時代になりましたよ。先生に学校で殴られた世代。今はどんな理由でも人を殴ったら一発レッドカードです。
我慢が必要。よく失敗される財務大臣の失言も、まさに九州っぽい失言です。

九州男児のわがままや雑さは、なかなか劇画っぽくて面白いんだけど、九州の社会と女性にしかわかってもらえないと思いますし、実はとっくに九州の社会と女性にも通じなくなってるんだと思います。

本当はこの問題は九州男児だけの問題ではありません。男全体の問題だと思うのです。

でも、頑張りましょうね。九州男児。

Profile of 櫻木光 (CMプロデューサー)

プロデューサーと言ってもいろんなタイプがいると思いますが、矢面に立つのは当たり前と仕事をしていたら、ついたあだ名が「番長」でした。


続きを読む