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STORY風雲会社伝

コミュニケーションを大事に、知識と経験のシェアリングを。世界的なヒット作を生み出すゲーム開発会社

沖縄
株式会社SummerTimeStudio 代表取締役 弘津 健康 氏
「SummerTimeStudio」という南国沖縄らしい社名のためか、ホテルやマリン(海)などの観光関連の会社と思われそうですが、実はワールドワイドに活躍するゲーム会社です。タブレットやスマートフォン、次世代AR端末等へのゲーム企画・開発・運営を行い、世界的なヒット作品を世に送り出しています。風変わりなのは社名だけではありません。代表作をあからさまに列挙しない自社のWeb サイトやおしゃれなカフェ風のオフィス、独自の社内ルール等、他ではあまり類のない個性的なスタイルが随所に見られます。代表取締役社長の弘津 健康(ひろつ たけやす)さん曰く、「変な会社だと思われたらしめたもの」。コミュニケーションを何よりも大事にする社風の真意を伺いながら、会社設立から短期間で大きな実績を作られた強さの秘密を探ります。

ヒット作を生み出す秘訣は、愚直に、真面目に。

2011年に会社を設立されるまでの経緯を教えてください。

私は東京出身で、就職してからずっと都内で仕事をしていました。いろいろなジャンルの企業で働いた後「物作り」に集中したいと思い、26歳の頃にゲーム制作会社に就職しました。働き始めて8年ほど経った頃、GREE(グリー株式会社)やDeNA(株式会社ディー・エヌ・エー)といった会社から発売され始めたソーシャルゲームが人気となり、PlayStationやwiiなどのいわゆる家庭用ゲームの売上が低迷しました。家庭用ゲームだけを作っていればいい時代ではなくなりつつある一方、携帯電話はガラケーからiPhone等のスマートフォンが主流に。そこで、家庭用ゲーム開発で培った技術をスマホで活かせると思い、スマホ用のゲームを作りたいと考えるようになりました。しかし当時、家庭用ゲームを作っている人たちは、ガラケーでもスマホでも、モバイルゲームは全てレベルが低いと考えていたので、会社でそのアイデアを実現できずにいました。であれば、自分で別会社を立ち上げ、モバイルゲームの可能性を追求した方がいいと考えたのです。

時代の先を読まれて起業されたのですね。

いえ、当初は読めていたかもしれませんが、自分が考えていたよりハードウェアの進化が早く、開発は想像以上に大変でした。しかし古い考え方に縛られることなく、柔軟に時代の変化に対応できているのは、新しい会社だからこそだと思っています。

2011年に東京に会社を設立されましたが、なぜ沖縄に移転したのですか?

実は、会社を作る3、4年前に家族と一緒に沖縄に移住し、しばらく東京に単身赴任していたのですが、ゲーム作りには沖縄の方が適していると感じ、会社を移転しました。

なぜ沖縄の方が適していると考えたのでしょう?

ストレスが少ないことが大きな理由です。ゲーム開発は長期に渡ることが多く、さらに最先端のゲーム開発を行っているので前例がありません。自分たちで失敗、解析を繰り返しながらの開発は非常にストレスフルです。しかし東京は満員電車での通勤など、ゲーム開発以外のストレスが多い。沖縄にはそれがないのでゲームを作る環境としてはベストだと感じています。

そのようなベストな環境の中で生まれた代表作を教えてください。

最近ではファイナルファンタジーXVのモバイル版の制作を行いました。

ファイナルファンタジーといえば大変人気のあるゲームですね。また御社の自社開発タイトルが、2014年に世界累計600万ダウンロードを突破したと伺いました。会社設立から10年未満で、なぜそこまで大きな作品や、ヒットタイトルを作れたのでしょう?

自分でもなぜかわかりませんが、恐らく運だと思っています(笑)。私が特別に営業に強いわけではありませんし、ほとんど接待交際費を使わないので、個人的に取引先に気に入られているわけでもなければ、取引先の下手に出て仕事をもらうということもしません。日々真面目に、愚直に、目の前にあることを丁寧にやっているだけです。その結果、信頼関係を築けて、縁が繋がっていったのだと思っています。

愚直に、真面目に、ということが強みといえそうですね。

そうだと思います。弊社には25、6歳の若い社員が多く、この業界のベテランではありませんし、トップスター選手もいません。ですが皆とても意識が高く、非常に努力して勉強しています。ファイナルファンタジーXVなどのエース級のタイトルに携われるスタッフは、スクウェア・エニックスなどの大きな会社でもごくわずかです。そんなタイトルの開発を全うするには、32、3歳のベテランと同レベルの技術を持つ必要がありますが、足りない技術を補うためにとても努力していると思います。

ゲーム作りには技術よりもコミュニケーションが大事

御社のポリシー、大事にしていることを教えてください。

コミュニケーションや礼儀を大事にしています。「技術は教えてもらえるもの」という前提で入社してくる人がいるのですが、まず挨拶しなかったら誰からも教えてもらえません。目上の人へ敬語を使ったり、年長者は威張らなかったりという、基本的な礼儀の積み重ねが、良いチームを作る礎になると思っています。一本のゲーム制作には、20人、30人のスタッフが携わるので、スタンドプレーでは到底完成までたどり着けません。礼儀を守り、コミュニケーションを大事にしながら取り組むことが大事です。

