WEB・モバイル2021.08.18

いつの時代も、「買いたい」はなくならない。ECサイトの専門家集団・コンサルロケッツ

神戸
コンサルロケッツ株式会社 代表取締役
Shinichiro Onishi
大西 伸一郎
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今回のコロナ禍で、私たちのライフスタイルは急激な変化を遂げました。インターネット上で買い物をすること流れがさらに加速し、インターネット上で買い物ができる大手ECモールやECサイトの存在は、もはや生活の中で必要不可欠と言っていいでしょう。今回ご紹介するのは、“ECサイトだけ”に特化した事業を展開するコンサルロケッツ株式会社。神戸・三ノ宮に本社を置くコンサルロケッツは「欲しいと買いたいを解明する」を企業理念に掲げ、サイト制作からコンサルティング、販売促進活動まで、ECサイト運営に関するありとあらゆる業務をサポートしています。変化し続けるECサイト業界に身を置くのはなぜなのか?代表取締役の大西伸一郎(おおにし しんいちろう)氏にお話を伺いました。

 

スタートは、会社の中の小さな会社。

 

まず独立を意識したきっかけは何でしたか?

大学を卒業した後は会社に就職し、インターネット回線関連の営業をしていました。大阪、札幌、東京と、2~3年ごとに事業所を移り、大阪に戻ってきたのが30歳手前のことです。大阪に戻ってからは事業所の責任者を務め、会社から営業成績を落とさないように厳しく言われていました。契約が取れなかったら、毎回上司に理由を詳しく説明しなくてはならなかったし、契約を続けるのが本当にいいことか分からなくても、クライアントを説得しなくてはならなかった。そんな時、お客さまから言われてしまったんです。「大西さんは、一体誰のほうを向いて仕事をしているんですか?」と。その通りだ、とグサッときました。会社にいる以上は、会社の利益になるような働き方をしなくてはいけない。それならば独立して、自分の納得のいくような仕事をしよう、そう考えるようになったんです。

独立に向けて、どのように動かれたのでしょう?

周りに独立の相談をし始めて間もなく、営業先の会社の社長さんからいきなり「会社を作るなら出資しましょうか?」と申し出があったんです。もうびっくりですよ。喜ぶどころか、逆に怪しいぞ、とすら思いました(笑)。僕はその頃結婚していて子どももいたので、大きなリスクを背負う訳にはいかなかったんです。いきなりお金をもらって会社を立ち上げるのは、不安でしかありませんでした。社長さんに素直に事情を打ち明けたところ、それならまずは会社の中のいち部署として始めてみないか、と提案されました。僕がその会社の社員になり、「コンサルロケッツ」という部署を作って自由にやってみたらどうか、と。

それは斬新な提案ですね! 言うなれば、会社の中で小さな会社を立ち上げた訳ですね。

はい。僕1人だけのコンサルロケッツという部署で、ECサイト制作の仕事を始めました。所属は僕だけだったものの、制作は他部署のデザイナーさんにお願いできました。自力で営業して仕事を取ってきて、デザイナーさんに制作してもらい、お客さまに納品する、という流れです。立ち上げの苦労なく事業を始められる環境を用意してもらったわけですが、期待に応えるだけの成果を出さなくては、という想いは常にありました。必死で仕事しましたね。当時は朝9時に出社して、終電で帰るのが当たり前。京都から神戸まで通っていたので、家に帰る頃には深夜1時半です。土曜日も毎週必ず出社して…それでも、ぜんぜん苦には感じませんでした。今思えば、社内で随分と好き勝手をやらせてもらっていたと思います。あの時面倒を見てくれた社長には、今でも足を向けて寝られません。コンサルロケッツという会社があるのはその方のおかげですから。本当に感謝しています。

