グラフィック2022.07.06

印刷の力で、プラスアルファーの提案を。新しい価値の先にある可能性と幸せを求めて

金沢
株式会社ユーアート 代表取締役
Kirihata Makoto
桐畑 誠

現在創業37年目となる、印刷会社「株式会社ユーアート」。紙や印刷の伝える力を最大限に発揮する、価値ある新しいモノづくりを常に追求しながら、幅広いサービスを提供しています。
2022年3月、創業者の父と前代表の母からの想いを受け継ぎ、新たに代表取締役に就任した桐畑誠(きりはた まこと)さん。小さな頃から働く両親の背中を見て感じてきたことや教わったこと、経営者としてトップに立つ覚悟、そして印刷の未来を見据えた“価値創り”への思いを伺いました。

製版会社時代の技術を活かし、お客さまのニーズにトータルに応えるモノづくり企業

会社設立の経緯と歴史をお聞かせください。

創業者は私の父・桐畑春雄です。1985年に、前身となる「ユーアート製版」を設立しました。1991年にはデザイン・制作部門を立ち上げ、県内でも早い段階でMac(※)を導入し、制作・製版・印刷までをトータルサポートする体制を作りました。

社名にはどのような意味が込められていますか?

エンドユーザーとの直接の仕事を増やす方針を打ち出すため、2014年に社名から「製版」を省いて、現在の「株式会社ユーアート」に社名変更をしました。「YOU」と「ART」をつなげた社名は、『あなたとつくる』『あなたと描く』という意味で、お客さまの望んでいるものを形にする、お客さまのお困りごとを一緒に解決していきたいという想いが込められています。

主な事業内容を教えてください。

印刷物の企画・デザインから印刷・加工はもちろん、取材や撮影のサポートも行っています。カタログやポスター、広報誌などの一般商業印刷物が主力製品ですが、2022年より箱やケースなどのパッケージ印刷も自社工場で生産できるようになりました。同業他社向けの印刷サービスも承っています。

苦しい状況が続く今だからこそ、新リーダーに

2022年3月に代表取締役に就任されました。このタイミングでトップに立つことを決めたのはなぜですか?

いずれ私も代表になることは意識していましたが、一番大きな責任を負うことに迷いや怖さもありました。ですが、8年前に受講したある後継者育成塾で色々な話を聞き、やはり私がやるべきだと気持ちが固まりました。何かひとつ大きな結果を残し、業績を好転させたらと、機をうかがっていましたが、新型コロナウイルス感染症拡大の影響が予想以上に長く大きかった。待っている時間がもったいないですし、こんな状況だからこそ、自分たちの力で仕事を取り戻すために、今こそリーダーシップを発揮しなければと、決断したんです。

新代表として、どのようなことに取り組みたいですか?

まずは業績回復です。そのために突拍子もないことに取り組むのではなく、現在の主力事業のブラッシュアップに取り組んでいます。「初心を忘れず、本業を忘れず」、今の設備とアイデアで本業を強化しつつ、派生してチャレンジできることを模索しています。
私自身は人と接することや営業の仕事が好きなので、会社の顔として外に出て、やりがいのある仕事を獲得し、新たなチャンスを見つけたいという思いもあります。

御社の一番の強みは何ですか?

パッと見て分かりにくい部分に、弊社の強みがあります。例えば文字や写真がキレイにレイアウトされた本や違和感のない色に仕上がった印刷物。当たり前と言われれば当たり前ですが、それを確実に表現するのは難易度が高く、経験や技術が求められます。写真製版業から蓄積してきたノウハウを生かした、「当たり前を形にできる」精度の高いDTPと、それを確実に表現にできる印刷力が一番の強みです。

色の表現にこだわり、印刷の先進技術も導入しているそうですね。

4色印刷でありながら、従来の色域を大幅に超える印刷手法「広演色印刷Kaleido®(カレイド)」を、石川県内では弊社が最初に導入しました。ユーアートにしかできないことを、と考えた取り組みの一つです。高い製版技術と印刷技術により、従来では実現できなかった鮮やかな色と滑らかな階調の再現が可能になりました。

お客様がイメージする色に仕上げるために、どのような工夫をされていますか?

