デジタルネイティブ世代が作る、SNSでユーザーとつながるレシピ動画メディア DELISH KITCHEN

Vol.140
DELISH KITCHEN 編集長 菅原千遥 氏
多くのコンテンツが乱立する料理コンテンツ。その中でも、動画配信に特化したDELISH KITCHEN(デリッシュキッチン)は、2015年9月のスタートからわずか1年半で、SNSのフォロワー数の合計が240万人以上と、破竹の勢いで快進撃を見せています。そこで今回は、DELISH KITCHENを運営する株式会社エブリーに直撃! DELISH KITCHENの編集⻑を務める菅原千遥(すがわら ちはる)さんに、コンテンツのコンセプトやクリエイティブへのこだわり、今後の展望について伺いました。

SNSの体験を損なわない1分動画を配信。「誰が作っても失敗しないレシピで、一番おいしい」を目指す。

DELISH KITCHENは、誰をターゲットに、どんなコンセプトで作られているのですか?

大きくふたつターゲットをイメージしていて、ひとつは料理に苦手意識を持っている人です。料理をしたことはあるが、失敗したり、料理本のように仕上がらなかったり、思ったよりもおいしくなかったりして、「自分は料理ができない」と感じている人。

もうひとつは、ふだんから料理をしている主婦など、毎日献立を考えて料理をつくるのは大変、面倒だと思っている人。そんな、料理に対してネガティブなイメージを持っている人でも、誰かに料理を作って喜んでもらえたときの嬉しさや楽しさを知ってほしいと思って、コンテンツを作っています。だから、大切にしているのは「失敗しない」こと。「誰が作っても失敗しないレシピの中で、一番おいしい」を目指しています。

料理コンテンツには、写真やテキストが主のレシピサイトが数多くありますが、その中で「動画」という表現を選んだ理由は?

料理初心者にとって、テキストと写真では、調理方法がイメージしにくいことがあります。例えば、お菓子作りで「さっくり混ぜる」という表現がよく出てきますが、初めて作る人にとってはどの程度が「さっくり」なのかわからない。ですが、実際に混ぜている手元を撮影して動画で紹介することで、わかりやすく伝えることができます。 また、主婦など毎日料理をしなければならない方々の悩みは献立づくりで、どうしても得意だったり知っている料理ばかりを作ってしまい、マンネリ化しがちです。新たな献立を考えるときには、材料を入力して「検索」するのがこれまでの主流ですが、それは違うのではないか、と考えていました。マンネリ化の悩みを解消するには、レパートリーにない料理を「提案」する力が必要で、提案のプレゼンテーション力を考えたときにも、やはり動画が最適だと思います。

DELISH KITCHENの動画は1分程度の短いものになっていますね。

主にSNSで配信しているので、1分程度が限界だと思っています。実は最初は、10分くらいの動画を作って、YouTubeで配信していたんです。ですが、YouTubeではなかなかシェアされないので、広がらないんですね。もっと多くの人に知ってほしかったので、配信先をFacebookやInstagramなどのSNSに変えました。SNSは移動中や家事の合間などのスキマ時間に見る人が多いので、何となく見に来ている各SNSユーザーの体験を損なわず目を留めてもらうために、キャッチーで短い動画に変えていきました。

技術がなくても、おいしく、かわいく見える!上から撮影した正方形動画を選択。

初めてFacebookでDELISH KITCHENの動画を見たとき、正方形の動画がとても新鮮でした。

SNSで動画をご覧いただくことを考えると、スマートフォンで見る人がほとんどなので、画面の専有面積を大きくしたくて、正方形の動画を考えました。

また、Instagramでは正方形の画像が配信されますよね。Instagramで見る料理の画像は他のSNSに比べると、とてもおいしそうに見える気がするのですが、正方形は、撮影のテクニックがそこまで上手くなくても、かわいくおいしそうに撮れる構図みたいです。

映像制作の際に、クリエイティブとして気をつけていることは?

