震災にコロナ…逆境を成長の糧に「切磋琢磨」し、グラフィック・Web・動画の3本柱を確立

新潟
株式会社セッサ 代表取締役社長
Kosuke Kamura
嘉村 康介

東京・新潟という二つの拠点を生かして「食分野」をはじめ、企業向けのクリエイティブを数多く手がけている株式会社セッサ。代表取締役の嘉村 康介(かむら こうすけ)さんは、営業職に就いていた当時に独学でDTPスキルを習得し、30年近くにわたりデザイン業界に携わってきました。リーマンショック、東日本大震災、コロナ禍のピンチもチャンスに変えて、会社は成長。社名の由来「切磋琢磨」の通り、たがいのスキルを磨き合う人材が多数いる環境で、クリエイター、クリエイティブとどのように向き合っているのか。嘉村さんのキャリアとともに伺いました。

キーエンスの営業からデザインの道へ方向転換。DTP黎明期に可能性を見出す

創業までの経緯を教えてください。

株式会社キーエンスの営業から、広告制作会社の営業に転職したのが転機でした。元々、キーエンスにいた時代にプロダクトデザイナーと接する機会があり、デザイナーの手がけた機能によって売れ行きが変わるのがおもしろいと思ったんです。そのあと、転職先の広告制作会社では、日中に営業として活動しながら、数十万円かけて「Power Machintosh 8100」と世に出たばかりのIllustratorを購入して、夜は独学でDTPのスキルを学びました。

働いていた広告制作会社が整理されたことを機に、「食分野」での営業経験があった仲間と、新潟で会社設立と同時に東京オフィスを開設しました。その時、広告制作会社時代にお付き合いのあった新潟日報社さんのグループ会社である新潟デザインセンターさん(当時。2010年に新潟日報事業社と合併、その後新潟日報メディアネットに社名変更)に「版下を無償でいいのでデータ化させてください」とお願いしたんです。また、その時期に先方のディレクターの方に、デザインのノウハウをいろいろと学びました。

当時は、制作の現場でDTPが普及していない時代でしたが、蓄積した版下のデータはのちに自社の財産になりました。DTP黎明期に可能性を見出して、時代を先取ることができたと思います。

事業内容を教えてください。

ブランドや新商品の開発などをサポートするブランディング事業と、グラフィックデザインやロゴ・キャラクターの制作など、販売促進を図るプランニング・クリエイティブ事業です。クリエイティブとしては、飲食店のメニューなどの紙媒体、Webサイト、動画と、幅広く対応しています。

「切磋琢磨」で三つのピンチを克服。得られた3本柱とは?

創業から28年目。会社にとっての転機はありましたか?

2008年頃のリーマンショック、11年の東日本大震災。そして、コロナ禍での経験が大きかったと思います。

それぞれ詳しく振り返っていただけますか。

リーマンショックでは、弊社の得意分野である外食産業がダメージを受けた影響で、創業以来初めての赤字となったんです。半年ほど厳しい期間が続いたのですが、メンバー達が勉強をがんばってくれて、デザインレベルが向上しました。

東日本大震災のときはWebの強化を図りました。当初から相談はあったものの「うちがやるべき分野ではない」と避けていましたが、販売促進や企画を練る時間が生まれて、新分野を開拓できました。

コロナ禍での変化は、動画制作ですね。平面のデザインを得意とする弊社のグラフィックデザイナーが作った動画の評判がよかったんです。ただ、力を入れようとしたところでコロナ禍となってしまい、自粛期間には会社負担でメンバー達に動画制作を学べるオンライン講座を受けてもらいました。当時、メンバー達も自主的に「プラスワンプロジェクト」として「もう一つ得意分野を増やそう」と意気込んでくれていました。そのおかげで、グラフィック、Web、動画の「3本柱」で活躍できる人材が多数生まれて、クライアントの要望にどの方面からも対応できる環境が整いました。

社名は「切磋琢磨」が由来だそうですが、そのとおりですね。

たしかに。自主的に考えて動くメンバーばかりです。採用では、向上心や協調性はあるか、そして、仲間と「切磋琢磨できるか」を重視しており、周囲といいアイデアをブラッシュアップできるメンバー達です。

会社設立が「平成8年8月8日」で、創業時のメンバーも「8人」と、末広がりの「8」にゆかりがあるんですね。

はい。ただ、創業日が「8並び」になったのは偶然ですね。「平成8年8月」なので「8日にしよう」と決めたんです。以降、8が弊社のキーナンバーとなり、ゴルフコンペでは8位を「セッサ賞」にしています。

東京でのノウハウを新潟でも生かし、魅力を全国へ発信。飲食業界の販売促進をサポート

オフィスは東京と新潟ですが、役割に違いはありますか?

