映像2025.02.07

生きづらさと、愛することと、変わること。映画『誰よりもつよく抱きしめて』レビュー

東京
ライター
来た、見た、行った!
かつら ひさこ
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「じぶんを かえたいと ほんきで おもっているのなら 

ゆうきを だして かわれば いい。

じぶんを かえられるのは じぶんだけだから。」

 

これは本編のあるシーンで出てくる、いもとようこさんの絵本『まいにちがプレゼント』からの引用だ。

 

強迫性障害という病気になり、生きづらさや周りのわかってもらえなさに苦しみながら生きる絵本作家・良城

一緒に暮らしながら、彼に寄り添う書店員の月菜。

愛する人に触れられない、触れてもらえない苦しさともどかしさを抱えつつ、寄り添いながら生きるふたり。

 

多かれ少なかれ、人は家族のため、友人のため、愛する人のため、つつがなく毎日を送るために、自分の気持ちに蓋をして生きることもある。

それが毎日繰り返されていくうち、自分の気持ちややりたいことが見えなくなっていくことがある。

 

恋人同士で触れ合うことができず、いつしかヒロインが自分の感情を抑えることが日常になっている様子が淡々と描かれていて、それが観ていて辛かった。

誰も悪くないからこそ苦しく、どうしたらいいのかわからなくなる。

それは、形は違えど自分も経験したことがあるからだ。

 

知らず知らずのうちに自分の気持ちに蓋をしていた月菜が、ジェホンとの出会いをきっかけに自分の気持ちを解放していく流れがよかったし、クライマックスで、月菜のために良城がとある行動を起こすのだが、これを愛情と言わずして何と言おうか。

 

この映画は絵本が重要なモチーフとなっており、さまざまな場面でキーとなっていて、本が人生を変えてくれると割と本気で思っている自分にはぐっときた。

映像がとてもきれいで、空や海、雨、陽の光といった自然の美しさが、登場人物たちの心情にリンクしていき、心にすっと入ってくる。

 

 

自分のこれまでの歴史ややりたいこと、人を想う気持ちといったものを見つめ直すきっかけになった映画で、今年の初映画がこの1本でよかった。

日々を生きるのがちょっと疲れてしまった人は、ぜひ観ていただければと思う。

『誰よりもつよく抱きしめて』
2025年月2月7日 TOHOシネマズ 日比谷ほか全国ロードショー

©2025「誰よりもつよく抱きしめて」HIAN /アークエンタテインメント

監督:内⽥英治
出演:三⼭凌輝 久保史緒⾥(乃⽊坂 46)
ファン・チャンソン(2PM)
穂志もえか 永⽥凜 北村有起哉 北島岬 ⽵下優名 酒向芳
原作:新堂冬樹「誰よりもつよく抱きしめて」 (光⽂社⽂庫)
脚本:イ・ナウォン
主題歌:「誰よりも」BE:FIRST(B-ME)
製作:宮地⼤輔 川村英⼰
プロデューサー:宮地⼤輔 楠智晴
⾳楽:⼩林洋平
脚本:イ・ナウォン
特別協⼒:株式会社光⽂社
製作:HIAN アークエンタテインメント
配給/制作プロダクション:アークエンタテインメント
宣伝:ブロードメディア/HIAN
公式HP:https://dareyorimo-movie.com/

▼あらすじ
鎌倉の海沿いの街で同棲する、絵本作家の水島良城(三山凌輝)と書店員の桐本月菜(久保史緒里)。学生時代から付き合ってきた二人は、お互いのことを大事に思い合っているが、良城は強迫性障害による潔癖症を患い、恋人の月菜にも触れることができず、手をつなぐことすらできない日常が続いている。ようやく治療を決意した良城は、合同カウンセリングで初めて同じ症状を抱える女性・村山千春に出会う。思いを共有できる相手に出会えたことを喜び、千春との距離を縮めていく。仲睦まじく思いを共有する二人の交流を目の当たりにし、月菜はショックを受けてしまう。二人の溝がどんどん深くなっていくなか、月菜の前に、恋人と触れ合っても心が動かない男・イ・ジェホン(ファン・チャンソン)が現れる。愛する人と触れ合うことがままならない者たちがすれ違い、ぶつかり合い、関係が交錯していく―。

プロフィール
ライター
かつら ひさこ
1975年札幌市生まれ。自分が思い描いていた予定より随分早めの結婚、出産、育児を経て、ライティングを中心とした仕事を始める。毒にも薬にもならない読みやすい文章を書くことがモットー。趣味はクイズ、お茶を飲みながらぼんやりすること。

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