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キーワードは「科学技術」 最先端の研究をCGでわかりやすく表現する

京都
サイエンス・グラフィックス株式会社 代表取締役社長 辻野貴志 氏
大学時代にサイエンス全般に興味を持ち、イラストレーターやサイエンスライターとして本を出版した経験もある辻野 貴志(つじの たかし)さん。大学院生だった2004年にサイエンス・グラフィックス株式会社を立ち上げました。主に研究者や医師らをターゲットに、視覚的に伝わりにくい科学技術の世界を、CGを用いてわかりやすく表現するコンテンツの制作を手がけています。自らを「突き詰めるタイプ」と分析し、今でも2日に1回は新しい絵を考えているという辻野さんに、起業の経緯から今後の展望まで様々なお話を伺いました。

イラストレーター、サイエンスライターから会社設立へ

会社を立ち上げられた経緯についてお聞かせください。

学生の頃に、CGで絵を作っていたのがスタートですね。まだブログ等がなかった時代にホームページでサイエンスをCGで紹介するというのを併せてやっていたのですが、それがたまたま本になり、CGと並行してライターのような活動もしつつ、併せて絵も描けるということで、個人事業主という感じで活動していました。その流れで大学院の時に会社を立ち上げました。23歳くらいだったと思います。「1円で起業できる」という時代のちょうど最初の頃だったので、それも一つのきっかけにはなりました。

元々、医療の分野には興味を持たれていたのですか?

そうですね。医療も含めたサイエンス全般ですね。大学も工学部で理系だったので。そもそも、何故こういう情報を発信しはじめたかというと、今でこそ科学技術の情報はグラフィックも含めてコンテンツがたくさんありますが、2000年くらいにはほとんどありませんでした。それで、自分で情報を発信しようと思いました。今だったらたぶんあるもので満足していたと思うので、情報発信していなかったかもしれません。(笑)

顧客は大学、研究機関が7割

現在の事業内容についてお聞かせください。

やっていることは、いわゆるデザイン会社のような感じで、CGや映像、ウェブのコンテンツの制作ですが、会社の名前の通り、お客様が研究開発をしているところが多いという特徴があります。大学、研究機関が7割くらいで、企業はものづくり系のメーカーが多いですね。作っているものはグラフィックスが全体の割合の半分くらいを占めていて、あとはその周辺的なウェブ制作というところですかね。
グラフィックスは、研究や製品の技術面を紹介するようなCG、CGイラスト、動画等があり、お客様が作りたいイメージを具体的に映像ツールにします。
使う目的は、企業であれば展示会、大学の場合は研究の内容を紹介する際の映像ですね。

展示会というのは具体的にはどういったイメージですか?

例えばビッグサイトなんかでやっている環境技術展等です。環境技術はハイテクに裏打ちされたところがありますので。
医療関係のものもありますが、医療と一口に言っても創薬とか基礎研究に近い部分のお客様が多いです。

かなり特殊な内容になりますね。

そうですね。私自身が理系出身というのもあるのですが、内容を理解しながら作るということが他の企業では難しいと思います。
 研究者が一般の人に知ってもらうためというよりは、日常の研究活動の中で使うような映像ツールですので、数も多いですし、一時の流行りでなくなったりすることもないですね。教育の一環というよりは、研究の一環で使われています。教育レベルの映像であれば、高校くらいまでの知識で出来る話だと思うので、他にも作れるところはけっこうあると思います。

顧客はどういった形で獲得されているのですか?

最初は、自分が卒業した研究室へ営業に行ってましたね。大学に関しては、今は新規開拓を特別しなくても、紹介等で依頼があります。企業に関してはあまり認知されていないので、時には足を運んで営業をすることもあります。
 あとは、弊社のホームページをご覧になった企業の方が突然やって来るケースもあります。「科学技術 CG」とか「科学技術 イラスト」で検索をかけると上位に出てくるみたいなので、おそらくそんなキーワードで検索して興味を持って来られるのではないかと思います。

いわゆるニッチな産業だが、需要は確実にある

とくに、どういったところに需要があると思われますか?

どちらかというと、弊社は専門家同士の方の映像等が多いです。研究者同士の場合でも分野が違うと内容がわからないというのが意外とあります。研究分野がかなり細分化してますから。今までであれば、自分と関係のない分野はそんなに知る必要もなかったのですが、今は最先端の研究はいくつもの領域が融合してきています。他分野のことも知っていないと応用が利かない、新しいことができないんですね。 展示会も、ビッグサイト等でやっているビジネスショーというのは基本的には企業の人がネタを探しにくるというのがほとんどで、お互い一定のレベルの専門家ではあるはずですが、お互いの技術をなかなかパッとイメージしにくいんですね。
一般の人向けというのは必ずしも多いわけではないので、そういう意味では、弊社は映像制作会社の中でもちょっとニッチというのはありますね。(笑)会社を立ち上げて10年以上になりますが、なかなか競合は入って来ないです。個人レベルではあるようですが、例えば大学にいきなり営業に行ってもそんなに仕事があるわけではないでしょうし、参入しにくいのでしょうね。

実際のお仕事の流れというのはどのような感じでしょうか?

