職種その他2020.04.01

ミッション19 春を探せ!

ミッション19
電通第5CRプランニング局 クリエーティブ・ディレクター / コピーライター
Akira Kadota
門田 陽

今回の探検隊、元々は別の指令が出ていたのですが、新型コロナウィルスの影響をモロに受けてしまい急遽指令が変更されましたので当コラムのアップが遅れて申し訳ありませんでした。(※本来は、2020年3月4日公開の予定でした。)指令内容は「山手線全駅前で配られるポケットティッシュの傾向を探れ」でした。こちらはこの事態が収まってからもう一度探検してみます!

さて、気を取り直し息の詰まる日々に少しでも先が見えそうなものを探してみようと思います。春と言えば何だろう?と考えつくままとにかく100個あげてみます。このやり方はふだん僕が本業でやっている通りです。
(1)桜 (2)お花見 (3)隅田川 (4)団子 (※5)亀田三兄弟 (※6)赤白黄色 (7)僕は汽車の中 (8)居眠り (9)あくび (※10)曙 (※11)春場所 (※12)山笑う (13)土筆 (14)わらび (15)カーディガン (16)鶯 (17)ウグイス嬢 (18)センバツ (19)苺 (※20)いちごスプーン (21)キャベツ (22)猫の恋 (23)卒業 (24)第2ボタン (25)春雷 (26)バーベキュー (27)蝶々 (28)菜の花 (29)花粉症 (30)新入社員 (31)一年生 (32)ランドセル (33)ピカピカ (34)落第 (35)たけのこ (※36)喜多八師匠 (37)アスパラガス (38)エイプリルフール (※39)としまえん (40)キャンディーズ (41)恋 (42)ぽかぽか (43)出会い (44)青春 (45)家庭訪問 (※46)陽炎 (47)爛漫 (48)開幕 (49)ツバメ (50)目覚め (51)溺れる (52)官能 (※53)めくるめく (54)雪解け (55)スプリング (56)別れ (57)転勤 (58)転校生 (59)小林一茶 (60)ハワイ (61)習い事 (62)ピアノ (63)オルガン (64)バイエル (65)音楽室 (66)告白 (67)新調 (68)クラス替え (69)テキスト (70)ブランコ (71)公園 (72)シャボン玉 (73)三角ベース (※74)口笛 (※75)空き地 (※76)駐車場 (※77)忌野清志郎 (※78)奇妙礼太郎 (79)十二単 (80)むつごろう (※81)どんたく (※82)警備 (83)野焼き (84)初デート (85)アップデート (※86)ヴィヴァルディ (※87)掃除の時間 (88)遠足 (89)おやつは300円 (90)ハンカチ落とし
さてさて、残り10個は名前に春が入った人にします。春といえばまずこの人、が世代によって違うでしょうね。けっこういますね。
(91)松山千春 (92)村上春樹 (93)三波春夫 (94)佐野元春 (95)春やすこ・春けいこ (96)川口春奈 (97)近藤春菜(98)赤木春江 (※99)春風亭一之輔 
そしてラスト一人は誰にしようか。猪木のモノマネの春一番かオードリーの春日か立川談春か悩みましたがそれらをおさえて(100)ハルウララ、そんな馬もいましたよね。あ、三浦春馬もいた、けど申し訳ない。ほんとの馬が100番目です。
※以上100個の連想ですが、個人的な思い込みも多いのでいくつか脚注を付けます。

(※5)もちろん4番の団子からの連想。あとは相撲の井筒三兄弟か道端三姉妹か三匹の子豚の三兄弟くらいかな。
(※6※7)どちらも春→チューリップからの連想。
(※10※11)春は→曙→お相撲→春場所
(※12)春の季語。中学時代、試験に出た記憶があります。
(※20)最近これ見かけないなぁ。
(※36)これは僕が大好きだった故柳家喜多八師匠(もう亡くなって4年近くなるんですね)の得意ネタが35番の「たけのこ」という咄だったので入れました。落語ファンならわかるはずです。
(※39)エイプリルフールのとしまえんの広告は永遠です。
(※53)僕の中では春イメージの言葉。
(※74※75)その昔、NHK教育テレビでやっていた「みんななかよし」のテーマ曲は僕ら昭和40年代育ちには忘れられません。
(※76※77)そして市営グランドの駐車場には今でもキヨシローのあの声が聞こえて、さらに最近では(※78)キヨシローのカバーを歌う彼の声も捨てたもんじゃないです。
(※81※82)新入社員のときから毎年、GWは博多どんたくで花自動車の警備をやりました。当時はほんとにイヤだったけど、不思議と今ではほんとにいい思い出です。
(※86※87)ヴィヴァルディの「四季」は「春」以外は知らないですよね。僕の通った小学校ではこの曲が掃除時間に、給食のときにはサン・サーンスの「白鳥」が流れていました。
(※99)昇太でも小朝でもなく、春風亭といえば今はやっぱり一之輔がオススメ。

<隅田川に行ってみる>

「春」を100個挙げたあとはすぐに行動です。まずはノーリーズン、理屈抜きで隅田川に行ってみようと思いました。春のうららの隅田川♪に行けば何とかなるという直感です。不幸中の幸いというかリーモートワークで体は持て余し気味。気分転換も兼ねて速攻訪ねてみました。場所は勝鬨橋と佃大橋の間の遊歩道。テレビドラマやCMの撮影に頻繁に使われるところです(※写真①)。で、いきなり結果ですが特に春らしいものは見つかりませんでした。3月上旬の川辺は寒く道行く人は背を丸めて歩いていました。強いてあげれば道中で保育園児たちのお散歩を見ることができました(※写真②)。その姿は暖かくてやや春っぽいかな。そうでもないかな。

