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ITエンジニアにもクリエイターにも新たな可能性が開かれるHTML5の世界

東京
特定非営利活動法人 LPI-Japan 理事長 成井 弦 氏
今回は、Linux等のオープンソースソフトウェア(OSS)を扱うIT技術者とHTML5プロフェッショナルの育成を、認定活動を通じて支援する非営利団体Linux Professional Institute Japan (LPI-Japan)の理事長、成井弦氏にインタビューを行いました。Linux技術者の認定試験であるLPICの受験者数は延べ約29万人、認定者数は延べ10万人を超えています。この数字はOSSの技術分野の認定団体としてはLPI-Japanが世界最大とのことです。LPI-JapanはHTML5プロフェショナル向けの試験である「HTML5プロフェッショナル認定試験」を約3年前から実施しています。今回は理事長にHTML5の認定資格がなぜ今必要なのかをたっぷりと語っていただきました。

世の中にLinux/オープンソース技術を普及させたい

成井様は、これまでコンピュータグラフィックス(CG)の世界などに関わるお仕事をされてこられったそうですが、なぜ、また日本にLPI-Japanを立ち上げようと思われたのでしょうか?

シリコングラフィックス(SGI)という会社をご存知でしょうか?私は、その日本法人で副社長をしておりました。今から10数年も前のことです。当時はSGIのコンピュータを使って、ジュラシックパークやタイタニック、スターウォーズなどの映画のCGが制作されました。そして映画のみならずテレビ番組、ゲームソフトなどの制作に携わる多くのクリエイターの方々にSGIのコンピューターを使用していただきました。またX-JAPANなどのコンサートでもVFX (Visual Effects)にSGIのコンピュータが利用され素晴らしいイベントにすることに貢献できました。

2000年頃にSGIはインテル社のIA-64と呼ばれるプロセッサを使用したサーバにLinuxを使用することを決定しました。そこで私は、当時無名だったLinuxを日本で普及させる目的でLPI-Japanを設立し、Linuxを扱うIT技術者向けの認定試験であるLPICの提供を始めたのです。NEC、富士通、日立もLinuxを搭載したサーバの販売を開始した頃でしたので、LPI-Japanの理事企業として参加していただき、LPI-Japanの設立資金の一部を提供していただきました。その後、LPI-Japanはその活動が広く認知され、Linux及びOSSの普及に貢献する20社以上の企業がLPI-Japanプラチナスポンサーにご加入されました。今ではプラチナスポンサーを始めとする120以上の企業・団体・学校がパートナー団体として我々の活動を支援してくださっています。

さまざまな企業の思いや、成井様の情熱が経緯としてあったのですね。

はい。現在では、LPICだけでも延べ29万人以上の方々に受験していただき、LPICの認定保有者は延べ10万人以上になりました。今ではOSSの技術分野においてLPI-Japanは世界最大の受験者数と認定者数を有する団体になりました。

なぜ、今HTML5プロフェッショナル認定試験なのか

Linux/OSS技術者向けの認定試験以外にもクリエイターにとって重要なHTML5の認定試験も提供されていますね?

ええ。提供している5つの試験のうち「HTML5プロフェッショナル認定試験」以外は全てコンピュータのサーバ側の試験です。しかし、ご承知の通り、現在のコンピュータの利用方法はサーバとPC,スマートフォン、タブレット端末などが繋がって使用されています。サーバに対してこれらの端末の事をクライアント端末と呼びます。HTML5はクライアント端末にとって最も重要なプログラミング言語です。皆さんがよくご存知のJavaもプログラミング言語ですが、JavaでWindows PC向けに作成されたプログラムをWindows PC以外の機器で利用する場合はプログラムを変更する必要があります。しかしHTML5でコーディングすれば、変更せずにWindows PC、Macやスマートフォンで利用することができます。このように一度作成されたソフトウェアを変更することなく多くのクライアント端末で利用できる機能をワンソース・マルチデバイス機能と呼びます。HTML5にはこの機能があるので、Webサイトの制作者のみならず、IT技術者にとっても非常に重要なのです。

「社内基幹システムはすべてHTML5へ」と書かれている資料を見ましたが、これはクリエイティブに限らず、すべてがHTML5言語になっていくということでしょうか?

