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偶察力

番長プロデューサーの世直しコラム Vol.137
番長プロデューサーの世直しコラム 櫻木 光

偶察力という言葉がある。
「ぐうさつりょく」
偶然、察知する、力。
この言葉が大好きでワクワクするんです。
呑気でシビアで前向きな考え方だからです。

広辞苑では
「思わぬものを偶然発見する力。
幸運を招き寄せる力。」
と書いてあります。
英語で言うとセレンディピティだそうです。
これだけではなんじゃそりゃなんですけど。
英語で言う必要もないですが。

わかりやすい説明としては
ニュートンが庭仕事をしていたら、リンゴが
ポテッと木から落ちた。それを見て万有引力を
発見した。と言う話。

もっとわかりやすく言うと
ファイザー製薬が、狭心症の治療薬を開発している時に
全然うまくいかず、臨床試験の中止を決めたそうです。
被験者からその薬を回収しようとしたら、被験者の多くが
その薬をなかなか返そうとしない。なぜだ?と調べたら
なんか他に良いことがあった。それがバイアグラになった。と言う話。

調べていくと、世の中の多くの素晴らしい発明や発見は
ダイナマイトもX線も電子レンジもトランジスタもポリエチレンも
他の物を開発している途中に、たまたま発見されたと言うことがわかります。
世界の偉人の伝記を読んでいても、ほとんど成功のきっかけは「たまたま」です。
なんだ、偉そうに、たまたまじゃねえか、とすら思う。

実は、そうやって本当は気づいてないラッキーが自分の周りにゴロゴロしてるんじゃ
ないかと思うのです。
そういう意味で「偶察力」って実は努力より大事な事かもしれない。
所詮たまたまだけど、ぼーっとしてたら気づかない「たまたま」だからでしょう。

自分に偶察力をもたらしてくれるのは想像力と好奇心ですね。
多分、どこかに引きこもっていたら出会わない。
閉ざしている人には偶察力はつかないんでしょう。

まず、なんかしようと思ってやり始めた事に想像力と好奇心を持って
面白がっていたら、その作業から知る新しい情報の中に
また違った面白いものが混じっている。と。ん?なんだこれ?と
気を引かれてその事を調べたり考えたりしていくうちに
どんどん広がって行ってもっと違うものを発見してしまう。
面白くなっちゃったりして。
あら?これってすごくないか?

興味のあることを好きにやっていたら、なんかうまく出来るようになる。
それを、たまたま偉い人が褒めてくれた。
人間って結構それだけでテンションが上がってもっと頑張れるようになったりする。

新しい他者に出会う。ということにも近い。
柔らかく自分に起きる出来事を見つめたり受け止めたり。
チャンスをもらうということも、突き詰めていくとたまたまなのです。

ひっくり返すと嫌なことも「たまたま」やってくることの方が多い。
入った会社の上司が嫌な奴でアホだった。とか、居眠り運転の車にぶつかられるとか
雷が近くに落ちた。とか、ロケの日に雨が降った。とか。
自分の力ではどうしようもない事がめちゃくちゃ起きる。
そう言う目にあって自暴自棄になって、もうダメだとか
嫌だ嫌だと思って心を閉ざしてしまうとそこで終わっちゃうかもしれませんね。
へーこんなことも起きるのね。さてどうしよう?
と前向きに考えていると違った方向のアイディアも浮かぶものです。

嫌なことがあっても自分の心は常に開けておく。
そういうのも全部ひっくるめて自分に起きる未知な事柄に興味を持つ。
うまくいかないことも、好奇心と想像力を働かせて、角度を変えてみてみると
新たな発見があったり、うまく行くアイディアを見つけられたりするんじゃないか。
と思うのです。誰かが助けてくれたり。

どうせほとんどチャンスは「たまたま」やってくるんだから。
そのたまたまをパッと掴むのが上手い人が幸せな人なんでしょう。
よくいう「ついてる人」や「もってるひと」は偶察力の強い人と言えるような気がします。

「わらしべ長者」という昔話がありますが、まあ、それはそれは都合のいい
ずいぶん雑なサクセスストーリーだなあと思っていました。長い間。
でも、偶察力という観点でもう一回読んでみると、なるほどそういうことか。
と思います。なんか、その辺でたまたま見つけたものを工夫して面白がって
いると、それがとても必要な人がやってきて、それより価値の高いものに変えてくれと
頼んでくる、ということの繰り返しで長者になる話。
たまたまの連続だけどばかにしたものじゃない。

自分の偶察力を大切にした方がいい。
ただ真面目に努力していたら必ずいい事があるとは限らない。
ただ偶然を待っていてもいい事が降ってくるとも限らない。
そもそも偶察力には根拠がないし答えもない。
僕がCMプロデューサーなんかやってられるのもたまたまなんです。
たまたまこうなった。

まず、自分の行く道を漠然とでもいいから決めて、それに向かって走り始めてみる。
そして、身の回りに起きる変化や出会う人との関係を素直に受け入れる。
いい事が起きそうな時やチャンスだと思える時は自信がなくても飛び込んでみる。
まだ早いと思っても、やるという選択をして、その事を成立させるために一生懸命やってみる。
そうやって偶察力も自分も鍛えられて行く。
そんな感じが人生がうまく行く人の思考回路なんじゃなかろうか?

俺には無理だ。とか、俺はダメだ。自己評価を低くしないのがコツかも。
勘違いも良くないが、前向きに素直に。

偶察力を言い換えると「いいことに気づく力」なんじゃないかと思うのです。
たまたまやってくるいい事を、準備をしながら待っている。
自分に必要なものかどうかを見極めながらチャンスを選別しながら待つ。
目指したものとちょっと違っても、拒否せず受け入れてみる。
たまたま本当のチャンスだと感じる事がやってきたら素直に感謝しながら受け入れる。
えいやっと飛び込む勇気を持つ。
そう言う事ができる力があった方が後悔しないで生きられるんじゃないでしょうか?

どうせたまたま生きてるんですから。
気楽にいこうぜと思う日もあります。

Profile of 櫻木光 (CMプロデューサー)

プロデューサーと言ってもいろんなタイプがいると思いますが、矢面に立つのは当たり前と仕事をしていたら、ついたあだ名が「番長」でした。


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