料理を作っているときの目線を意識して、上から撮影しています。また、家庭で作ってもらうことが前提なので、食材はごく一般的なスーパーマーケットで売られているものを選び、調理器具も普通の家庭にあるものしか使用しません。料理の見栄えが良いことはもちろん大切ですが、シズル感やスタイリッシュさを追求しすぎると、実際に作ってくれるユーザーさんが同じように仕上げられずに失敗だと感じてしまいます。ですから、映像の美しさや見せ方は意識しながらも、「誰でも簡単においしく作れる」というコンセプトからははずれないようにしています。 撮影技術として気をつけているのは、見やすさを考えて、影を作らないことです。最初は普通のマンションの一室で撮影していたのですが、マンションの小さなキッチンのコンロだと、照明を工夫してもどこかに影ができてしまうんです。苦肉の策として、IHの簡易型の卓上コンロをテーブルに置いて撮影したところ、それが見やすくて好評で、他メディアでも同じように撮影している動画を見かけるようになりました。密かに、この手法は「発明」だと思っています(笑)。

企画から動画配信まで最短1日!食材のトレンドに合わせ、社内の調理プロフェッショナルがレシピ開発。

DELISH KITCHENの動画を見るようになったころ、「なんでいつも卓上コンロで料理を作っているんだろう?」と疑問だったのですが、その疑問がいま、解消されました(笑)。DELISH KITCHENは作りやすいレシピも評判ですが、誰がどのように開発しているのですか?

すべて社内スタッフが考えています。管理栄養士や調理士の資格を持つプロの調理スタッフが社内に所属していて、実際にスーパーに足を運んで、旬の食材や価格のトレンドなどをチェックして、レシピづくりの参考にしています。白菜は冬野菜の定番ですけど、この冬は白菜が高い時期もあったので、少し控えようかな、など、暮らしに根ざした地に足の着いたレシピを考えています。企画から動画配信まで最短1日でできるので、食材の実情に合わせたレシピをフットワーク軽く配信できるのも強みですね。

これまでの配信型料理コンテンツは、有名料理家やシェフ、タレントが手ほどきしてくれるものが多いですよね。

ネームバリューのある方が提供する情報は魅力的ですが、今は一般の方でもプロに見劣りしない発信力と人気を持つ方がどんどん増えているので、必ずしもネームバリューのある方にこだわらなくても良いと思っています。

DELISH KITCHENの調理スタッフは、全員が撮影・編集までできるスキルを持つようにしています。撮影・編集を経験することで、手の動かし方や角度の見せ方で気をつけなければならないことが実感を持ってわかるようになりますし、何よりもひとつのレシピ動画に対する責任感や愛着度が変わってきます!そのモチベーションが、レシピの魅力にもなっているのではないでしょうか。

2016年末にアプリをリリース!全員がハッピーになれるメディアをつくっていきたい。

動画配信から1年3ヶ月後の2016年の12月に、ついにアプリがリリースされました。普通はアプリやWebサイトなどプラットフォームを整えてから動画の配信を始めると思うのですが。

今、人々は毎日SNSに多くの時間を費やしています。そこで、DELISH KITCHENをたくさんの方にご覧いただくために、まずは「SNSをいつも通り見ていたらなんとなく出てきて、つい見てしまう」というレシピ動画からのスタートで良いと思いました。アプリに関しては、そんなふうにSNSユーザーにDELISH KITCHENの名前やレシピ動画を認識していただいた後、「好きなレシピを保存したい」「また見たい」という要望をいただくようになってから作りたいと考えていました。

ビジネスモデルとしては、広告モデルですよね。

はい、広告主様とのタイアップコンテンツを制作しています。おかげさまで、たくさんのお問い合わせをいただいています。

これだけアクセス数があれば、当然ですよね。ここまでユーザーに支持されるコンテンツになった理由は?

徹底したユーザー目線で制作したことと、スマホやSNSに特化して制作したことだと思います。SNSのコメント欄に寄せられるユーザー様の声をコンテンツに反映させたり、Instagramのハッシュタグ「#delishkitchentv」で、実際に作った画像やアレンジ画像を投稿してくれたり、SNS上でコミュニケーションができていると感じています。今後もユーザー様とのつながりを大切にしていきたいですね。

今後の展望について教えてください。

アプリを出したことにより長い時間の動画も見てもらえるのではないか、と考えています。DELISH KITCHENらしい料理番組を作ってみたいですね。

また、ユーザー様を集めてオフラインのイベントを開催したことがあり、そのときはご協力してくださったクライアント企業様にも、参加していただいたユーザー様にも大変喜んでいただけたので、またオフラインイベントも検討したいと思っています。

SNS配信の良いところであるユーザー様とのつながりを大切にしながら、広告主様にとっても、私たち自身にとってもハッピーなメディアとして成長していきたいと思っています。

取材日: 2017年3月3日 ライター: 植松織江

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だれでもおいしく簡単に作れる、レシピを「毎日」動画で紹介

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