社会の危機に底力発揮する堂本光一、「SHOCK」再生へのアイデア次々実現

東京
エンタメ批評家・インタビュアー・ライター・MC
これだから演劇鑑賞はやめられない
阪 清和

 堂本光一という男がいる。きらびやかなスポットライトを浴びるエンターテイナー、そして普段は関西人らしく周囲を和ませるムードメイカー。しかしこの男がその底力をさらに力強く発揮するのは、社会が危機に陥った時だ。彼が築き上げたミュージカル「Endless SHOCK」シリーズは2000年にスタートしているが、2011年の東日本大震災、そして今年2020年の新型コロナウイルスのパンデミックという2つの危機に見舞われている。堂本光一はそのたびに力強く立ち上がらせ、再生させてきた。今年2月の公演中止から1年の来年2月、今秋に大阪で試みられたスピンオフ版の「Endless SHOCK -Eternal-」を磨き上げ、シリーズ誕生の地、東京・帝国劇場で不死鳥のように再び飛翔させる。(画像はイメージです。ミュージカル「Endless SHOCK -Eternal-」とは関係ありません)

 大きな機構を使った舞台表現、密着するパフォーマンス、観客席の真上を飛ぶフライング…、堂本らが磨き上げてきた「Endless SHOCK」シリーズは「3密回避」や「ソーシャル・ディスタンス戦略」とは相容れないものだった。「完璧なものができないのであれば…」。他の劇場が徐々に再開し始める中、中止を選択した。
 コロナ禍が深刻さを増す中、苦悩の日々が続いたが、堂本は下を向かなかった。出演者を減らし、パフォーマンスの一部も変更、物語も一部手を加えた上で「-Eternal-」という副題を付けてスピンオフバージョンであることを明示し、公演を断行。その大阪のステージで堂本は観客の心の深い部分にある気持ちに気付くことになる。幾重にも張り巡らされた感染防止対策。消毒など観客自身に課された義務も多い中、ミュージカルを楽しんでくれていることに対して「何よりもお客様がその場を成功させようとしてくれている。そんな気持ちに応えなくては」と痛感したのだ。

 その気持ちは堂本のやる気をどんどん押し上げる。来年の帝劇公演では、本公演の初期に、公演と並行して、映画館で『Endless SHOCK』を上映するというアイデアを実現させた。過去映像ではない。今年の公演が中止になった後、無観客の帝劇で様々なポジションに設置したカメラやドローンで撮影した特別映像なのだ。見せ場の階段落ちを横から見たシーンなど、初めて観る映像も満載されている。
 共演者が「光一くんの発想力はすごい」と感嘆するように、常にファンのために何か工夫できないかと考えづける堂本。作品自体が喪失と再生を繰り返す物語であり、日々新たな幕を上げるたびに作品もまた再生している。そんな作品のテーマが堂本光一の生きざまと重なって見えてきた。

 ミュージカル「Endless SHOCK -Eternal-」は2021年2月4日~3月31日に東京・丸の内の帝国劇場で上演される。

プロフィール
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阪 清和
共同通信社で記者だった30年のうち20年は文化部でエンタメ各分野を幅広く担当。円満退社後の2014年にエンタメ批評家として独立し、ウェブ・雑誌・パンフレット・ガイドブック・広告媒体・新聞などで映画・演劇・ドラマ・音楽・漫画・アート・旅に関する批評・インタビュー・ニュース・コラム・解説などを執筆中です。パンフ編集やイベント司会、作品審査も手掛け、一般企業のリリース執筆や顧客インタビュー、広報・文章コンサルティングも。来年以降は全国の新聞で最新流行を追う記事を展開。YouTubeにも進出します。活動拠点は渋谷・道玄坂。Facebookページはフォロワー1万人強。ほぼ毎日更新のブログはこちら(http://blog.livedoor.jp/andyhouse777/ )。noteの専用ページ「阪 清和 note」は(https://note.com/sevenhearts)

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