大切なのは呼吸と観察、自分の言葉で個性もぶつけて、私的インタビュー論

東京
エンタメ批評家・インタビュアー・ライター
これだから演劇鑑賞はやめられない
阪 清和

 エンタメ分野で3000人近くの人にインタビューしてきた。戦略は人ごとに違うが、共通して心掛けているポイントもある。

 最初の5分間は相手を観察する。大事なのが呼吸だ。相手の呼吸や空気感になじませることで創り出される雰囲気の中では、話しやすくなるからだ。質問後の目の動きと唇が動き始めるリズムも頭に入れる。質問を吟味してから話す人もおり、焦れて次の言葉をかけようものなら、飛び出していたかもしれない珠玉の言葉が永遠に聞き出せないこともある。

 個性も大事。自分が相手に伝わるように自分の言葉で話すべきなのだ。どこかで借りてきたような質問を舞台俳優にしても、答えは予想の範囲内。時には自分の興味から出発するのも可。私はジャクソン・ブラウンとシェリル・クロウという世界的シンガー・ソングライターに「歌を生み出す瞬間」の醍醐味を聞いたが、彼らは「あなたも曲を創るんですね。だからその質問はとても真剣なはず」と真意を見抜き、なんと「良い歌の創り方」を教えてくれた。

 そして、固定観念を持たないこと。現役を続ける大女優に「新しい発見は今もありますか?」と質問した。完成された方に失礼かとも思ったが、嬉々として話し出した。稽古場に向かう車の中から見えた若いカップルの様子に「男の子は気持ちが冷めかけているのかな」とか「女の子はあと一歩踏み込んだ方がいいな」とか考え、そんな感情の動きから気付いたことを日々新しい表現として演技に活かしていると答えたのだ。

 私はインタビューでも「会話」がしたいタイプ。相手の「人間的な」部分をこれからも引き出していきたい。

 インタビュー論を近々まとめたいと思っている。その秘訣を門外不出にする気はないので、ブログで発表するかどこかで教室を開くかして、みんなとシェアしたい。それがきっとエンターテインメントの質も上げるはずだ。

プロフィール
エンタメ批評家・インタビュアー・ライター
阪 清和
共同通信社で記者だった30年のうち20年は文化部でエンタメ分野を幅広く担当。2014年にエンタメ批評家として独立し、ウェブ・雑誌・パンフレット・ガイドブック・広告媒体などで映画・演劇・ドラマ・音楽・漫画・アートに関する批評・インタビュー・ニュース・コラム・解説などを幅広く執筆中です。パンフ編集やイベント司会も。今年後半からは全国の新聞で最新流行を追う記事を展開。活動拠点は渋谷。ほぼ毎日更新のブログはこちら(http://blog.livedoor.jp/andyhouse777/)

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