その後改めて、ご自身の会社の立ち上げに至ったのですね。

社長とは、部署の立ち上げ当初から、軌道に乗ったらいずれは独立するという話をしていました。始めて2年ぐらい経ったころ、これなら自力でやっていけそうだと、独立を決意したんです。「コンサルロケッツ」の名前はそのままに、自己資金で新しい会社を立ち上げました。部署があった会社とはグループですが、資本的には完全に独立しています。いざ立ち上げてみると、今までの環境がどんなに恵まれていたかが分かりました。人事や経理の作業、ちょっとしたパソコンのトラブルなど、会社にいた頃は誰かにやってもらっていた作業を、全部自分でやらなくてはいけなくなったんですから。ただ新しいことに取り組むのは好きなので、けっこう楽しんでやっていましたけれどね。

EC事業を始められた6~7年前は、まだまだECサイトが生活に浸透していない時代でしたね。

そうですね。インターネットが普及していたとはいえ、まだまだ買い物は店頭でするのが主流でした。よく「うちは百貨店にしか出さないし、ECサイトになんか出店しないよ」と門前払いされたりもしましたし。とはいえ、人々の買い物のスタイルはいずれ変わるかもしれない、という希望的観測はありました。ECというジャンルはやり方によっては伸びるんじゃないか、という想いは、創業当初からあったんです。

 

ECサイトの知識とスキルは、どこにも負けない

現在の事業内容について教えてください。

僕たちの会社では、ECサイトに関連するありとあらゆる業務を引き受けています。サイトの制作はもちろんですが、すでに自社サイトを持っていたり、大手ECモールに出店している会社の運営サポートも行っています。商品の写真を入れ替えたり、メールマガジンを発行したり、という作業までですね。僕たちは「ECサイトの専門家」であって、Web制作会社ではないんです。世の中にはWebサイト制作の会社が数えきれないほどありますが、ECに限ると、急にニッチなカテゴリになります。販売促進までまとめて面倒が見られる会社は、そうそうありません。僕らはECのことしかやりませんから、ECサイトの知識と経験ならどこにも負けません。

ECサイトと通常のWebサイトでは、どんな点が異なるのでしょうか。

ECサイトは、作ること自体ではなく、「作ったあと」が重要なんです。どんなに優れたデザインのサイトを作っても、それで商品が売れる訳ではありません。売るためには、とにかく情報を更新し続けることです。サイトの構造の分かりやすさも重要。デザインを複雑に作ると、そのぶん更新が大変になりますからね。完璧なデザインが10だとしたら、僕は8くらいのデザインでもいいと思っています。使いにくくては意味がありませんから。お客さまに「いいサイトができましたね」と言われても、あんまり嬉しくないんです。作ったWebサイトで商品が売れて初めて、成果となる訳ですから。僕たちが力を入れているのは、「売れるサイト」作りなんです。

御社に来る依頼の内容には、どんなものがありますか?

すでに自分たちでECサイトを運営している会社さんから、「もう一段階売り上げを伸ばすにはどうしたらいいか」「昔は売り上げが良かったのに、最近落ちてきてしまった」といった相談がよくあります。ECサイトはライバルが多いので、同じことを続けていたら、相対的に売り上げは落ちてしまうんです。この業界は、努力してやっと現状維持。めちゃくちゃ頑張ったらちょっと伸びる、って感じでしょうか。社内にECサイトの担当者がいる場合でも、1、2名体制では入ってくる情報に限りがありますからね。同じ担当者が同じやり方で続けていたら、どうしても売り上げは落ちてしまうんです。

確実に売れるやり方は存在するのでしょうか?

いいえ、毎回、トライアンドエラーの繰り返しです。手掛けている会社さんの商品は、ジャンルもターゲットも、それぞれ全て違います。この業界は何が当たるか分かりません。売り方に正解はないんです。どんな方法を試してもうまくいかないことも、やっぱりありますよ。依頼していただいているお客さまに見切りをつけられてしまったらそれまでなので、シビアな世界で。でもありがたいことに、僕たちの会社には、永くお付き合いしてくださっているお客さまが多いんですよね。僕たちは、本当に細かくて手間がかかる更新作業を地道にやっています。他の会社ではやりたがらない面倒な作業もすべて引き受けていますから、なかなか替えがきかないのだと思います。お客さまは大企業ではなく、中小企業が多いですね。今は約40社とお付き合いさせていただいています。売り上げを大きい会社に頼ってしまうと、自分たちのしたいように仕事ができなくなってしまうじゃないですか。それでは、会社員として働いていたころと変わりません。自分たちのスタイルで働けるよう、規模は小さくてもたくさんのお客さまと関わって、バランス良くやっていきたいと考えているんです。

