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COLUMNコラム・ザ・ちゃんこ

蛙の歌が聞こえてこない

とりとめないわ 第22話
とりとめないわ 門田陽

渋谷でエドワード・ヤン監督の「牯嶺街(クーリンチェ)少年殺人事件」を観てどんよりした気分で文化村前の細い道を歩いているとパトカーが目に入りました(※写真)。と、見るといかにも人相の悪い20代後半くらいの上下甚平姿の男が職務質問を受けています。僕は歩くスピードを緩めて様子を伺うと、警察官二人が男のポケットの中身を検(あらた)め「これは何?」と尋ねています。すると男が「お守りだよ、蛙の」「蛙?」「俺が無事に帰るようにって渡されてんだよ、子どもに」と答えこれには警察官も気まずい感じですぐにお守りを返していました。蛙のお守りの写真、撮りたかったけどムリでした。人って、見た目なんだよなぁ。僕が警官でも間違いなく職質したはずの男でした。

さて、雨の季節ですが都会の梅雨は蛙の声が聞こえてきません。夏には蝉がうるさいですし、秋には虫の声が夜の街にも響きます。 東京は意外と緑が多いのです。公園の数も多い気がします。木や草むらは沢山あるから蝉や虫は住みやすい。でも、田んぼは見かけませんから蛙の声は聞こえてこないのだと思います。最近、梅雨が梅雨らしくないのは異常気象とかよりも蛙がいないせいかもしれません。

ピョコンペタンピッタンコの、「ど根性ガエル」のピョン吉はもちろん、ケロヨン、けろっこデメタン、けろけろけろっぴ、ケロロ軍曹、と時代時代でカエルキャラは大人気です。おそらくガマの油の大昔から日本人と蛙は相性がいいのではないでしょうか。しかし子どもの頃の蛙との強烈な思い出はそんなアニメ等とは全く別のものです。1970年代、小学校の理科の授業(僕は確か6年生でした)で行った蛙の解剖は今でもハサミとピンセットの感触が手に残っています。あの頃、蛙は誰が用意したのでしょうか。自分で捕まえた記憶はないし先生も違うだろうから、それ用の業者さんがいたのかもしれません。あの授業のインパクトは今はもうないと思います。昭和あるあるのひとつですね。

蛙といえば、もうひとつ思い出すことがあります。今から25年前の夏。学生時代の友人が青森で中学の教師をしていたのですが、結婚して子どもができたというので、お祝いを兼ねて遊びにいきました。青森県三戸郡田子町。なかなか見事な田舎でした。調べたところ、2017年現在も人口5,700人ほどの小さな町。訪れたその日は町のコミュニティ広場でお祭りが行われていました。盆踊りを中心とした夏祭りでしたが、そのメインイベントは当時隆盛だったミス・コンテストでした。鮮明に覚えています。そのタイトル。ミスにんにくコンテスト。青森県はにんにくの生産量日本一ですが、中でも田子町はブランドにんにくの有名な産地なのです。そこで、ミスにんにくコンテストなわけですが、どうなんでしょう、選ばれて何となく複雑な表情のミスにんにく。このお祭りはまだ続いていますが、ミスコンはなくなったそうです。

で、このことの一体どこが蛙の思い出なのかを言い忘れていました。ミスにんにくコンテストの審査員が青空球児・好児だったのです。そうです。あのゲロゲーロの球児好児です。すでにベテランの域に入っていた二人ですが、ステージ所狭しと油の乗ったゲロゲーロを披露していました。球児好児はいま、現役最古参の漫才師(もう二人とも70オーバー)ですが変わらずゲロゲーロを見せてくれます。継続は力なりの生きたお手本だと思います。そしてその日泊まった小さな旅館で聞いた本物の蛙の大きな鳴き声。布団の中で笑い転げて眠れなかった夜でした。

ところで、エドワード・ヤン監督の「牯嶺街少年殺人事件」の上映時間3時間56分はさすがに長いけどオススメ!という話はまたの機会に。

Profile of 門田 陽(かどた あきら)

門田陽

電通第5CRプランニング局
クリエーティヴ・ディレクター/コピーライター
1963年福岡市生まれ。
福岡大学人文学部卒業後、(株)西鉄エージェンシー、(株)仲畑広告制作所、(株)電通九州を経て現在に至る。
TCC新人賞、TCC審査委委員長賞、FCC最高賞、ACC金賞、広告電通賞他多数受賞。2015年より福岡大学広報戦略アドバイザーも務める。
趣味は、落語鑑賞と相撲観戦。チャームポイントは、くっきりとしたほうれい線。

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