おっしゃる通り、まさしく「すべてはHTML5になる」ということです。これは、日経コンピュータというIT技術者向けの雑誌ですが、2012年時点で「すべてはHTML5になる」という特集を組んでいます。5、6年前までは圧倒的に社内の基幹システムにつながっている端末はほぼ全てといってよいほどWindows PCが占めていました。しかし、ここ数年でMacや、無線を使ったモバイルデバイスなどがどんどん利用されるようになりました。その結果、社内で使うコンピュータシステムであってもワンソース・マルチデバイス機能が必要になりました。つまりIT技術者もHTML5を理解している必要性が急速に高まったのです。

このような理由からオラクルが提供しているJava EE7は、HTML5にも対応するようになっています。大手企業が使うERP(Enterprise Resources Planning)という分野のソフトウェアであるSAPも全てHTML5対応になりました。
翻って、HTML5を習得したWebクリエイターの方には、クライアント側のプロフェッショナルとして、様々な企業に就職できるチャンスが生まれてきた、とも言えます。ある意味で、現在、IT業界で一番重要なのはサーバに繋がっているクライアント端末に表示されるコンテンツです。ネット上にある膨大なデータを分析してもその結果をどのようにクライアント側で可視化させるかが重要です。二次元で表示するよりは三次元の方が良い場合もあると思います。そこに新たな創造性が要求される訳です。先般、ある大手のEコマース企業の方がLPI-Japanの認定校を訪ね「HTML5ができて、サーバ側のLinuxがわかる方には、年収1,000万円を出すので紹介してくれ。」と言われたそうです。

スティーブ・ジョブズ氏が語っていた「FLASHよりもHTML5だ」

これからHTML5はIT技術者にとってもクリエイターにとっても必須だということですね。

ご存知の通り、スティーブ・ジョブズ氏はFLASH全盛期である2010年に「これからはFLASHではない。HTML5だ。」と発表し、Apple製品はHTML5のみをサポートするようにしました。従ってFLASH全盛期の当時は、iPhoneやiPadでFLASHで作成されたサイトに行くとクエスチョンマーク(?)が出てきました。しかし、今はそのようなサイトはないですね。つまり、ほとんどのサイトがHTML5で制作されるようになったということです。今はYouTubeも使用者の端末がHTML5対応であることを前提で動画を流しています。Google アドワーズもHTML5で作成された広告のみを受け付けるように昨年からなったとの記事を読みました。HTML5というのはその位Web業界では標準になって来ているということです。

それ故に自分が頭に描く映像をコンピュータやスマートフォンなどのスクリーン上で可視化することを生業とするクリエイターにとってHTML5をマスターすることはこの上なく重要です。
油絵で生計を立てる画家にとり油絵具の使い方に精通することは、当然のことながら、必要不可欠です。タイタニックやアバターの映画監督であるジェームス・キャメロン氏はCGの能力に精通することにより、素晴らしい作品を創り出すことが可能になりました。同様に「Always三丁目の夕日」「永遠のゼロ」「海賊になった男」などの素晴らしい作品を生み出した山崎貴氏は“監督・脚本・VFX 山崎貴”と映画の最後に出るクレジットに書かれています。映画のクリエイターであるジェームス・キャメロン氏や山崎貴氏にとりCG技術の表現力に精通することは自分が頭に描く画像を映画にする上で最も重要な能力の一つだと言えます。同様にWebクリエイターにとり、HTML5に精通することは必要不可欠なのです。

HTML5の機能には3D CGを制作するWebGLと呼ばれる機能が含まれています。
下記のサイトをご覧になるとWebGLで作成されたレーシングカーの3D画像を動かすことが出来ます。
http://helloracer.com/webgl/ 
HTML5の一部であるWebGLの3D CG画像能力が如何に素晴らしいかをご理解頂けると思います。

人間の視覚に対する欲望に飽和点はありません。白黒よりはカラー、静止画像よりは動画、2D画像よりは3D画像。そしてカラーのみをとってもより美しいカラーへと欲望は尽きません。このような欲望に応えることが出来るクリエイターが差別化優位性を築くことができます。そのような優位性を築くことを目指すクリエイターにとってHTML5を使いこなす能力は最も重要な能力です。

それから、ハイブリッドキャストというものをご存知でしょうか?
ハイブリッドキャストとは、放送と通信を連携させた新しいテレビサービスで、そのコンテンツもHTML5で作られています。4K、8K時代の放送業界では、ますますHTML5が必要になってきます。東京オリンピックの頃には、もっとたくさんのHTML5を利用したコンテンツが生まれている筈です。

HTML5による技術革新の世界、そして目指すべき技能とは

HTML5による技術革新という面では他にどんなものがあるのですか?

