スペース2023.04.26

商空間設計で人びとを笑顔に。いつの日か「移動遊園地」で全国へ幸せを届けるべく、今をひた走る経営者

東京
株式会社ワンワールド 代表取締役社長
Yusuke Asano
浅野 雄介

小売業やアミューズメント業の商空間プロデュースを手がける、東京大田区の株式会社ワンワールド。
社名には、代表取締役社長の浅野雄介さんが「機長」となり、従業員や取引先を世界へと導くというロマン溢れる意味が込められています。内装やサインなど、店舗設計に関わる提案時は「お客様の要望」と「自分たちが叶えたいこと」の2案を必ず出すこだわりも。
将来は「移動遊園地で全国に笑顔を届けたい」と夢を語る浅野さんに、これまでの経歴や事業内容、会社のビジョンなどを伺いました。

自分が「機長」となり関わるすべての人たちを世界へと導く

会社設立以前の経歴から伺います。

大学卒業後、オフィス家具やストア什器などの製造・販売を手がける業界大手のメーカーに就職しました。私は、スーパーマーケットやディスカウントストアといった小売業の店舗作りをサポートする事業部へ配属され、企画営業を担当していましたね。お客様とデザイナーさんと連携して、店舗の内装やサインを提案から施工までを請け負うのが主な役割でした。

小売業向けの企画提案は、今ある事業内容の一部「商空間プロデュース」にもつながりますね。前勤務先を退社後、会社を設立された背景は?

祖父が自営業をやっていた影響で、中学時代から「将来は起業したい」と考えていたんです。ただ、当時はぼんやりとした思いだけで「自分は人に何を与えることができるのか」が分かりませんでした。大学卒業後は就職したんですけど、メーカー勤務の時代に出会った取引先の方とのやり取りが独立のきっかけになりました。
それこそ小売業の商空間プロデュースでしたが、取引先と話していて、コロナが流行り出した2020年頃から業界の大きな変革のきらいを感じました。コロナ前の店舗の在り方や消費者の常識が覆される売り場や店舗の在り方に変容していく、と。元々独立願望があり、また大手会社のサラリーマンとして取り組める内容ではなかったため、それこそ「ニッチ」なビジネスとして「独立するチャンスではないか」と直感したんです。事業計画書や損益試算表も作成しましたが、ほとんど根拠のない自信で勢いのまま独立して、会社を設立しました。

社名「ワンワールド」に込めた意味は何でしょうか?

自分が飛行機の機長になり、従業員やお客さまを世界へ導きたいとの思いから名付けました。背景にあったのは両親の存在です。両親が航空業界に勤務していた影響で将来パイロットになりたい夢があったんですよ。色々あって道なかばであきらめたんですけど、空をまたにかける仕事やロマンへの憧れが少なからず残っていると、社名を考えているときにふと思ったんです。
また、以前の勤務先では日本国内へ出張する機会が多かったですし、僕自身も旅行が大好きなので「何か結び付けられる名前にできないか」と考えました。色々な人の想いが乗った「会社という名の飛行機」を操縦して、それぞれの目的地やゴールへ導くのは社長となった今も変わりませんし、自分でも満足する社名にできたと思っています。

「顧客の要望」と「自分たちのやりたいこと」の2案を必ず出す

会社員時代から続く小売業の商空間プロデュースのほか、イベント・展示会など幅広く携わっています。新規分野は、どのように開拓されたのでしょう?

縁ですね。仕事とは関係ない共通の知人を通じた集まりを定期的に開催していたのですが、ふと「そういえば、独立してからは何をやっているの?」と聞かれて、事業内容を説明したところ「いいね。一度会社に説明にきてよ。」と仰っていただいたんです。僕自身、自分から仕事の目的だけでガンガン営業して売り込むのがあまり得意ではなく、ふとしたプライベートの付き合いから仕事に結びついているケースが多いですね。

浅野さんの人柄が伝わってくるエピソードです。業務における取引先とのコミュニケーションでは何か、重視していることはありますか?

空間設計の提案では、必ず2案を出します。1案は、お客さまのご要望どおりにストレートな企画です。ただ、それだけでは他社とのコンペになった際に差別化ができないので、比較していただけるように、僕や従業員がやりたい企画も出しています。大手や実績が豊富な会社と正面衝突していくだけの力が無い小さな会社なので、少しでも爪痕を残せればな、と。

「付加価値」意識した展示デザイン、大手を押しのけ受注に成功

自分たちのやりたい企画が通るケースもあるのでしょうか?

少なからずあると考えています。それこそアミューズメント業で最初に関わった仕事は、僕らのやりたい企画が通ったんですよ。複数社のコンペで、なんとか爪痕を残さなければと躍起になっていたんですけど、とがったアイデアと熱意でプレゼンテーションしたらなんと採用いただいて。これは大きな成功体験になりました。いきなりセリエAの試合に出場した弱小チームといった気持でしたね。笑

当時、提案した企画の内容は?

そもそもの依頼は、ブースのデザインと施工というものでした。一般的に想像される、受付台やゲームの試遊台を設置し、ブースの壁面でゲームの世界観を伝える一般的な作りにすると価格勝負になり勝ち目が薄いので、弊社は、ゲームに登場するサメのモニュメントを作りその中にモニターを設置する提案をしたんです。あえて付加価値をもたらそうと考えた提案を受け入れていただいて、とてもうれしかったです。

軸にある小売業の分野でも、意外な提案が通るケースはあるのでしょうか?

