「売っていたのは、希望」

東京
ライター
来た、見た、行った!
かつらひさこ

2021年が明けた。

「よい年でありますように」というのは毎年の定型文になっているが、2020年がとんでもなかったために、「本当に今年は、今年こそはいい年であって欲しい」と力を込めて思う方が多いと思う。私もそうなのだが。

 

何が辛かったって、あらゆる行動を制限されることの辛さもあるけれど、それを繰り返しているうちに、「夏休みになったらどこに行こう」「思い切って海外に行っちゃうか」「これが終わったら友達と飲み会だ」「楽しみにしているライブに行くんだ」というような、「楽しみにしていること」がどんどんなくなっていってしまったこと。

 

心が乾いて、でも我慢しなくちゃならなくて、心の中から何かが削られていく感覚は、もしかすると昨年独特の物だったかもしれない。

「いい年」というのはどういうことなのかな、と思いながらネットを検索していると、西武・そごうの元旦の新聞広告が目に飛び込んできた。

 

【西武・そごう】わたしは、私。

 

それはレシートに記載された、西武百貨店の2020年6~11月の売り上げ。

新型コロナウィルスで行動が制限されても、いつか旅行できる日のためにスーツケースを買った人。

マスクで隠れてしまうけど、口紅を買った人。

夏祭りは中止になったけど、浴衣を買った人。

ハイヒールを買った人。

ベビーギフトを買った人。

 

泣きそうになった。

いい広告だなと思った。

 

私が大好きな映画「ショーシャンクの空に」のラストシーンで、「希望はいいものだ。たぶん最高のもので、決して滅びない」というセリフがあるのだが、それを思い出した。

 

希望が削られる日々はまだまだ続きそうではあるけれど、それでも手放さずに握りしめていきたい。

年の初めにそんなことを思った。

プロフィール
ライター
かつらひさこ
1975年札幌市生まれ。自分が思い描いていた予定より随分早めの結婚、出産、育児を経て、7年前からライティングを中心とした仕事を始める。毒にも薬にもならない読みやすい文章を書くことがモットー。趣味はクイズと人間観察。

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