はい。東京では営業企画に特化して、販売促進に悩む大手や中小の飲食系企業を多数サポートし、ニッチ市場を開拓しています。一方の新潟では、広告代理店さんや販促に熱心な地元企業さんなど幅広い分野への営業企画を行うとともに、2拠点のクライアントの要望を受けて弊社のクリエイティブ制作を一手に担っています。

新潟の「地域創生」も理念に掲げていらっしゃいます。

千葉県出身ながら、魅力を感じて引っ越してきた土地なので思い入れは強いです。新潟はかつて、横浜や函館などと並ぶ「開港5港」の情緒も残る歴史ある土地ですし、県内の山「日本国」の名前の由来など、外から来た人間として聴くと、面白い話もたくさんありますね。

現在、佐渡ヶ島を世界遺産にするためのプロジェクト「Sadoプライド」にも参加していて、東京で培ったプロモーションのノウハウを生かし、新潟の魅力を全国へ発信したいと考えています。

クリエイティブで組織の問題を解決。代表自らドローン資格取得、描く事業の未来

新たに力を入れている事業があるそうですが、それはどんな事業ですか?

経営側から従業員側に向けた、企業の社内ブランディングです。一般的なプロモーションは対顧客ですが、この事業では、企業内の課題をクリエイティブで解決できるよう提案しています。きっかけは「社員のモチベーション向上が課題」だとある企業から相談を受けたことで、従業員の意欲を引き出す「販売促進ツール」を手がけています。

今後、開拓したい分野もありましたら伺いたいです。

昨年からドローン免許が国家資格になりましたし、ドローンには可能性を感じています。現状、ドローンでの撮影を外注しているのですが、すべて「自分たちで完結できれば」と考えて、社内第一号として私が資格を取得しました。今後の撮影など、事業に活用していきたいと思います。

AI時代は自身のブランディングが鍵に。東京出張では「何かを吸収してきてほしい」

御社は、どのような人材を求めていますか?

グラフィックデザイナーで、Webと動画にも対応できるクリエイターさんが理想です。なおかつ、クライアントの課題や目的を具体的にデザインの力で解決できる人を望みます。関連する例え話として、メンバーにはよく「ドリルを欲しい人が求めているのは、製品のカッコよさだけではない」と伝えているんです。ドリルが欲しい人は「穴を開けたい」と思っているはずで、それを解決するのが本来のデザイナーの役割だと理解し、クライアントさんの本質的な悩みを汲み取れる人と一緒に働きたいです。

これからの活躍を夢見る、クリエイターへのメッセージをお願いします。

いずれ、実作業がAIやロボットに置き換えられる時代が来ても、クライアントから指名されるように自分自身をブランディングしてほしいです。そのためには、自分自身で積極的に学ぶ姿勢が必要だと思っています。昨今、デザイナーの人材教育をどうするべきかが弊社の課題にあるのですが、働き方改革などで、経験の場が限られつつあることに懸念を抱いています。もちろん、仕事と私生活のメリハリは大切です。ただ、クリエイティブの源は日常にありますし、仕事以外でも全力で楽しんでほしいと思っています。そのため、弊社のメンバーには、新潟から東京へ出張してもらうときに「何かを吸収してきてほしい」と送り出しているんです。デザイナーは「横書きのカッコいい職業」ではなく「職人」ですし、職人気質で自分の腕やセンスを磨いてほしいと思います。

取材日:2023年8月12日 ライター:カネコ シュウヘイ

株式会社セッサ

  • 代表者名:嘉村 康介
  • 設立年月:1996年8月
  • 資本金:1,000万円
  • 事業内容:広告プロモーションの企画、デザイン及び制作
  • 所在地:
    新潟オフィス 〒950-0088 新潟県新潟市中央区万代3-1-1メディアシップ 13F
    東京オフィス 〒102-0073 東京都千代田区九段北1-7-3 九段岡澤ビル3階
  • URL:https://www.sessa-net.co.jp/
  • お問い合わせ先:上記HPの「お問い合わせ」より

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