グラフィック2020.09.02

コミュニケーションを深めながら、顧客の情報発信を支援し、地域に貢献

福井
有限会社ハートブレーン 代表取締役
Hideo Ogawa
小川 秀夫

福井県あわら市郊外で25年にわたりWeb制作やグラフィックデザインなどを手掛けている「有限会社ハートブレーン」。代表取締役の小川秀夫(おがわ ひでお)さんは、学生時代に身に付けたデザイン力と会社員時代の営業経験を生かし、企業の販売促進をサポートしています。さらに近年は、福井県の伝統工芸品「越前和紙」を使った額縁「和紙ック-WA CHIC-」(以下、和紙ック)を開発し、展示や販売に力を注いでいます。

顧客をはじめ、人とのコミュニケーションを重視してこられた小川さんの経験と、事業を継続するためのアドバイスをお聞きしました。

15年の会社員生活を経て創業。営業経験が大きな力に

「ハートブレーン」を創業されるまでのご経歴を教えてください。

県外の大学でグラフィックデザインと木版画を学び、版画家を目指していたんですが、親の反対もあり、カーテンやラグなどを扱う大阪のインテリアファブリックの会社に就職しました。しかし約1年でその会社が倒産。福井に戻り、その後7回くらい転職を重ねることになりました。

それらの会社では主にどんな仕事をされたのでしょう。

ほとんど営業ですね。デザインの仕事はゼロで、営業を15年。最後の会社を辞めたときは、デザインに関する自信は全くない状態でした。

そのような状況で、事業を始めようと思われたのはなぜですか。

実は、会社を辞める決心をしたのは、会社という組織の嫌な部分を痛感し体調も崩していたからで、次に何をするかは決めていませんでした。退社後、改めてデザインの勉強をしていた自分に立ち返り、友人に相談してグラフィックデザインの事業を始めることにしたのです。パワーマックの使い方を必死で覚え、1995年、36歳で「ハートブレーン」を立ち上げました。仕事を得るための営業に回りながら、このための15年だったと思いました。

福井市ではなく地元あわら市で創業されたのはなぜですか。

既にその頃から、パソコンがあればどこでも仕事ができると分かっていましたので、場所は選びませんでした。

それに、お客さまをはじめ関わる全ての方々が発展できる経営を目指し、志を持った企業と地元に貢献したいと思っています。そこがぶれないように、毎朝、「ハートブレーンの思い」を唱和して、時代が変化しても変わらない当社のミッションを大切にしているんです。

地域情報誌発行で知名度アップ! 新たな出会いが今につながる

事業内容は創業時と現在では変化しておられますね。

ええ、最初は会社案内やパンフレットなど印刷物のデザインが中心でしたが、時代の流れとともにWebサイトや動画の制作、Webサイト運用などが増えてきました。Web活用のセミナーも年に1~2回開き、SEO対策などのアドバイスをしています。

新型コロナウイルスの影響が広がり、少しでもお客さまのお役に立ちたいと「テレビ電話活用セミナー」を開催しました。偶然このことで、ZOOMでのセミナー運用の仕事依頼にもつながりました。

お客さまは福井県内の企業が中心ですか。

そうですね。当初から大企業ではなく、地元で汗を流して頑張っておられる中小企業を支援したいと考えています。 デザインやブランディングにおいては、現状でも高望みでもなく、お客さまの会社が少し背伸びしたイメージのものを作るようにしています。

そのためにはお客さまの話に耳を傾け、その思いを把握することが必要ですから、多くの経営者と、家具購入や住宅の増改築を考える消費者の要望を聞き、アドバイスや提案をしてきた営業経験がここにも役立っていますね。

事業は順調に広がりましたか。

いいえ、どこの馬の骨かわからんという目で見られる会社がたくさんあって大変でした。でも、会社員時代のお客さまを訪ねたり、最初は相手にしてもらえなかった会社が5年10年経って初めて話を聞いてくれるようになったりして、徐々に仕事が増えていきました。

知名度を上げるきっかけになったのは、法人化した2002年に始めたフリーの地域情報誌「さかいシティネット」の発行です。グルメやギフト、住まいに関することなどを発信し、翌年にはポータルサイトも開設しました。しかし、情報誌は制作するための負担が大きく結局打ち切ることになりました。売り上げの多くを占めていたので大きな決断でした。

他にも印象に残っているお仕事がありますか。

初めてコンペで獲得した金津町(かなづちょう)の町勢要覧の制作が記憶に残っています。合併であわら市になる前の2002年に発刊した要覧で、「子ども」をテーマに地元出身のカメラマンとコピーライターと組んで、約1年かけて作り上げました。

