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COLUMNコラム・ザ・ちゃんこ

写真を撮る

番長プロデューサーの世直しコラム Vol.144
番長プロデューサーの世直しコラム 櫻木 光

恥ずかしくてあまりおおっぴらに言ってはいませんが、趣味の中に「写真を撮る」があります。
撮ったものをイエーイと人に見せられるようなレベルでもありませんからあまり言いません。

プロダクションマネージャーの時に、撮影のことがよくわかってなかったので
撮影機材のこと、レンズのサイズや明るさや照明機材のことを知るために
マニュアルのスチルカメラを買って勉強をしました。それが始まり。
このコンテの内容にはこの機材はいるとかいらないとか、わかっていないと
撮影部がまともに話をしてくれない気がしたからです。

CMのムービーが本業なのですがムービーカメラを買うわけにはいかなかったので
途中で投げ出さないように、ちょっとお高いスチルカメラをローンで買っていじり回していました。
レンズのミリ数のこと、画角、構図、絞り、ボケ、シャッタースピード、光のこと
撮影の度に撮影部や照明部の方に待ち時間などにクドクド質問して随分詳しくなりました。

ロケ地を探すときなどにも活用して、ロケハンの写真を魅力的に撮ってくる。
みたいなことに燃えてたりしました。
お陰で撮影部や照明部とずいぶん仲良くなれました。

そのカメラはフィルムカメラだったのですが、今考えると信じられないくらい
写真を撮ることが難しかったのです。そもそもフィルム1本24枚くらいしか写真が
撮れないのでむやみやたらにはシャッターが切れません。
モニターもないので撮ってすぐ写真の確認ができません。
現像してみると、真っ黒だったりフォーカスが甘かったり、手ブレしてたり。
がっかりすることも多かったような気がします。

そんなカメラも、急激なデジタルカメラの普及とともに出番がなくなっていきました。
フィルムもなかなか手に入らなくなって、現像してくれるところも少なくなりました。
プロデューサーになってロケハンすることも少なくなりました。
デジタルのカメラなどもちょこちょこ買って持ってはいましたが、スマホの
カメラの性能が上がっていったのでそれで十分な感じになっていました。

生活環境的には、仕事柄カメラマンを職業にしている人がまわりに沢山いたり、家のすぐ近くに
東京都写真美術館があったり、代官山に大きなTUTAYAができたりして写真に触れる機会に恵まれています。時間があるときはカメラマンの方の写真展も積極的に観に行くことにしています。

写真はカメラがあるから撮れる、ってだけではありません。
自分が何を撮りたいのかわからないままただシャッターを切っていても満足いくわけもなく。
著名なカメラマンの写真を見て、どうやったらこれが?と、その技術に驚いたりして。

「写真ってどうやって上手くなるんすかねえ?」とカメラマンに会うときは聞き続けていますが
著名なカメラマンの方たちの答えは哲学者みたいな、でもシンプルな答えでこれまた面白いのです。
「撮りたくて我慢できないものを見つけた時に撮るんだよ。
 だから、いつもカメラを持ち歩きなさい」
みなさん言い方は違えど、そういうところにたどり着きます。

撮りたくて我慢できないもの、って何だろう?と考えてみると、自分の周りにあるもの
に好奇心を持って接していないと見つかりませんね。ただボーッと歩いてないで注意深く
いろんなものを観察しながら暮らす。そうやって撮っているうちに自分の撮りたいものが
わかってくるんじゃないかと思いました。色んなことに注意を払いながら暮らす。

撮りたいと思うことも一瞬の出来事だったりして
シャッターチャンスっていうくらいチャンスはすぐなくなったりします。スポーツか狩に近い。
シュートっていうんだから獲物を見つけたら鉄砲撃ってるのに近いな、とか。反射神経。
当たり前ですが、写真は深いです。

そうやって写真に接することが多い日を過ごしていたら、また、自分で写真を撮ってみたくなってきました。

で、夏のボーナスで、また少しお高いカメラを入手して、またちょっとずつ写真を撮り始め
ました。最新のデジタルカメラはメチャメチャ便利です。メモリーの大きいカードを
入れておけばほぼ無限にシャッターが切れるような気がします。シャッターをケチらなくていい
加えて何より撮れてるか撮れてないかがその場でわかるのがいいですね。
失敗してたらその場で消せばいいし。とにかく綺麗に撮れるように作ってあります。

スマホのカメラや、撮った写真の加工ソフトも相当なレベルにあるんですけどね。
インスタなどのSNSを見ててもいろんな人がハッとするような写真を気楽に上げている。 みんなカメラマンの時代でもあります。

それでも自分の撮った写真にぜんぜん満足できません。何を撮るか?ってのはどう生きるか?に近い。大げさですが。何やってもいいんだけどその中からテーマを決める作業。自分の大好きなものは何か?を自分に問うているからでしょう。ロケハンの写真をきれいに撮って自分の仕事の説得力を増す、という写真の撮り方の方が断然簡単なのです。

だからまだ探しています。人の真似したり、無理やりハワイに行ったり。ずっと探しているかもしれません。

面白い写真を撮る。これ、どうやったらできるんだろう?
たまにメールのやり取りをする知り合いの外国人のアートディレクターと話してました。

「サクラギは最近は何に興味がある?何して暮らしてるの?」

「写真撮ったりしてますけどね」

「それはいいね。何を撮ってるの?」

「まだこれといったテーマの中心になるものが見つからないんですよね。
面白い写真ってどうやったら撮れるんでしょう?」

「サクラギ、その質問には誰かが答えていたけど、なるほどと思ったことを言うね。
 興味深い写真はね、興味深い人間にしか撮れないと思う。
 機材のことやテクニックのことやスタンバイのことをとやかくいう人もいるけど
 まるでお門違いなんだよ。面白い写真は面白い人間が撮るのさ。
 実は何をやってもそうなんだけど、お前が表現することにはお前が映るんだよ。
 今もお前が面白い人間でいられてるかな?ってことさ。
 テーマなんてもう君の中にはあると思うんだ。テーマが無いといけないわけでも無いしね。
 今度撮った写真見せてね。面白かったら嬉しいな」

という会話になりました。またこの人もすごいこと言うなあ。
興味深い写真は興味深い人間が撮るんだ。
面白い人間で居られるだろうか?自分の納得する写真が撮れないと言うことは
俺は面白いんだと思ってやってるけど、実は俺、面白く無いんじゃないか?
そう言うことまで考えてしまいます。

とにかく、趣味なんだからもう少し気楽に考えればいいんだけど
なんとなく熱中しちゃうものですから。面白いんです。深いですよ。

Profile of 櫻木光 (CMプロデューサー)

プロデューサーと言ってもいろんなタイプがいると思いますが、矢面に立つのは当たり前と仕事をしていたら、ついたあだ名が「番長」でした。


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