グラフィック2023.12.13

制約があるから、グラフィックはおもしろい!対応力とデザイン力のバランスを強みに信頼を重ねる

名古屋
ミュー・デザイン株式会社 代表取締役
Imura Toshiya
井村 季也

広告代理店からデザイン制作会社へとキャリアを重ね、現在は若手デザイナーの育成にも尽力する名古屋のミュー・デザイン株式会社。営業などを経験した代表の井村 季也(いむら としや)さんは、時代の後押しもあり、副業だったデザインで起業を決めました。東海地方を中心とした大手企業のデザインワークを数多く手がけています。今回は2年前に移転した3階建ての新オフィスで看板犬とともにインタビューさせていただき、代表の井村さんがデザイン業界に飛び込むまでのストーリーや現在の活躍ぶり、展望、クリエイターへのメッセージなどをお聞きしました。

広告代理店の営業からグラフィックデザイナーへ。ITバブルが後押し

デザインの世界に興味をもたれたきっかけを教えてください。

子どもの頃から絵を描くのがとても好きで、得意でもありました。親の反対があって美大には進まず経済学部に行くことになったのですが、創作活動は続けて絵の個展を催したり、製版会社でアルバイトをしてデザイン業界に携わったりしていました。

大学卒業後のキャリアも教えていただけますか?

新卒で新聞社系の広告代理店に入社し、3年ほど営業職を経験しました。当時はちょうどITバブルの時代です。1年目の私の飛び込み営業でも広告契約がどんどん取れ、なんなく目標を達成できたこともあって空いた時間でデザインの副業を始めたんです。
その頃に注目され始めたMacBookの価格は50万円くらい。思い切って購入し、最初はクラブイベントのフライヤーなどをデザインしました。そこからデザインの世界にどんどんのめりこんで、ついにはグラフィックデザイナーとしてデザイン会社に転職することに決めたんです。
その会社で10年ほど経験を積んで、38歳でフリーランスになりました。

自分の力で起業にチャレンジする。「会社を継いでほしい」との打診で確認した心根

独立されたきっかけは何ですか?

「何かにしばられたくない」という気持ちが元々あったのですが、組織の中にいるとわりと従順で……言いたいこともなかなか言えずに、心が苦しくなったんですよね。デザイン会社の代表からは「会社を継いでほしい」とうれしい打診もいただいたのですが、やはり自分の力で独立したいと考えました。

独立されてからのストーリーをお聞かせください。

フリーになって1年ほどは、自宅を事務所にして活動していました。その頃は徹夜もよくしましたね。そこからアルバイトに来てもらうようになり、フリーになって5年を経た2017年に法人化しました。
そのあと、業務拡大とともに社員も増え、事務所も金山エリアから栄エリアに変わり、2年前から栄エリアにある鶴舞公園近くに移転しました。今の事務所は3階建てのうえ、屋上まであり、ペットも可。今年の夏に会社の看板犬を迎え、屋上にドッグランも設けました。

「会社ロゴを常に変えてもいい」という自由な発想と遊び心。20年以上の交友がある取引先も

会社名「ミュー・デザイン」の由来やロゴマークの想いなどを教えていただけますか?

会社名の由来は、私の苗字である井村の「MU」なんです。自分に強烈な趣味とかがあれば、それにちなんだ社名をつけることができそうですが、当時は特になかったのでシンプルに自分の名前からとりました。
ロゴマークやロゴタイプのこだわりは「常に変えてもいい」という決め事です。世の中のブランディングの常識とは異なる考え方ですが、同じマークを一貫して使うのではなく名刺を新たに注文するたびに変えています。
自社サイトもリニューアル中なのですが、現状のイメージに縛られることなく自由な発想でデザインしています。

現在の規模感と手がけられている事業を教えてください。

現在は私以外に3人のデザイナーが在籍しています。全員グラフィックデザイナーですが、それぞれに得意分野を持っています。
手がけている仕事の8割ほどが広告代理店や印刷会社経由の仕事で、残りの2割ほどが直接の取引です。東海地方の有名企業や大学関連の仕事も多く、あるハウスメーカーさんなどは起業前から20年以上も携わっています。

会社の強みは、対応力とデザイン力。チームの力を最大限に発揮する

ミュー・デザインの強みはどんなところにありますか?