コンペで認められたうれしさもあって一生懸命取り組んだことが楽しい思い出になっています。そして、この仕事で吉田ヨーゾーさん(1955~2018)という障害者の画家に出会ったことが、私のライフワークにつながっています。

吉田さんから大きな影響を受けたということですね。

ヨーゾーさんは小児まひが原因で身体が不自由になられた方でした。高校生のときに絵を描き始め、2018年に他界されましたが、アトリエに1000点以上の絵やオブジェが残されています。

町勢要覧制作のために障害者福祉施設を回るなかで初めてお会いし、遊びの延長のように軽々と楽しそうに絵を描く姿や、時には猫と遊んだり詩を書いたりして過ごす緩やかな生き方にカルチャーショックを受けました。

昨年はヨーゾーさんの作品を紹介するホームページを作り、現在は図録の制作を考えています。ヨーゾーさんの絵は格好よさや受けを狙ったところが全くなく、普段から人に受けることを考えている私たちにとってはとても新鮮です。

伝統工芸を生かした新商品「和紙ック」を開発

近年新たなジャンルとして和紙の額縁「和紙ック」を製作されていますね。

ええ、1500年の歴史がある越前和紙を使った額縁を作りました。後ろからLEDの光を当てるようになっており、和紙と明かりが融合した「和紙アート」の世界が広がります。好きな名画を入れたり、写真を入れたりいろいろな楽しみ方ができますよ。

何かきっかけがあったのですか。

版画に使う和紙を買うために越前和紙の産地である越前市の今立(いまだて)へ出かけるたびに、もっと面白い和紙製品ができないかと思っていました。そこで、プロダクトデザインに挑戦しようと決め、額縁をモチーフに和紙の魅力を生かした世界に通用する製品ができないだろうかと試行錯誤を始めました。

そしてある日、遊び半分にLEDの光を後ろから当ててみたら驚くほど美しい! これはすごいと思って本格的製作に乗り出したのです。

越前和紙の伝統工芸士さん、アクリルやLEDの専門業者さんと協力し、県から助成金をいただいて完成させました。伝統工芸士が漉(す)いた、世界に一つだけの和紙のフレームです。2015年には特許を取得し、2017年には近畿経済産業局クールジャパン商品に認定されています。

PRはどのようにされていますか。

書や写真、切り絵など、作家さんの作品を「和紙ック」に入れ、ギャラリーなどで展示してきました。場所は東京が中心ですが、フランスでも開催しています。クラウドファンディングを活用した県内での「和紙ック展」も計画中で、今後は、「和紙ックアート」という一つのジャンルを確立させたいと考えています。

事業継続に不可欠なのはコミュニケーションを図る努力

制作業務とは別に、中小企業の未来を支援する「ミラサポ専門家」という肩書もお持ちですね。

福井県産業支援センターに中小企業や小規模事業者のための経営相談所があり、各市町の商工会議所や商工会などでも相談窓口を開いています。これらからの連絡を受け、販促用のチラシやホームページを作りたいという経営者の方にアドバイスしています。

またこれとは別に、銀行の関連会社が経営者からホームページを作りたいという相談を受けると、当社を紹介してくださる流れもできました。このような相談を親身になって受けることで良い関係が生まれ、事業の面でもプラスになっています。

今後の展望をお聞かせください。

全く異業種のことはできませんが、時代に合わせた仕事にシフトできる会社でありたいですね。会社を大きくしようという気持ちは持っていませんが、できれば後継者に引き継いでいけたら理想的だと思っています。今の時代、会社が存続して行くだけで素晴らしいことです。最近還暦を迎えたからそう思うのかもしれませんが(笑)。

最後に、起業を考えている若い方へメッセージをお願いします。

人とのコミュニケーションを大事にしてください。技術系の方には営業が苦手という方が多いですが、うまく話せなくても一生懸命コミュニケーションを取ろうとする姿勢が大切です。その姿勢がその人の魅力を生み、お客さまから信頼されるようになるものです。

人としての魅力というのは、苦労することで身についてくるものだと思います。苦労して、反省して、成長する。「知らないからできる勇気。あとで知る人の人情」と言ってるんですけど、事業を継続していく人はこの2つをどこかで会得するのではないかと思います。技術力や商品力も必要ですが、コミュニケーション力を高める努力が何より大事だと感じています。

取材日:2020年8月18日 ライター:井上 靖恵

有限会社ハートブレーン

  • 代表者名:代表取締役 小川 秀夫
  • 設立年月:1995年創業、2002年法人化
  • 資本金:300万円
  • 事業内容:Webサイトの制作・運用・更新、印刷物の企画・デザイン、販促コンサルタント、プロダクトデザイン
  • 所在地:〒919-0613 福井県あわら市古屋石塚11-16
  • URL:https://heartbrain.net/
  • お問い合わせ先:0776-73-8388

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