「一」と「無」のあいだ オンライン展覧会

東京
書道家・ライター
Tohku
桃空

わたしたちが閉鎖された空間のなかで、考えることはなにか。

書のなかで、いちばん最小の「点」「画」をわたしは考えていた。

腕に届く小さな半紙のなかでできること、

白いカーペットのように敷いた大きな画仙紙のなかでわたしが今できること、

そんなに大げさなものではない。

掛け声が出てしまうような大きく空を揺るがす書のパフォーマンスではない。

むしろわたしは「できる限りゆっくり」筆を動かしていく。

それが、次の走り出しのきっかけとなるように

静かな開かれた空気の晴れ間を待って

室内で「一」を書いています。

 

あるときに書いた「一」は震えるような刻みが見える

またあるときに書いた「一」は細く始まって細く消えゆく

おなじように一画で「円」を書いていっても、

そのときによって太さや掠れ方がまるで違うもの。

天気、気持ち、墨の色、床の素材、風、光は、時の切断面ごとに違う。

 

わたしたちは空気を感じているときと

まるで周りを気にしないで自分のことしか見えないときがある

 

わたしたちは空気を気にしすぎて何も出来ないことがある

誰かをいたわり、優しい声をかけられるときがある

 

そうやって、ほんの少しの偶然の重なりが

わたしたちの周りをとりまいている

 

今回は先人たちの書いた「一」を幾つか書いてみて

彼らの気持ちになってみた

書というものが無限のひろがりを感じてくれるような

そういうものであったらいい

それは密閉された空間でも

いつでもどこでもほんとうはできるものだから

墨と硯、筆と紙、この4つが揃えば

いつでもどこでもできるものだから

そしてこの4つの宝物は、自然のなかに置いていかれたとしても

決して地球を壊したりしない

わたしたちの骨と、肉と、同じように

いつか消えゆくものと同じように

 

桃空個展『一と無のあいだ』の開催は主にオンラインです。

下にURLとQRコードを記載しています。よろしかったらぜひ覗いてみてください。

実物の展示は、明治大学生田図書館GalleryZEROにてコロナウィルス感染症のため

入場を制限しています(学生と職員など図書館入場できる方のみ閲覧可能)。

オンライン会場URLはこちら

 

『一と無のあいだ』

そのとき筆は音をたてて、真っ白な世界を滑り出す。

書 松尾桃空

映像・写真 篠田優

映像提供『円相の裏側』 松本力(映像作家)

図書選定 管啓次郎、林 真、中野行準

展示協力 笠間悠貴、谷口岳

 

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大きな筆で円相を書く

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ポストカード表

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円相の裏側〈撮影 松本力〉

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オンライン展覧会会場

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