オリジナル作品を次々創作、創設35周年で目が離せない音楽座ミュージカル

東京
エンタメ批評家・インタビュアー・ライター・MC
これだから演劇鑑賞はやめられない
阪 清和

 音楽座ミュージカルをご存じだろうか。

 その存在はユニークで、1987年の旗揚げ以来、上演するのは「日本発のオリジナルミュージカル」。そのすべてを新しく生み出し、再演を重ねてレパートリーを増やしていく。地道に実績を積み重ねてきたその音楽座ミュージカルが近年大きな注目を浴びている。日本のミュージカルを牽引して来た東宝が、一昨年から今年にかけて音楽座ミュージカルの名作と呼ばれる作品3本を本公演として立て続けに上演したからだ。それは音楽座ミュージカルの活動が広くミュージカル界からリスペクトを受けているからこそ実現したこと。今現在、日本のミュージカルでトップに立つスターたちがこぞって音楽座ミュージカルへの「愛」を語るほど、彼らの「原点」的存在でもあるからだ。音楽を、そしてミュージカルを志したころのまっすぐな気持ちを思い出させてくれるその純粋さに触れることで自分たちを見つめ直しているのだ。(写真はミュージカル「7dolls」の一場面、(c)ヒューマンデザイン、撮影・二階堂健)

 

 もちろん、それだけではない。リスペクトを集めているのは、彼らの「創作」が注目に値するから。その「ワームホールプロジェクト」と呼ばれる創作方法は脚本、演出、音楽、振付、美術、衣裳、照明など演劇の各要素のプロデューサーたちが創り出した基本の骨格の上に、キャスト・スタッフ全員が平等に話し合って創り上げていくシステムだ。

 異なる意見がぶつかり合うことによって起きる化学反応だけではない。時にはそこから新しい何かが生まれる。創作の過程でも「創作」が行われているのである。再演のたびにそれは新たに繰り返され、それぞれの時代を背景にしたディスカッションが行われていく。

 実験的な作品にも果敢に挑戦する集団である。「変化」を怖れない演劇集団であることは演劇界の誰もが認めるところだ。

 上演される会場によってもさまざまな工夫が施され、表現方法が根本から検討し直される。私自身、稽古場公演などいろんなパターンで上演される公演を取材しているので、その違いが良く分かる。

 そんなまるで鉄を打つような過程があるからだろうか。生み出された作品はどんどん強度を増し、やがて「名作」と呼ばれる作品に成長していく。

 

 東宝は2020年1月に音楽座ミュージカルの旗揚げ公演の演目「シャボン玉とんだ 宇宙(ソラ)までとんだ」を、音楽座愛を叫び続けてきた井上芳雄と、咲妃みゆのコンビで上演。咲妃が私も投票に参加した「ミュージカル・ベストテン2020」の女優部門ベスト1位に選ばれるきっかけとなるなど大きな話題を呼んだ。

 さらに2021年10月には、エリーザという娘に音楽の才能があることに気付いた父親が、「アマデウス・ヴォルフガング・モーツァルト」と名乗らせて男性として育てるという大胆な物語を基にしたミュージカル「マドモアゼル・モーツァルト」を明日海りおらの出演で上演。

 今年2022年1月には、1993年に音楽座によって初演されたミュージカル「リトルプリンス」を、王子役に音楽座の初演でも同役を演じた土居裕子と若手の加藤梨里香をあて、王子と交流する不時着機の飛行士に井上芳雄、王子の星に咲くプライドの高い「花」役に「マリー・アントワネット」「エリザベート」で知られる花總まりをあてるなど、トップスターによる再演が立て続けに上演された(演出はいずれも小林香)。

 

 音楽座ミュージカル自身はそうした状況に深い感慨を覚えているに違いないが、それに満足することなく、彼らが常にそうであったように前進することを忘れていない。

 主演の高野菜々が「令和2年度(第75回)文化庁芸術祭賞(演劇部門新人賞)」を受賞するなど充実した仕上がりとなった「SUNDAY(サンデイ)」など新作を創作し続けており、ポール・ギャリコの「七つの人形の恋物語」を原作に2008年以来再演を重ねた「7dolls」も昨年上演され、今年1月末から始まったオンライン配信も好評だ。

 今年は劇団創設35周年。2月にはこれまで上演してきた音楽座ミュージカル作品の場面、歌、ダンスをあらたな物語として構成した「JUST CLIMAX」を東京で上演。6~9月には人気レパートリー「ラブ・レター」を全国で上演し、11月には待望の新作ミュージカル「KARELU(カレル)」も上演される予定で、ますます目が離せなくなりそうだ。

プロフィール
エンタメ批評家・インタビュアー・ライター・MC
阪 清和
共同通信社で記者として従事した30年のうち20年は文化部でエンタメ各分野を幅広く担当。円満退社後の2014年にエンタメ批評家として独立し、ウェブ・雑誌・パンフレット・ガイドブック・広告媒体・新聞などで映画・演劇・ドラマ・音楽・漫画・アート・旅・広報戦略に関する批評・インタビュー・ニュース・コラム・解説などを執筆中です。パンフ編集やメディア向けリリース執筆、イベント司会、作品審査も手掛け、一般企業のプレスリリース執筆や顧客インタビュー、広報アドバイスや公式サイトの文章コンサルティングも。全国の新聞で展開予定の最新流行を追う記事や音声YouTubeも準備中。活動拠点は渋谷・道玄坂。Facebookページはフォロワー1万人。ほぼ毎日更新のブログはこちら(http://blog.livedoor.jp/andyhouse777/ )。noteの専用ページ「阪 清和 note」は(https://note.com/sevenhearts)

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