スマートフォンなどが有する特殊機能を使用するプログラムはネイティブと呼ばれるプログラミング言語で書かれています。このような機能をHTML5で使用できるようにしたCordovaと呼ぶソフトがあります。CordovaもLinux同様にOSSです。このCordovaにはスマートフォンの特殊機能を利用する為のプログラムが多く収納されており、それをHTML5言語で使用できるようになっています。このようにネイティブ言語で書かれたプログラムをHTML5で利用する機能は更に充実すると思います。

同様にHTML5言語とJava言語の親和性も更に良くなると思います。

またHTML5の処理速度を早くする進歩も今後あると思います。
3DグラフィックスがHTML5で扱えるようになった理由の一つはnVIDIAと呼ばれる会社が処理能力の高いGPU (Graphic Processing Unit)を開発し、それが多くのクライアント端末に内蔵されているからです。同様なことが他のHTML5機能でも実現されると思います。

それから医療の世界でいいますと、CT、MRI等、身体の内部を3次元画像で診断出来る医療機器が多く出てきています。米国ではこのような画像を患者に医師がモバイル機器で説明する際には、FDA(厚生労働省に相当)が決めたHTML5対応のブラウザを使って説明することを決めています。日本でも同様な方向になると思います。

IT能力 + クリエイター能力を有する人と企業が圧倒的な優位性を築くと述べられますが?

ご承知の通り、スティーブ・ジョブズ氏は、アップルを時価総額世界最大の会社にしました。その要因は、何だったのでしょうか?先ほどの話にもあったように彼は、FLASHの全勢期にこれからはHTML5だと言ってMAC、iPhone、iPad全てをHTML5対応にしました。それに加えて彼は以下の能力を有する人を大量に採用しました。

IT能力 + 映像に精通
IT能力 + 音楽に精通

よくプログラマーはロジカルな頭脳の持ち主で左脳が発達している。それに対して映像を作るようなクリエイターは右脳が発達している、と言われますが、ジョブズ氏が採用したプロフェッショナルは、右脳と左脳の両方が使える両刀使いの人材だったのです。それがアップルの成功を生んだ圧倒的な差別化要因だったと思います。
この成功の方程式は現在でも当てはまると思います。
つまり、WebデザイナーもHTML5を学んで自分が頭に描くコンテンツ(動画や画像)を自分でプログラミングしたほうが良いのです。また、Webプログラマーの人も自分で簡単なホームページを作る、デザインをしてみるといったような努力をしたほうが良いわけです。HTML5は、画家が絵筆を使って絵を描く以上に非常に表現力豊かでスーパーリッチな能力を持った言語です。であるがゆえにその使い方に精通しないと、本当に自分の頭で描いたものをパーフェクトには表現できません。だからこそ、HTML5を勉強して、絵の具やクレヨンで描くよりも遥かにクリエイティブな映像をHTML5の能力を使って描けるようになっていただきたいと思います。そのためには、WebデザイナーもプログラマーもHTML5を使って何ができるのかを勉強する必要があると思います。

HTML5を使うとどんな仕事の世界が広がるのでしょうか?エルダーになってもそれは可能なのでしょうか?

HTML5はある意味で可視化のプログラミング言語であるとも言えます。
それ故に分野を問わずクライアント端末が利用される分野の全てにHTML5を学んだ人が活躍できる分野があります。それに加えてハイブリッドキャストのコンテンツ作りや自動車のカーナビなど広い分野で活躍出来ます。

またインターネットの普及に伴いビッグデータの分析が色々な企業で行われるようになりました。このような分野で重要なのは分析結果を如何に可視化させるかです。ここでもHTML5が重要な役割を持ちます。

HTML5は技術的な閾値が低い言語です。従って年齢に関係なく取り組むことが出来ます。
またクライアント端末の使用者には多くの年配者がいます。そのような方々向けのコンテンツ制作は年配者の方が良いと思います。

皆さんがこれからHTML5を勉強して、活躍されることを期待しています。

取材日: 2017年2月2日取材 ライター: 合資会社スタジオエア 代表社員 北野容子

特定非営利活動法人 LPI-Japan

  • 代表者名(よみがな):理事長 成井 弦(なるい げん)
  • 設立:2000年7月
  • 事業内容:LPIC(Linux技術者のための世界共通の国際認定制度)運営団体
  • 所在地:東京都港区麻布台1-11-9 BPRプレイス神谷町 7F
  • URL: http://www.lpi.or.jp/
  • お問い合わせ先:http://www.lpi.or.jp/contactus/
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