アナウンサーの取材力で企業PR支援。局アナのセカンドキャリア、“しゃべるだけじゃない”が強みに

東京
株式会社トークナビ 代表取締役
Kaori Toida
樋田 かおり

テレビ局やラジオ局を退社後も、アナウンサーとして活躍し続けたい。そう願う人材を活用した中小企業の広報代行事業「女子アナ広報室」や、企業向けの話し方教室などを手がける東京の株式会社トークナビ。代表取締役の樋田 かおり(といだ かおり)さんもかつてアナウンサーとしてローカル局、キー局、準キー局を渡り歩き“分刻み”で生きてきた1人です。晴れやかな舞台で輝く職業のイメージもありますが、ライフステージの変化を受けてフリーランスとなってからは「セカンドキャリアをどう生きるか」という大きな課題も。経験豊富な人材が「何歳になってもアナウンサーとして生き続けられる場所を作り続けたい」と誓う樋田さんに、過去のキャリア、事業にかける思いを伺いました。

現役アナウンサー時代は“分刻み”で生きていた。将来への不安を原動力に起業

2008年、22歳で新卒として日本テレビ系列の青森放送へ入社。その後、29歳でトークナビを設立されるまでのキャリアを教えてください。

最初に入社したのはローカル局で、アナウンサーとして「伝える仕事」をするだけではなく、お天気コーナーの原稿を書いていました。また、ラジオ局もあったので企画やフリートークの台本も自分で作っていました。当時、ラジオ番組のタイトルを「樋田かおりのかおりんぐ」としたのは、恥ずかしながらいい思い出です(笑)。
11年に25歳で退社後は、準キー局である名古屋のテレビ局、東京のキー局でアナウンサーを務めました。ローカル局とは異なり、すでにある原稿を間違いなく、分かりやすく表現することを求められ、環境によって役割も変わると学びました。

テレビ局といっても、さまざまなんですね。一方、「局アナ」の経験で共通して学んだことはありますか?

効率よく時間を使うのは、今も生きていると思います。テレビやラジオでは、時報が鳴るごとにニュースがはじまるんです。時間ごとに、秒針が「0」を指した時点でニュースに切り替わるのは、視聴者のみなさんもよくご存知だと思います。局アナの当時は、時間帯によって情報番組のリポーター、ニュース番組のキャスターなどのあらゆる役割を担当して、ロケ先から汗だくの状態でテレビ局へ帰り、ニュース番組用のジャケットスタイルに着替えるのも日常茶飯事でした。20代はそれこそ“分刻み”で生きていると思うほど慌ただしかったです。

15年3月に、トークナビを設立された経緯を教えてください。

準キー局である名古屋のテレビ局を離れて、フリーランスとして東京へ上京したタイミングでした。フリーアナウンサーは事務所に所属して、仕事が来るのを待つ方が多いのですが、私はそれを待っていられなかったんです。かろうじて、1本だけレギュラー番組があったものの、将来「どうなるのか」と不安もあり、仕事を生み出せる場所を作ろうとしたのが設立の流れです。

フリーアナウンサーにある「何者でもない」という不安。セカンドキャリアをめぐる課題と向き合う

現在、御社では放送局でのアナウンサー経験を持つフリーアナウンサーの方々を積極的に採用しています。局アナ出身者の“セカンドキャリア”には、どのような課題があるとお考えですか?

女性の場合は、結婚や出産といったライフステージの変化により、放送局の不規則な働き方に対応できなくなる不自由さがあると考えています。また、フリーランスの視点では、たくさんの番組で重宝されていた局アナ時代と異なり「何者でもない自分」になってしまう不安がつきまといます。私自身も経験しましたが、放送局を退社すると企業プロモーション映像のリポーター、イベントの司会など、需要があっても枠が少なく、お仕事をいただける人材は限られていますし、“セカンドキャリア”を考える際の大きな課題だと思っています。

アナウンサーとしてのスキルを持つ人材を活用する御社では、課題に対して、どのようなアプローチをされていますか?

放送業界以外での活躍も視野に入れて、社会人としてのスキルを再び学ぶための研修を入社前と入社後に行なっています。すでにあるアナウンススキルに加えて、一般的なビジネススキルを身に付ければ「さらに世の中に貢献できる」と考えているんです。オフィスソフトなどの操作を学ぶ実務的な研修のほか、数十年先に描いた将来像に向けて「今、何をするべきか」と考えられるように、キャリア研修も実施しています。

アナウンサーの分かりやすく伝える力を武器に。全国展開で雇用を生み出す

 

アナウンサーという職種の“クリエイティブ性”をどのようにお考えでしょうか?