いかにナチュラルな色を出すか、求めている色を表現できるか、そこに対するこだわりはとても強いです。まずは「ジャパンカラー」という標準規格をしっかりクリアする。そして、モニターの色、プリンターの色、印刷機の色をきっちりと合わせる「カラーマッチング」を必ず行うようにしています。
おかげさまで、写真集や画集などの美術印刷では、ご紹介やご指名をいただくことも数多くあります。それは弊社がキレイな色を出せると認めていただいたからだと捉え、自信につなげています。実際にお客さまが商品を手に取った時のリアクションや、「いいものになった」とか、「発注してよかった」という声を聞くと、やはりうれしいですね。

自社メディア「住まいの提案、石川。」も、美しい写真が印象的です。

自社の商品が広く知られる機会が欲しい、と常々思っていましたし、いつか自社メディアを持ちたいという強い願いもありました。ご縁をいただき、2020年7月から住宅情報誌「住まいの提案石川。」の出版事業を行っています。
デザイン性の高いこだわりの家を手がける建築会社や工務店を紹介するメディアです。取材から出版まで、全て自分たちでやるのは苦労もありますが、事業としての自由度も高く、自分たちで企画をすることに大きなやりがいを感じます。お客さまも少しずつ増え手応えを感じていますし、まだまだ伸びしろがある。これからも魅力的な情報を発信し続けていきます。

創業からの父と母の想いを引き継ぎ、「愛と幸せ」のある「価値創り」を

今後の展望や将来のビジョンをお聞かせください。

代表交代に合わせて『愛と幸せと価値創り』という企業理念を策定しました。弊社の存在意義をしっかり受け止めながら、成長し企業価値を高めていきたい。価値のある物、より必要とされる物、市場にない物、簡単に真似できない物を作るために創造が必要ですので、「作り」や「造り」ではなく「創り」という文字を選びました。クライアントや地域の方々など、より多くの方に必要とされ、大切だと思われる企業を目指していきたいです。

具体的にはどのような事業展開を考えていますか?

ペーパーレス化やネット化に押され気味な業界だからこそ、時代に合った媒体を追求していきたいと思っています。ただ単に印刷物をつくるのではなく、そこに価値を一つでも二つでも添えて商品にしたい。
その具体的な取り組みとして、2020年に「森林認証」を取得しました。環境に配慮した印刷物の制作で、時代に合わせた提案をしています。
またペーパーレス化やネット化を脅威と位置づけるのではなく、共存共栄や相乗効果をテーマに、それぞれの意義、それぞれのメリットを考え、クロスメディアとして新たな商品開発やチャレンジのきっかけにしたいです。

前代表から受け継いだことで、大事にしていることはありますか?

「人との縁を大切にする」こと。印刷会社は数多くあるからこそ、お客さまや協力会社、従業員などの人材が重要だと、母から教わりました。
お客さまから愛される会社にしたい。働きがいのある社風にしたい。若手が育つ会社にしたい。そのような前代表からの想いを受け継ぎ、皆で会社を作り上げていきたいと思っています。従業員それぞれの個性豊かな力が発揮できるよう、代表取締役として尽力していきます。

最後に、クリエイターにメッセージやアドバイスをお願いします。

私たちはクリエイティブな仕事の表側だけではなく、データの作り方や設定といった裏側を見る機会もあります。魅力的で素晴らしいデザインの裏側がきちっと整えられ、作り込んであるのを見ると、「これは一流クリエイターの仕事だ」と感じます。
感性や個性がなければクリエイティブなモノづくりはできませんが、見えにくい裏側にも目を向けてこだわっていけば、デザインした物が形になるまでをしっかりイメージできる、ワンステップ上の仕事につながると思います。

取材日:2022年5月13日 ライター:酒井 恭子

株式会社ユーアート

  • 代表者名:桐畑 誠
  • 設立年月:1985年8月1日(2014年4月 現社名へ商号変更)
  • 資本金:9,000万円
  • 事業内容:グラフィックデザイン・DTP全般、CTP刷版出力、一般商業印刷、厚物印刷、オンデマンド印刷、製本加工、住宅情報誌出版
  • 所在地:〒920-0052 石川県金沢市薬師堂町イ58番地
  • URL:https://www.youart.co.jp/
  • お問い合わせ先:076-263-8855

※Macは、米国およびその他の国で登録されたApple Inc.の商標です。

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