正直、斜め上の採用はほぼありません。アミューズメント分野とは異なり、小売業では商品を目立たせるのが一番の目的となるからです。例えば、店舗内のサインは「どこに何の商品が置かれているのか」を表示するのが目的ですし、空間になじむデザインを求められるのは、小売業ならではの特徴だと考えています。勿論、提案はします。会社のスタンスとしてどこか「遊び」の部分を取り入れたい気持ちがありますし、他社との差別化を考えたとき、似た内容では価格勝負になってしまうので、お客さまのご要望に沿った提案に加えて、今後も「何この案?(笑)」と言われるようなアイデアもあえて提供し続けたいと思っています。

将来は移動遊園地で全国各地へ笑顔を届けていきたい

分野を問わず、商空間プロデュースを手がける中で一番に重視していることは何でしょうか?

お客さまのお客さまを想像することです。独立前から商空間プロデュースに関わってきたものの、私自身は施主になった経験がないので、自主的に「業者目線だけで空間を見ないようにしよう」と心がけているんですよ。スーパーマーケットやゲームセンターへ行ったときは、私たちもお客さまになるじゃないですか。
ただ、業者目線だけで店舗などの空間を見てしまうと、そこにある設備の配置などに目を向けてしまい、提案の選択肢が狭まってしまう。本来、私たちに依頼してくださるお客さまは「商品へ興味を抱いてもらうにはどうすればいいか」「こうすれば子どもたちが喜ぶのではないか」と考えていますし、業者側である僕らにはないクリエイティブな意見も参考にしながら、空間設計に関わっていきたいです。

自社サイトでは「10年後のワクワクする未来に向かって、日々邁進(まいしん)」とメッセージを伝えていますが、今後のビジョンは?

最終的には、施主になりたいと思っています。具体的には、テーマパークを作りたい夢があるんです。映画『トイ・ストーリー4』に出てきた移動遊園地がやりたくて、大人も子どもも笑顔で楽しく遊べる空間を提供してみたいですね。日本のテーマパークでは、東京ディズニー・リゾートやユニバーサル・スタジオ・ジャパンが有名ですが、東京(千葉)と大阪にしかないですし、費用もどんどん高くなっていってる。いわゆる高級な「遊び」になってしまい敷居が高くなってしまっていると感じています。少子高齢化や不況など、厳しい時代だからこそ、リアルな体験を通じた施設運営が出来たらな、と夢を描いています。マネタイズできるかは検証していませんが……。
実は、大学時代に東京ディズニー・リゾートでのアルバイト経験があり、広く認められているホスピタリティ精神を学んだのはもちろん、老若男女の人たちが常に笑顔でいられる空間に感動したんです。期間限定にして「行く」から「来る」の発想でこちらから足を運ぶ移動遊園地であれば、全国の人たちに夢を届けられると思っていますし、華やかなデザインのアトラクションや演出で幸せを届けられる組織作りができればと考えています。あとは、自分自身がワクワクするような未来を感じたいという願望もありますね。笑

現場に足を運び、顧客が「何を求めているのか」を想像する

夢はふくらむばかりですね。そんな野望も掲げる浅野さんのもとで働くクリエイターは、御社の業務から何を学べると思いますか?

現場に立って考える姿勢を学べると思います。デザイナーさんと聞くとPCの前で作業するイメージもありますが、弊社の場合は、実際にデザインを手がける店舗へ足を運び、設計を考える「実地研修」を重視しているんです。店舗のどこに「デザインしたものが配置されるのか」、店舗のお客さまに「どう見えるのか」は、CAD上で図面を引くだけでは分かりません。私たちのお客さまが「何を求めているのか」は現地に立たないと体感できませんし、そうした経験が「真に考えるデザイナー」として成長する上で役立つのであれば、弊社としても喜ばしいです。

最後に、クリエイターへのメッセージをいただきたいです。

デザイナーさんには「ヒアリング力」を大切にしてほしいです。職業「デザイナー」と聞くと独創性あるものを作るイメージを抱く方もいますが、現実的に考えれば、自分のやりたいデザインができる機会はほとんどないんですよ。先ほどの話でも出しましたが、お客さまが「何を求めているのか」を汲み取るのが本来の役割で、重要なのは「お客さまが好きなものを出す能力」ではなく「お客さまが嫌いなものを出さない能力」なんです。
デザインの知識や技術も当然重要ですが、話し合いの中でお客さまとの雑談から趣味を見極めるなど、傾聴してヒアリングする力を身につけるのが成功の近道だと思います。デザインはすべての起源ですし、デザインがなければ何も生まれないので、自身の仕事に誇りを持っていただければと思います。
かの有名な「ひまわり」を描いたゴッホも、10年間で1枚しか売れなかったですが、その1枚は今日も世界中の人々から愛される作品になっています。
ぜひ、自分の感性に自信をもって、めげずに、やり続けてほしいと感じています。

取材日:2023年3月2日 ライター:カネコ シュウヘイ

株式会社ワンワールド

  • 代表者名:浅野 雄介
  • 設立年月:2020年10月
  • 資本金:100万円
  • 事業内容:商空間プロデュース・提案図面資料作成、店舗・オフィス・住宅デザイン設計 施工、サイン・ディスプレイ設計 製作 施工、業務用家具販売 ※CRES家具正規代理店
  • 所在地:〒143-0015 東京都大田区大森西2-6-4 エガワビル 202
  • URL:https://www.owd.co.jp/
  • お問い合わせ先:上記サイト「CONTACT」ページより

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