ASEANのクリエイティブ産業事情~ベトナム~

Vol.6
Fellows Creative Staff Singapore Pte. Ltd. エージェント/マネージングディレクター
Junya Oishi
大石 隼矢

Fellows Creative Staff Singapore PTE. LTD.(以下「Fellows Singapore」)代表の大石隼矢(おおいしじゅんや)です。

シンガポールは5月に入り、まずコロナウイルス感染者数に増加がみられるようになりました。クラスターが発生し変異株の影響もあり、政府は外出時の人数制限や店内での飲食禁止、リモートワークを強制するなどの措置が取られています。

外出禁止ではないのですが、店内飲食や接触人数の制限があるので、実質的にはロックダウンに近いような環境となり、巷でも同義語のように話されています。先日米ブルームバーグにて「新型コロナレジリエンスランキング(コロナ禍でも安全な国)」で1位になったシンガポールは、政府が上記規制を5/14発表、5/16実施ととても素早い印象です。どうにか感染者増加を防ぎ元の日常が戻ることを祈りましょう。

さて第6回のコラムはベトナムについて書きたいと思います。

*前回同様にクリエイティブ産業の大分類として、映像・音声/マスコミ/ゲーム/広告・デザイン/出版/WEBサービス/ソフトウェア/建築設計としたいと思います。

まずベトナムという国の概要をご紹介いたします。

ベトナムはシンガポールから見て北東に位置し、南北に長い土地を持つ国です。人口は9,648万人と日本と少ししか変わらない規模の国です。その内約半数が30代という年齢層の低さもその特徴です。公用語はベトナム語でその他少数民族の言葉があります。英語のレベルは英語能力ランキング(EFEPI発表)で標準的にカテゴライズされています。たしかにこちらでベトナム人の友達がいますが、すごく英語が堪能という訳でもないですね。観光地であるハノイやホーチミンなどでは英語を話せる方も多いようですが、地方では異なるようです。また、その友人は北部出身で「ホーチミンのような大都市には数回しかいったことがない」ということで、そういったことも影響しているようです。
余談ですが、シンガポールには様々な人種がいますが、その人が受けてきた教育により英語の発音のきれいさにも差があるような感じがします。欧米への留学経験がある方はとても流暢な英語を話しますし、大学出身者もそうです。一方でホーカーやレストランなどで働く人々は単語をつなげて話すような人もいて決して流暢とは言えません。日常生活面ではこういった英語の流暢さがさほど重要とされない環境が、日本人が住みやすいと感じる理由の一つだと思うのですが、ビジネスにおいてはやはり正確な英語が話せるに越したことはありません。
ちなみに先程の英語能力ランキングで、日本は49位/88か国で低いに該当しています。アジアの中でも英語力が低い国であることをとても危惧しています。

 

さて、次にベトナムの主要産業についてご紹介します。全体の割合ではGDPのうち、農林水産業が11.71%、鉱工業・建設業が36.45%、サービス業が42.2%となっています。
参考資料:https://www.gso.gov.vn/en/data-and-statistics/2021/04/infographic-gross-domestic-product-in-the-first-quarter-of-2021/

それではコンテンツ産業の規模はどのようになっているのでしょうか。2018年発表のJetroの調査では、映画市場規模については2006年~2015年までの約10年で急成長しており、2016年(予測)で2億USD(約200億円)とされています。ゲーム市場は約3億USD(約300億円)、テレビ市場、アニメ市場ともに正確な市場規模の数字を見つけられなかったのですが、テレビ市場の特徴としては国内外合わせて100以上のチャンネルがあることや、全世帯の約半数以上が有料テレビ契約をしていることなどがあげられ、アニメ市場ではCartoon NetworkやDisney Channelなどの海外専門チャンネルが放送されるようになり急速に市場が拡大したといわれています。(Jetroによるベトナムコンテンツ市場調べ2018年3月発表) 