 

会社の商品は、「人」である。

 

スタッフの皆さんに徹底しているルールがあると聞きました。

はい。働いてくれているスタッフには、「自分がどうしたいか」を必ず言ってくれ、と伝えています。在宅で仕事がしたい、休みが欲しい、給料を上げてほしい…全部は無理かもしれませんが、大抵のことは工夫すれば何とかなります。働いていて不満があっても、「こうしたい」と伝えてくれなかったら、何もしてあげられませんから。まずは希望を伝えてもらい、その上で最善の方法を考えたい。自分の言葉で「want」を伝えることが、弊社の一番大事なルールです。

働く環境を大事にしていらっしゃるのですね。

僕はデザイナーではないし、専門的な内容についても分からない点がたくさんあります。スタッフに、全然分かっていないですね、と怒られることもよくあって(笑)。でも、そっちのほうがいいと思っています。僕らは目に見える売り物を持っている会社ではありませんから、会社にいてくれている「人」が商品なんです。彼らが働きがいを持って仕事をしてくれなかったら、会社はたぶんつぶれてしまう。「人」が商品で、会社の「技術」や「経験」が財産です。だからこそ、社員が働きやすい環境作りを大切にしています。

今後の目標や、新しい事業の構想はありますか?

将来的には、作るところから売るところまで、すべて自分たちで手掛けた商品を持ちたいです。商品開発から始めて、パッケージをデザインして、売り方を考えて…僕は食べ物が大好きなので、例えば醤油とか、お酒とか。食品やものづくりをしている小さな会社さんと協力して、自分たちのオリジナル商品を作れたらいいなあ、というのが今の目標です。まだ構想段階ですけど、やるからには人もお金もしっかりかけたいと思っていて。いつかそんなチャレンジもできるよう、まずは今の事業で確実に足場を固めていきたいと考えています。

変化の速い時代に、これからも対応し続けていかなくてはなりませんね。

会社を存続させるため、常に新しいことをしていかなくては、とは思いますが、「売る・買うに関わる仕事」という基本から離れる気はありません。いきなり全然違う分野の事業に手を出すのではなく、今やっていることの、ひとつ隣をやればいいと思うんです。もしかしたらそれは商品開発かもしれないし「ECサイトではない」売り方かもしれない。僕は、「人がものを買う」という行為は、簡単にはなくならないと思っているんです。最近はシェアする考え方も広がってきていますが、少なくとも毎日の食べ物や飲み物は、どこかで必ず買っていますよね。歴史上でこれまでずっと続けられてきた行為ですから。今はたまたまECサイトが売買の手段として使われていますけど、リアルのお店に人が戻るかもしれませんし、SNSが主流になる時代が来るかもしれません。その時は柔軟に方向性を見定め、時代に合わせて事業も変化させていけたらと思っています。僕たちの企業理念は、「欲しいと買いたいを解明する」です。その指針を忘れなければ、時代が変化しても、会社としての方向性を見失うことはありません。人の生活の一部である「売り買い」に、これからもずっと関わっていきたいですね。

 

取材日:2021年6月24日 ライター:土谷 真咲

コンサルロケッツ株式会社

  • 代表者名:大西 伸一郎
  • 設立年月:2017年1月
  • 資本金:400万円
  • 事業内容:ECサイト運営代行、ECコンサルティング、Webサイト制作
  • 所在地:〒651-0084神戸市中央区磯辺通4-1-38ザ・シティ神戸三宮3F
  • TEL:078-200-5930
  • URL:https://c-rocketz.com/

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