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COLUMNコラム・ザ・ちゃんこ

カンボジ愛しちゃいました

とりとめないわ 第39話
とりとめないわ 門田 陽

アンコールワットと猫ひろしの国。あとは悲惨な内戦があって人口分布図がいびつというくらいが僕の持ち合わせた前知識の国。そんなカンボジアに11月の半ばから10日間行ってきました。仕事(ロケ)です。

朝10時に成田からバンコク経由でプノンペンに着いたのが現地の夜7時(日本の夜9時)。第一印象は「蒸し暑い」でした。ホテルまで車で30分、その日は夜で暗くてあまりわからなかったのですが翌日からとにかく人も牛も車もバイクも電線(※写真①)もゴチャ混ぜで熱い毎日を味わいました。オジさんのカラダにはなかなか堪える場所でしたが、忘れていた記憶やにおいやどうにもならないもどかしさみたいな気持ちを久々に思い出したのです。

写真①

今回一緒に行ったメンバーに後輩のコピーライター湯治健富くんがいます。彼は学生時代(十数年前)にバックパッカーでこの地にしばらく滞在していたそうでカタコトの現地語で地元の人と話していてちょっと羨ましかった(※写真②)のですが、彼によれば首都プノンペンの変わり方は凄まじくて多くの思い出の地が跡形もなかったそうです。色んなことが過渡期の国なのだと思います。現地のガイドさんの話でも、2005年頃は8~90万人だった人口があれよあれよと今はもう180万人を超え、調査が追い付いてないので本当は200万人以上はいるはずとのこと。日本でいえばこの10年くらいで新潟市が一気に名古屋市くらいのでかさになった感じでしょうか、ってわかりにくいたとえでゴメン。

写真②

わずかな富裕層はいるものの、市民一般大衆の暮らしは一言でいえば貧しいです。街は一歩路地に入ると舗装されていないどころかゴミの臭気がひどいです。そして子どもの数の多さには目を見張ります。至るところで下の子の面倒をみる上の子の姿があるのですがその上の子がどう見ても小学生以下です。5才のお姉ちゃんが1才の赤ちゃんを自転車のカゴに乗せてお店にお使いに来ている図があちこちで見られます。それとはまた別の図で、これまたどう見ても小学生がバイクで公道を走っています。バイクはこの国を支える象徴にも思えます。父母の間に挟まっての4人乗りや5人乗りも沢山見ました。明らかにサイズ感がおかしい荷物のバイクも沢山見ました(※写真③)。僕たちが訪ねた田舎の機織りを生業にしているお宅は(※写真④)、小さなソニーのブラウン管テレビの前に多くの子どもたちがかじりついてアニメを見ていました。しかし所得倍増の真っただ中なので暮らしに元気があります。ちょうど日本の昭和40年代くらいの感じなのでしょうか。

写真③

写真④

平成生まれにはとても理解できないでしょうが、古き良きコンプライアンスなどまるでなかったあの頃(こんなこと会社ではとても言えません 笑)がカンボジアにはまだあります。お醤油が切れたら隣の家から気軽に借りられたあの時代がここにはまだしっかりあります。ただ大きな違いも感じました。それは子どもたちが見ている番組や情報やコンテンツは世界標準のまさに「今の今」なのです。

当時日本人が何とかムリして家電や車を買っていたように今のカンボジアの多くの家庭もバイクやスマホを買っていて街にいる子ども達はスマホを普通に扱いこなしています(※写真⑤)。その辺は今の日本の子ども達と変わらないのです。決してあの頃子どもだった僕たちがそこにいたわけではありませんでした。このフシギな感覚は初めての経験で個人的な収穫です。忘れられない国になりました。

写真⑤

さて帰国直後、2025年の万博が大阪に決まり1970年の大阪万博でアメリカ館の月の石に4時間待ちの行列の映像が流れ驚きました。というのは、今回のロケは天気に恵まれ予備日が空いたのでカメラマンの山田トモフミさんとカンボジア国立博物館(※写真⑥)に行くことができました。そのときのことです。国立博物館には仏像を中心に世界的な文化遺産が数多く鎮座されていたのですが、その片隅にやや違和感のあるコーナーがあってそこにアポロが持ち帰ったあの「月の石(本物!)」が展示されていたのです。BUT、人だかりがないどころか誰も注目していません。前の万博に行けなかった僕は一人で興奮したのですが全く見向きもされていないのです(※写真⑦)。まさに月日は百代の過客ににしてをしみじみ感じたカンボジアなのでした。

写真⑥

写真⑦

ところで、「猫ひろし」と「舘ひろし」の文字配列は老眼の僕にはパッと見同じなのでそろそろハズキルーペかな、という話はまたの機会に。

Profile of 門田 陽(かどた あきら)

門田陽

電通第5CRプランニング局
クリエーティヴ・ディレクター/コピーライター
1963年福岡市生まれ。
福岡大学人文学部卒業後、(株)西鉄エージェンシー、(株)仲畑広告制作所、(株)電通九州を経て現在に至る。
TCC新人賞、TCC審査委委員長賞、FCC最高賞、ACC金賞、広告電通賞他多数受賞。2015年より福岡大学広報戦略アドバイザーも務める。
趣味は、落語鑑賞と相撲観戦。チャームポイントは、くっきりとしたほうれい線。

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