フリーランスではなくチームで進めていますので、対応力とデザイン力のバランスがいいのが強みだと思っています。提案時も複数案をアウトプットできますし、私が外出中でもスタッフが即時対応してくれます。
1人では抱えきれない大きな案件も受けることができるので、大手の広告代理店や印刷会社からも信頼いただいています。
代理店さんと協業する有名企業のプロジェクトを進める一方で、地域の発展にも目を向けています。私は名古屋市熱田区の出身なのですが、熱田神宮の近くにある内田橋商店街をPRするためのキャラクターやお祭り・花火大会などのビジュアルを担当しています。予算が潤沢にある仕事ではありませんが、デザインを通じて地域が盛り上がり、笑顔の輪が広がるのがとてもうれしいですね。

紙だからクリエイティブ脳が鍛えられる?「お客さまのためになる」デザインを常に意識

井村社長が考えるグラフィックデザインの魅力はどんなところにありますか?

Webデザインとグラフィックデザインの一番の違いは「制約」だと私は思っています。Webデザインはどこまでも拡張できますが、グラフィックは「紙」という限られたスペースの上にデザインする必要があります。制作物のコンセプトはもちろん、そのスペースの中にいかに情報を組み込むか?という構成や構図にも頭を使い、それらがクリエイティブ脳を鍛えているような気がします。制約があるからこそ、グラフィックデザインは奥が深いんですよね。
グラフィックデザインを経験したことがある方のほうが、Webデザインも上手だと感じています。

お客さまのためになるデザインが、強い信頼へとつながっている

デザインするうえで大事にされていることはありますか?

私たちが担当しているデザインの多くは広告なので、やはりお客さまがあっての仕事だととらえています。そのため、“お客さまのためになるデザインを行うこと”を常に意識しています。
お客さまの要望に沿ってデザインすることも大事ですが、消費者の目線ももちろん必要です。デザインした広告物が世に出て成果を生み出すことで、お客さまからの信頼が得られると考えています。

スタッフの成長が大きな喜び。経営者としてやるべきことを

井村社長の仕事の喜びはどんなところにありますか?

以前は自身が手がけたデザインが世の中に出て反響を受け、賞を獲ることにも興味がありましたが、現在はスタッフの成長が何よりの喜びです。思いっきり従業員ファーストですね。仕事を任せるシーンも多いですし、来期はデザイナーの1人がさらにスキルアップできるようWebスクールの費用を会社で持つ予定です。
残業も減らしたいですし、利益をできるだけ還元したい。ペットが飼えるオフィスに移転したのもスタッフが心豊かに働いてもらえる環境づくりのためです。スタッフと私は歳が親子ほども離れているのでふだんは共通の話題がほとんどないのですが、看板犬を迎えたことで話すことも増えました。

東海地方のクリエイティブ活性化のために心がけていることも教えてください。

値段を下げて仕事をとらないこと。正当な価格で仕事を受けることがクリエイティブ業界全体のためになると思っていて、企業としてやっている私たちが率先してお客さまとの価格交渉もすべきかなと考えています。
また、経営者の集まりにも定期的に参加しており、東海地方のクリエイターと積極的に情報交換しています。

大切なのは、継続すること。志を持って、諦めずに前へ

会社としての今後の展望はいかがですか?

継続を一番に考えています。会社として大きくすることよりも大事なのが、従業員の成長です。楽しく働いてデザイナーとしても大きく飛躍してもらうことで会社の発展につながると信じています。

最後に、世の中のクリエイターにメッセージをお願いします。

クリエイターとして活躍するために必要なのは、とにかく負けないこと。諦めないことです。大きな志をもってやり続けさえすれば、なんとかなります。
なんでもできる完璧な人間なんていないけれど、みんな生きていかなくちゃなりません。前を向いて努力することだけだと思います。もし嫌なことがあっても、おいしいお酒を飲んで忘れてしまえばきっと大丈夫です(笑)。

取材日:2023年10月20日

ミュー・デザイン株式会社

  • 代表者名:井村季也
  • 設立年月:2017年
  • 資本金:300万円
  • 事業内容:グラフィック・Webデザイン
  • 所在地:〒466-0064 名古屋市昭和区鶴舞3丁目16-13
  • 電話番号:052-253-9962
  • URL:http://www.mu-de.com
  • お問い合わせ先:上記URLの「お問い合わせ」フォームより

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