写真①

写真②

<「春が来た」を調べる>

隅田川の川辺を歩いたとき、「春のうららの♪」ではなくなぜか「春が来た春が来た♪」を口ずさんでしまいました。せめて気分だけでもなんとか春に近付きたいと思っていたのでしょう。すれ違う人が怪訝そうに僕を見つめます。季節の変わり目に現れるヘンなおじさんにしか見えませんよね。コートを着てマスクしているチューリップハットの歌う中年男性には誰も関わりたくないはずです。ところでこの曲「春が来た」は誰が作ったのかなと思考しましたが浮かびません。滝廉太郎じゃないし北原白秋でもないよな?とスマホで調べたら作詞は高野辰之。誰?正直このときまで僕は高野辰之を知りませんでした。恥ずかしい。詳しく探っていくと凄い人でした。「春が来た」だけでなく「春の小川」も「故郷」も「もみじ」も「朧月夜」も高野辰之作詞なのです。驚きました。日本の歌百選(文化庁と日本PTA全国協議会で選定)に野口雨情と共に最多の5曲も彼の曲が入っています。どえらい人です。
1876年(明治9年)長野県永江村(現中野市大字永江)生まれ。彼が書いた詞の原風景は今もその地に住む人たちが大事に受け継いでいて地元には高野辰之記念館があるそうです。ネットで調べても口コミなどの情報はあまり出ていません。念のために電話をするとコロナ対策は整えているのでぜひお越しくださいとやさしく案内されました。これはもう行くしかありません。きっと春が見つかるはずと何を疑うことなく僕はバスタ新宿から長野行きの高速バスに飛び乗りました。こんな時世のせいか席は気の毒なほどガラガラでした(※写真③)。

写真③

<いざ長野へ永江村へ>

夜遅く長野に到着(思い付きでバスにしましたがしんどかったなぁ)。翌朝向かった永江村(中野市永江)は遠かったです。距離ではなく交通手段がタイヘンでした。この日の長野駅前の気温は3℃(※写真④)、みぞれまじりの空模様。そこから永江にいちばん近い替佐駅までは電車ですがその先のバスが土曜だと一日に3本しかありません(※写真⑤)。上空から雪も舞い始めたころ何とか現地高野辰之記念館に辿り着きました(※写真⑥)。客は僕一人。この天気ではおそらくこの日は僕以外は誰も訪れないでしょう。先にまた結果を言います。ここは大正解でした。来て本当に良かった!建物の中は暖かく、なによりも職員の方の心遣いがさらに温かくて。記念館は高野辰之が教鞭をとった小学校の跡地に作られていました。館内の音楽室で高野辰之の生涯を描いたビデオを観賞後、展示スペースをゆっくり見物して玄関に戻り受付前のスペースに目をやると地元の写真家の作品が展示されていました(※写真⑦)。これがことのほか素晴らしかったのです。古い写真も見ごたえありましたが、その写真に添えられている文章がたまらなくステキなのです。すばらしいコピーだと思って案内をしてくれた方に尋ねたところ、以前この記念館の職員だった方が書かれたとのこと。僕の師匠の仲畑(貴志)さんのコピーだと言われても信じたかもしれません。せっかくなので、ひとつ紹介します。このコーナーは許可を得て撮影させてもらいました(※写真⑧)。

写真④

写真⑤

写真⑥

写真⑦

写真⑧

「家族の肖像」。
少子化などという言葉はなかった
家族は大ファミリーに決まっていた

じぃちゃんがいて ばぁちゃんがいた 牛や馬も家族だから
一つ屋根の下で暮らした
記念撮影はVサインなしの
緊張でいっぱいだ
だからいつまでも写真は
色あせない

ね!なかなかいいコピーでしょ。外はとっても寒いけど心の温度はぐんと上がりました。
思わぬ副産物でした。気分がよくて記念館の庭を見ようと外を少し歩いてみるとなんとそこに土筆を発見(※写真⑨)。うれしくて泣きそうでした。

写真⑨

<あっ、春が!!>

思い付きで飛び乗った行きのバスでしたが、 せっかく乗った船(乗り物に乗り物の比喩を用いてどうする苦笑)なので帰りもバスで戻りました。到着地新宿の夕刻をフラフラ歩いていると人だかりがあったので近寄るとみんな上を見てスマホで写真を撮っていました。(※写真⑩)。この日の長野は雪でほんとに白い日でしたが東京では平年よりもなんと12日も早い開花宣言が発表されました。来ない春はないと確信した今回の探検でした。

写真⑩

<余計な付け足し>

最後に蛇足になりますが、日本の歌100選は100選とあるけれど、選考の際(2006年)にどうしても絞り切れずに101曲になったそうです。ただ、今よく見るとその中に「世界に一つだけの花」が入っているので、もし選考会が今年だったら100曲になっていたのかなぁ、とほんとに余計なことを考えてしまいました。いやいや、曲には何の罪もありません。大好きな名曲のひとつです。

プロフィール
電通第5CRプランニング局 クリエーティブ・ディレクター / コピーライター
門田 陽
電通第5CRプランニング局 クリエーティブ・ディレクター/コピーライター 1963年福岡市生まれ。 福岡大学人文学部卒業後、(株)西鉄エージェンシー、(株)仲畑広告制作所、(株)電通九州を経て現在に至る。 TCC新人賞、TCC審査委委員長賞、FCC最高賞、ACC金賞、広告電通賞他多数受賞。2015年より福岡大学広報戦略アドバイザーも務める。 趣味は、落語鑑賞と相撲観戦。チャームポイントは、くっきりとしたほうれい線。

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