調べていくとベトナムは「東南アジア最大のゲーム市場」と称されているほどゲーム市場が熱いようで、上記2016年時の市場規模からさらに成長を続けているようです。その背景にはスマホの普及が一つの理由としてあげられると思います。人口の約8割に当たる国民がスマホを所有し、モバイルゲームをプレイする人は半数を超えている、という調査結果もありました。人口が近い日本はスマホ普及率が約7割弱で、モバイルゲームは約4割弱ですから、ベトナム人の方がゲームが好きで時間を使っていると思うと日本に住んでいた時は世界で日本が一番スマホを使っているという固定概念があったので、なんだか不思議です。きっと街中では多くの人がスマホを片手にながら歩きをしているのでしょう。

 

次にITやソフトウェア開発などのデジタル市場についてですが、2015年から2019年にかけベトナムのIT関係の仕事数は約5倍にまで伸び、それに伴うITエンジニア需要も年々高まっています。特にベトナム、IT、人材、でヒットするのが「オフショア開発」で、人件費の低さから東南アジアの中でもベトナムが開発拠点として最も注目されている国の一つです。また、前述のように人口の約半数が30代以下という比較的年齢層が低いことも一つの要因のようです。そして外資企業の製品開発先として選ばれることも多く、様々なサービスにおいてデジタル化が進む中で世界から注目されています。またTholonsによる調査によればGlobal Digital NationsのランキングでTop10(第9位)にランクインしています。
→TholonsのGlobal Digital Naitions:http://tholons.com/

GlassdoorやLinkedinなどで調べると、デジタル関連の仕事として開発マネージャーやエンジニアなどの求人が多くヒットします。おそらくここ数年で「人件費の安い国」という理由から「開発リソースがある国」として国内にベンチャー企業が誕生したり、M&Aが盛んになったりすることで、IT系人材の価値も高まっていくものと思われます。一説には中国の人件費高騰により開発拠点をベトナムに移す企業が増えたともいわれているので、同じことがベトナムでも起こると個人的には予想しています。

ベトナムに詳しいクライアントでもあるデザイン会社Dressin井上氏に聞くと、「ベトナムで特徴的なデザインやユニークなカルチャーも見るにはみるが、そこまで発展している印象はない」と言っていました。またシンガポールで美容師をしているベトナム出身のLinh氏に聞くと「ベトナムは今デザインや映像制作、音楽、ファッションなどを磨いている最中」と言います。人柄としては真面目で一生懸命な性格の人が多いベトナムなので、時代の流れとともに独自のコンテンツ作りやポップカルチャーにも情熱の火がついていくでしょう。最後に以下のようなベトナムのクリエイティブハウスが制作した動画を見つけたので、参考までに貼っておきます。フェローズが進出する頃にはクリエイティブ熱もピークを迎えていて、そこにちょうど飛び込んでいけるようなイメージをしています。

From Fairwear To Love Affair from The Lab
HP:https://thelabsaigon.com/work/from-fair-wear-to-love-affair
動画:https://vimeo.com/285442267

プロフィール
Fellows Creative Staff Singapore Pte. Ltd. エージェント/マネージングディレクター
大石 隼矢
1990年 静岡県焼津市生まれ。小さいころからサッカーに魅了され、日韓ワールドカップで来日したデイビッド・ベッカムの話す英語に衝撃を受け、自分も話せるようになりたい!と大学は外国語大学へ。2010年カナダ・ウエスタンオンタリオ大学へ交換留学。2012年株式会社フェローズ入社。ブロードキャスト・ビジュアルセクション。2020年4月にフェローズ初の海外拠点であるFellows Creative Staff Singapore Pte. Ltd.の責任者に就任。
好きなバンドはOasis、最近の趣味はNetflixで英語学習、尊敬する歴史上の人物は吉田松陰と白洲次郎、好きな食べ物はカレーライスとらっきょう、嫌いな食べ物はかぼちゃと大学芋、みずがめ座B型、佐々木希とジェームズディーンと富岡義勇(鬼滅の刃)と同じ誕生日。
Twitter:@junya_oishi

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