映像2021.11.10

映画ソムリエ/東 紗友美の”もう試写った!” 第5回『ただ悪より救いたまえ』

Vol.005
映画ソムリエ
Sayumi Higashi
東 紗友美
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『ただ悪より救いたまえ』

▶近年注目度うなぎ登りの韓国俳優が魅せる究極の演技に驚き度:100

またしてもデスゲーム!?暗殺者VS殺し屋!イカゲームにハマった人にオススメ!

 

年の瀬が少しずつ近づいてきました。今年の世界的ヒットエンタメを統括するとしたら、Netflixで配信直後から瞬く間に世界中で人気を呼んだ韓国発のデスゲームドラマ『イカゲーム』は外せないでしょう。視聴数はNetflix史上最多を記録し、1億4200万世帯が再生。アメリカを含む世界94カ国のTOP10で1位にランクインするなど、世界でも高い人気を獲得しました。そんな世界的メガヒットドラマで主人公を演じたイ・ジョンジェは、韓国ではもとから息の長い国民的な俳優ですが、これから今まで以上にスーパースターになることが予想できますよね。

今回は、そんな今1番おさえておきたい俳優イ・ジョンジェが『イカゲーム』とは全く異なる”サイコパス系殺し屋”を演じた韓国アクションノワール映画『ただ悪より救いたまえ』を紹介します。

[STORY]
引退直後の暗殺者はかつての恋人の死の知らせとともに、その恋人との間に自分の娘が生まれていたことを知ります。しかし、その暗殺者に兄を殺された、裏社会も恐れる凶暴な殺し屋はその暗殺者の命を狙うことに。
”暗殺者VS殺し屋”の血なまぐさい死闘が繰り広げられます。

『チェイサー』『哀しき獣』の脚本に携わったホン・ウォンチャンが本作では監督・脚本を担当。
2022年公開予定の邦画『流浪の月』にも抜擢されている『パラサイト 半地下の家族』のホン・ギョンピョが撮影監督を務めました。タイ、日本、韓国で国を跨いだ4ヶ月に渡るグローバルな撮影が行われ、それぞれの国の情緒も感じられる、旅に出かけられない今にもってこいの映画に仕上がっています。

では感想を一言で。アクション、ロケーション、社会派要素、そしてイケメンを堪能できる素晴らしいごった煮です。
どこをとっても満足度の高いこと!
韓国作品の凄みは、一見私達の現実から離れているような殺人、暴力、人身売買、臓器売買といった犯罪をテーマにした作品であっても役者の高い演技力と、トラウマ的描写もしっかり脚本に落とし込むことでリアリティを感じさせてくれます。一見突飛な裏社会の二者によるバトル。
話題のド迫力のアクションは、特にナイフ使いが段違い!二者の息の合った対決ぶりはもはや新種のラブシーンのようにさえ思えました。殺し合っているのですが息ピッタリで、まるで相思相愛の2人のようにも見えてくるんですよね。

それ以外にも日本人的楽しめるポイントもいくつか。
本作ではロケ地に東京が数カ所登場しますので足を運びたくなります。また、豊原功補氏演じる男が「コレエダ」という名前なのです。偶然かもしれませんが、是枝裕和監督の世界的知名度が向上していることを、映画を通じて感じることができ、嬉しいです。

そして、演者についても簡単に言及させてください。
冒頭にも説明した殺し屋を演じるイ・ジョンジェ。はっきりいいますが、相当イカれてます。
知人のライターは、この作品を観ても『イカゲーム』を鑑賞済にも関わらず同一人物だと気付かなかったそうです。
顔の造形は同じなのに、別人に見えるというのは演技における最大の賛辞ですよね。
体はおそらく兵役などで鍛えたと思いますが、顔の筋肉の動かし方を変えているのではないでしょうか…韓国の演者たちは顔まで鍛えているのでしょうか…。

それだけではありません。映画ソムリエとして、この俳優が出ていたら「とりあえず観る」という演者が数名います。そのうちの1人が今回、W主演のもうひとり、祖国から見捨てられた暗殺者を演じたファン・ジョンミンです。
数日予定のない日があれば”ファン・ジョンミン氏フルツアー”しても良いくらい彼の作品には良作が揃っているのでこの名前だけは覚えてほしいです。彼=名作の方程式、本作でもこのお約束を更新してくれました。
そんなトップ俳優2人のアクションと、表情の演技で戦う“顔面相撲”にもなにとぞご注目ください。

最後に、この作品をより楽しむ方法をお伝えさせてください。
今回の主演2人が今回とは正反対の”義兄弟”を演じた『新しき世界』というヤクザ映画があります。
これ、実は映画ソムリエ東のベスト映画の1本。
公開時よりも作品の素晴らしさが後に評判となり、日本でも人気のいわゆる”警察のヤクザ組織への潜入捜査モノ”なのですが、その作品で印象的に使用されていたアイテムや場所が偶然にもオマージュのように、本作にも登場しています。機会があれば、観ておくとより楽しめるかもしれません。

12月24日、聖なる夜。暗殺者と殺し屋によるバトルが幕を開けます。
私は、甘い夜ではなく、死闘を選びたい。ちなみに、皆さんは?

 

出典:「Netflix有料会員が2億1千万人に。『イカゲーム』は1億4千万世帯が再生」
https://av.watch.impress.co.jp/docs/news/1359955.html

ただ悪より救いたまえ
12月24日(金)よりシネマート新宿、グランドシネマサンシャイン 池袋ほか全国ロードショー

 

 

監督/脚本:ホン・ウォンチャン 『チェイサー』『哀しき獣』(脚本)

出演:ファン・ジョンミン『ベテラン』、イ・ジョンジェ『新しき世界』、パク・ジョンミン『それだけが、僕の世界』

◆ストーリー:
腕利きの暗殺者インナム(ファン・ジョンミン)は、引退前の最後のミッションで日本のヤクザ、コレエダ(豊原功補)を殺す。コレエダは冷酷無比な殺し屋レイ(イ・ジョンジェ)の義兄弟だった。
レイは復讐のため、どこまでもインナムを追いかけ、関わった人間を次々と手にかけていく。
一方、インナムの元恋人はインナムと別れた後ひそかに娘を生み、タイで暮らしていたが、娘が誘拐され元恋人も殺されてしまう。
インナムは、初めてその存在を知った娘を救うためタイに向かい、誘拐に関わった者達を拷問し居場所を探す。
レイもまたインナムを追ってタイにやってくる。そして二人の通った後には死体の山が出来上がる…。
タイの犯罪組織や警察まで巻き込み壮大な抗争へと発展する。
果たして、暴走する暗殺者と狂暴な殺し屋の運命の対決の結末は一体!

2020年/韓国/韓国語ほか/シネスコ/カラー/108分 提供:ツイン、Hulu 配給:ツイン 宣伝:スキップ    PG-12

公式サイト:tadaaku.com

プロフィール
映画ソムリエ
東 紗友美
映画ソムリエ。女性誌(『CLASSY.』、『sweet』、『旅色』他)他、連載多数。TV・ラジオ(文化放送)等での映画紹介や、不定期でTSUTAYAの棚展開も実施。 映画イベントに登壇する他、舞台挨拶のMCなどもつとめる。 映画ロケ地にまつわるトピックも得意分野で2021年GOTOトラベル主催の映画旅達人に選出される。 音声アプリVoicyで映画解説の配信中。

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