それぞれが黙々と作業をする、というゲーム作りのイメージが崩れました。

ゲーム業界には「技術が一番」という考え方をする人も多くいて、与えられたタスクをひたすらこなせばいいという風潮は未だにありますが、自分はそれが好きではありません。もちろん、技術力は私たちの仕事の源ですので絶対必要ですが、その技術を他の人に教えたりシェアしたりして、お互い高め合うことがより大事です。自分だけで学んで完結してしまうと視野が狭くなりますので、知識をアウトプットしてこそ、より多くの事を学べると思います。

技術力とともに、コミュニケーション力も鍛えていくことが必要なのですね。

そうだと思います。弊社の人事考課では、技術面は4割で、残り6割はコミュニケーション力や人間性の部分を評価基準にしているほど重要視しています。この社風をしっかり理解してもらえる人でなければ、弊社では働き続けられないと思います。

esportsエリアに、台湾1ヶ月研修。ユニークな社内の施策

esports専用のエリアを社内に設けられていますが、その理由を教えてください。

ゲームで遊ぶことこそ「シェア」が必要だと思ったからです。日本でのゲームの遊び方は、親に隠れてこそこそ一人部屋でやる、というのが主流でしたが(笑)、海外ではネットワークで繋がった各国の人々と一緒に戦うesportsが流行っています。その方が互いの文化をシェアできますし、見聞が広がり、よりゲームを楽しめると感じます。

esportsも、コミュニケーションの一環なのですね。

そうです。他にも、可能な限り社員全員で一緒に動き、積極的にコミュニケーションを取れるような施策を幾つか試みています。例えばランチタイムは、弊社では全員が同じ時間に同じ場所で食事することをルールにしています。ランチタイムはリラックスできるので、仕事以外の話をしやすく、コミュニケーションがよく取れます。他にも、県外への社員旅行や研修旅行などを開催しています。以前は、全員で台湾に1ヶ月間滞在しました。

1ヶ月間とは、かなりの長期ですね。

台湾に弊社の支社がありまして、そこで仕事をしながらですが台湾を楽しみました。本土と違って沖縄は、他県に行くには必ず飛行機が必要になるので、旅行のハードルがとても高いのです。社員には、多くの知識や経験を積んでもらい、ゲーム制作に反映して欲しいと考えていましたので、一種の投資と考え、県外へ行く機会を積極的に作っています。

ゲーム制作には、旅行などの経験も役立つのですか?

もちろんです。現代のゲームはリアリティを求められますので、嘘の表現ではすぐにユーザーに見限られてしまいます。作り手が遊びも含めて多くの経験を積み、そのリアリティをゲームに反映する必要があります。さらにその経験を、スタッフ同士でシェアしておくことも大事です。例えばゲームの中で、あの場所のあの景色を表現したい、という時に、その場所や景色を作り手が共有して入れば感覚的に分かり合えるので、効率的にゲームを作っていけます。

目標は「世界を熱くするコンテンツ」を作り続ける

サマスタ犬のシュタインとアメリア。
2匹とも警察犬訓練学校を卒業し、警備&癒し担当として勤務。
一日2回の散歩が楽しみ。

これからの御社の展望やビジョンを教えてください。

人種や国籍、年齢、性別関係なく、人間として素晴らしいものを作り続けていく、ということです。必ず自分たちの意志、信念を持って作り上げたゲームを提供し続けたいです。

信念とはどのようなものでしょうか?

会社としては売上を伸ばすということは大前提です。しかし目先の売上ばかりを追うと、流行りの作品を模倣したり、新しい表現を恐れ無難にまとめたりと、妥協してしまう気がします。「売上を立てること」と、「作りたいものを追求すること」のバランスが大事ですが、もし自分たちがやりたい要素を1%でも多く作品に反映できれば、そのせいで売上が下がったとしても、やらなかったよりはよっぽど満足できます。他の会社から見たら売上の目処が立ちにくいチャレンジングなことでも、それが本当にやりたいことであれば果敢に挑戦することが、我々の信念だと思っています。

「人種や国籍も関係ないゲーム」ということは、日本だけでなく海外の市場も視野に入れているのでしょうか?

全世界的に評価されるものを作っていきたいです。今でも弊社のゲームのほとんどが、日本よりも海外での評価が先行しています。ダウンロード比率も海外が7割を占めています。世界的なゲームの主流は欧米ですので、当初から日本やアジア圏だけで売れるようなゲーム作りは目指していません。さらに、経験則的に感じるのが、弊社のような小さな会社が作る新しいものでも、日本より海外の方が評価してくれます。ゲーム開発のようなクリエイティブな業界は新しいことを求めているはずなのに、実際に新しいものを作ると「一般的ではない」ということでなかなか受け入れられません。しかし欧米では、先進的であればあるほど、面白がってくれる人が多い印象です。これからも、自分たちの作りたいものを自信を持って海外へ発表していきたいです。

最後に、一緒に働く仲間には、どのような人材を求められますか?

正直な方と一緒に働きたいです。自分の考え方に固執せず、心をオープンにして新しい知識や考え方を素直に吸収できる方です。人は年齢や経験を重ねると、柔軟に周りからの意見を聞けなくなるものです。そんなこだわりやプライドを捨て、他の人の意見を貪欲に取り入れる強さがある人こそ、弊社が求める人材です。

取材日:2018年8月20日 ライター:仲濱 淳

株式会社SummerTimeStudio

  • 代表者名:代表取締役 弘津健康
  • 設立年月:2011年6月
  • 資本金:1億5,100万円(資本準備金含む)
  • 事業内容:タブレット、スマートフォン、次世代ARハード等へのゲーム開発及び運営
  • 所在地:沖縄県宜野湾市普天間2-50-7
  • URL:http://www.summer-time-studio.com
  • お問い合わせ:info@summer-time-studio.com
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