アナウンサーは、視聴者の方から見ると「しゃべる人」ですよね。でも、私自身は、他のスタッフと力を合わせてプロデューサーやディレクターが思い描くものを「ともに作る意識」を持っていました。そこに“クリエイティブ性”があると感じました。照明の方やテロップを入れる方など、テレビ局ではさまざまな役割を持つ人たちが集っていますが、クリエイター集団のアンカーとして、的確に情報を伝えるのが本分だと捉えています。

その“クリエイティブ性”は、企業PRをサポートする御社の「女子アナ広報室」でも生かしているのでしょうか?

はい。内容としては、企業の魅力をアナウンサー経験者が取材して、プレスリリースを作成し、メディアからの取材を呼び込みます。サービス発案のきっかけは、起業当初に注力していた研修事業でした。当時、講師をしていた人材の中で、リピートのかかる方とかからない方がいて、双方の傾向があると分かったんです。
リピートがかからず悩んでいた方々にヒアリングしたところ、職人肌といいますか、アナウンサー時代にニュース原稿の作成や映像の編集までご自身でされていて、アナウンス以外の面でも技術を持っている方が多かったんです。時期を同じくして、話し方のマンツーマンレッスンを受講された経営者の方から「トークが上達したので、メディア出演して自社の思いを伝えたい」と相談され、放送業界経験者とメディア露出したい企業をつなげられれば「Win-Winになれる」と考え、「女子アナ広報室」を立ち上げました。

客観的な取材によるプレスリリース作成に加えて、メディアを知る人材が企業広報をサポートするのは、ほかのPR会社とは異なる印象があります。

アナウンサーの取材力、記事作成力、そして、物事を分かりやすく伝える表現力を活用するねらいもあります。特に、私のようなローカル局出身者であれば番組の企画に関わった経験もありますし、メディア側の視点でプレスリリースを書けるのは強みだと考えています。
また、地方在住の方でもオンラインで全国の企業に取材できますので、セカンドキャリアとしての雇用を生み出す目的もあるんです。事業としてのトライアンドエラーは常に繰り返していますが、4年目となり実績は、1500件をまもなく達成するところまできました。

何歳になってもアナウンサーとして生き続けられる場所を。「あきらめず、輝ける場所を見つけて

この先、御社はどのようにアナウンス業界へ貢献したいですか?

事業を開始した当初に全国展開を夢に描いていた「女子アナ広報室」も、現在では北海道から沖縄まで対応できるようになりましたので、局アナ退社後も地方を問わず「アナウンサー経験を生かせる」と、より広く浸透させていきたいと考えています。
放送業界を離れたアナウンサーでは、30代で司会業に、40代からは話し方などを教える講師業に進む方もいますが、生計を立てるのが難しく将来に不安も抱える人も多いんです。弊社にもたくさんの履歴書が届きますが、そうした方々のために、40代でも50代でも、何歳になってもアナウンサーとして生き続けられる場所を作り続けたいです。

アナウンサー経験者として別の形でセカンドキャリアを築いた樋田さんから、最後にメッセージをいただければ。

視点を変えるのも大切です。放送局を退社して、フリーランスになると「しゃべる場」だけを探す方も多いんです。ただ、一見かけ離れた業界でも、自身のスキルを生かせる機会はあります。生放送のために“分刻み”や“秒刻み”で生きてきた経験は貴重ですし、チームワークが重視される仕事の現場で周囲とのコミュケーションを図りながら表現してきた経験は、財産ですから。あきらめずに自分らしく、輝ける場所を見つけてほしいです。

取材日:2023年8月8日 ライター:カネコ シュウヘイ

株式会社トークナビ

  • 代表者名:樋田 かおり
  • 設立年月:2015年3月
  • 資本金:1,000万円
  • 事業内容:研修事業・講演会・セミナー企画、運営。司会者キャスティング事業人材コンサルティング。広報代行事業
  • 所在地:東京本社 〒150-0043 東京都渋谷区道玄坂1-2-3 渋谷フクラス17階
    新宿オフィス 〒163-0532 東京都新宿区西新宿1-26-2 新宿野村ビル32階
    大阪支社 〒531-0072 大阪府大阪市北区豊崎3-15-5 TKビル2F
    福岡支社 〒810-0001 福岡県福岡市中央区天神一丁目9-17
  • URL:https://talknavi.co.jp/
  • お問い合わせ先:上記サイト「お問い合わせ」ページより

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