基本的には大学が多く、広報からの依頼もありますが、圧倒的に研究者から直接依頼が来ることが多いです。業態としては、研究者に直接行くという意味でも論文の翻訳サービスなんかと同じだと思います。ただ、翻訳は仕事としての形は決まっていると思いますが、こちらは絵を描くという感覚的なものです。仕事としての形態ははっきりしてきたかなというのはありますが。
例えば、カバーピクチャー(学会での発表や論文に利用する図)だけでも、10年かけて1,000本くらいは作っています。今は1年で200本くらい作っているので、2日に1回くらいは何か新しい絵を考えています。(笑)

お仕事の内容は当然専門的になると思うのですが、例えばご自身で勉強されたりということはあるのですか?

研究最先端なので、当然知らないことの方が多いです。その時に、多少調べなければいけないことというのはもちろんありますが、必ずしも全て同じ土俵である必要はないです。本当に自分で研究するわけではないので、ここまで把握していたら絵は描けるなという感じです。ただ、仕事の数が多い分、納期も短いので、なかなか勉強する時間はないですね。

コンテンツを世の中に出していきたい

お仕事をされる上で面白みややりがいを感じられるのはどんなところでしょうか?

新しい研究について話を聞く面白さはありますね。今はそこまでできるんだ!という感じで。新しい情報が入ってくるということと、元々自分が絵を描くのが好きだったというのもあります。思っていたことを絵にする時に、サクッとうまくいく時と、頭の中では出来ていてもなかなか絵にならない時があるのですが、うまくいく時は気分がいいですね。その辺りがクリエイターとしてのやりがいですね。
あと、会社としては、紹介を通じて知らない人がどんどん依頼してきてくれるというところです。新規で来る人もいますし、研究が進行すると少しずつアップデートしたものを作っていくので、リピーターもすごく多いです。

ちょっと芸術家に近いようなところもある感じですね。

そうですね。例えば仕様書で固められたCADの世界とかよりは、確かに感覚に近いところはあるでしょうね。研究者から「何かこんな感じでかっこいい絵を作ってください」って依頼が来ることがあるのですが、かっこいい絵って……。(笑)大体は想像できますが、無茶ぶりなこともありますね。(笑)

では、お仕事をされる上で苦労されていることはありますか?

これは本質的なところではないのですが、仕事の数が増えている点と、非常に属人的なテクニックでやってきているところがあったので、それを分解して取り組むというのが今苦労しているところですね。サイエンスをみんながよく知っているわけではないので、CGとサイエンス両方で募集するとなかなか人が集まらないんですよ。
 あとは、表現は変わるわけではないのですが、今までなかったような概念の図とかが出てくるので、そういうところはまだしばらく私が作っていかないと、CGが出来るだけでは作れないと思います。電極の表面で何が起こっているかみたいなことを、見えるはずがないのに見てきたかのように描かないといけないわけです。

今後の展望についてお聞かせください。

私も最初にやった時は一般の人にもっと知ってもらえたらいいなと思い、色々模索したこともあるのですが、一般の人にコンテンツ(CGイラスト等)を買ってもらうというのはなかなか難しいんですね。
 元々大学は情報を外に発信していかないといけないというのはあったので、研究者から大学の広報等を挟んで間接的にこういったコンテンツが世に出てくるということはあります。時々、非常にインパクトのあるわかりやすい研究があった時に、一般向けにもプレスリリースが出ることがあるのですが、そういった時にも弊社で制作したものが使われるので、徐々に世の中の見えるところに出てきているのかなと思います。  基本的には今の形態で、もう少し安定して数をこなせるようにはしたいと思います。IT系のようなガツンという大きな波はないのですが、業界の中でのポジションは、はっきりしていると思いますので、専門家のところで止まっちゃうことは多いですが、数をどんどん出していけば、少しずつ世の中に出ていくのかなと思います。

一緒に働くスタッフに対して、どのようなことを求めますか?

サイエンスは難しいものなので、全て理解する必要はないと思います。ただ、お客様が何を求めているかということは把握していただきたいですね。平たく言うと、お客様とのコミュニケーション能力ということになります。 細かいレベルの話はわからなくてもいいですが、お客様が欲しいものとデザイナーがいいと思っているものが違うということがけっこうあるんです。ハリウッドレベルのCGを作っているわけではなく、微妙なところが表現できていることで評価してもらっているところがありますので、そこは大事ですね。

取材日:2017年2月24日 ライター:垣貫由衣

サイエンス・グラフィックス株式会社

  • 代表者名:代表取締役社長 辻野貴志(つじの たかし)
  • 設立年月:2004年12月
  • 資本金:3,000,000円
  • 事業内容:「科学技術」をキーワードに、研究や製品の技術的な面を紹介するCG、CGイラスト、動画等の制作
  • 所在地:本社 〒606-8203 京都府京都市左京区田中関田町2-7 思文閣会館113
  • URL:https://www.s-graphics.co.jp
  • お問い合わせ先:075-203-4198
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