心に響く映像をつくりたい 独学でスタートした新卒フリーランス

札幌
映像ディレクター、エディター
Akiho Endo
遠藤 秋穂

大学時代から先生として働いていた塾に就職すると同時に、フリーランスとして映像制作の仕事も始めた遠藤秋穂さん。企業PRや研修用動画などキャリア・教育ジャンルから、ミュージックビデオ、テレビ番組、ウェディングムービーなど幅広く制作中。そんな遠藤さんに映像の道に進んだきっかけや現在の仕事、今後の展望などをお聞きしました。

予期せぬ出会いで映像制作の道に

大学では全く別の分野を学んでいたとお聞きしました。動画制作と出会ったきっかけについて教えてください。

大学では臨床心理学を専攻し、映像の仕事をしようとは思ってもみませんでした。「職業と人生」という講義の先生だったコンサル会社の社長さんに「うちでインターンをやってみない?」と誘われ、映像制作を担当したのがきっかけです。その会社では企業ブランディングの手法のひとつとしてプロモーションビデオ制作、特にキャリア支援や教育の分野に力を入れていました。

主に大学の講義や企業PR動画作りを担当し、構成・撮影・編集を学びました。その会社の先輩も独学からのスタートだったことが、専門学校などに行ってない自分を奮い立たせてくれました。

どうして映像制作だったのでしょうか?

もともと夢は先生で。でも高校生の頃に家庭の不和や人間関係に悩む友人の支えになれないか、心の痛みを理解できないかと臨床心理学を勉強し始め、大学生でそのコンサル会社に出会ったのは私の人生を大きく変える出来事でした。

人の心に響く映像という価値観に共鳴しました。感動や幸せを届けるツールとして映像制作を使うという方法があるのかと。最初は編集ソフトiMovieとハンディカムのビデオカメラで撮影の基本、カメラワークを教えてもらい、制限の中でどれだけのパフォーマンスを発揮できるかという模索の日々でした。

ミュージックビデオや映画の予告編にはどんな仕掛けがあるか分析したりもしました。

そのまま映像制作の道に?

その会社から内定をいただいてましたが、私を入れてたった5人のベンチャー企業でした。映像だけでなく主催セミナー準備、HPデザイン、事務や経理の仕事も担当しました。

大学1年生の頃から続けてきた家庭教師と塾講師も行いながらインターンをしていたので過労と気持ちの面で心身ともに崩れてしまい、辞退せざるを得ませんでした。

悔しさと申し訳ない気持ちとでいっぱいの中、卒業後はアルバイト先でお世話になっていた塾へ就職しました。でも映像制作も諦めたくない。塾のオーナーに「先生をしながら映像もしたらいい」と背中を押してもらい、同時にフリーランスで映像制作の仕事も始めました。自分ひとりで何ができるか考え、まずはインターン時代の延長として企業PRや教育研修動画の制作から始めました。

インターンでの経験があるとはいえ、新卒フリーランスでどうやって仕事を獲得していたのでしょうか?

就職活動でお世話になった企業の人事担当者、知り合った学生、先輩方とFacebookで繋がっていたので「お試しで格好良い映像作らせてください」と色々な方に声を掛けて、少しずつ依頼をいただきました。インターン先の会社をご存知の方は教育系に強いと認めてくださっていたので嬉しかったです。

最も作りたいミュージックビデオに関しては、バンドやDTMをしている知人・友人のライブを撮影し、プロモーション動画を制作してYouTubeで公開していただいたりも。専門学校卒の友人やフリーランスのカメラマンと一緒に楽しく撮影させていただいたのは貴重な経験であると同時に大切な思い出です。

その後Twitter、Instagramと交流の場所が増えたことによって好きな音楽ジャンルのアンビエント・エレクトロニカの作品を精力的に制作しました。応援してくれる方々の声に支えられ、理想の映像制作に一歩ずつ近付けました。

http://akiho-endo.com

ネット上で公開中の作品をまとめたHPを作ってくださったのは兵庫のフリーランスwebデザイナー川野文太さんです。ギタリストでもあり、バンドの楽曲制作やソロプロジェクトなどもされています。職種は違っても特に年齢の若いフリーランサーは周囲に多くないので、知り合えた方々との繋がりを大切にしたいと思います。

下に貼ったのは名古屋を拠点に全国で活動されてるシンガー千花さんのMVです。全国に数多くの映像制作者がいる中で、私の世界観が好きというお言葉をいただけて嬉しかったです。大阪のラジオのエンディングテーマにもなった関係で想像以上に多くの方が観てくださり、諦めずに映像制作と向き合い続けてきて良かったと思いました。

独学&多様なジャンルの経験を新たな強みに

 

現在はどのような働き方なのでしょうか

現在はフリーの仕事を中心にMV・企業PRや教育研修動画・テレビ番組・ウェディングムービーなどの制作をしています。塾での仕事は大好きで本当に天職でした。オーナーは従業員のことをよく考えてくださり、教え子たちも可愛すぎて。でも映像制作に使う時間がもっと必要になり…悩み抜いた末、3年続けた後に退職しました。現在はMV・企業PRや教育研修動画・テレビ番組・ウェディングムービーなどの制作をしています。

独学スタイルだけで今後やっていけるか不安だった時に、フェローズさんからテレビ局での編集の仕事紹介があり、1分1秒が勝負のニュース編集を担当させていただけたことは大きな財産になりました。イレギュラーな要素ばかりを身につけていたので、編集の基本と報道現場の最前線にいる方々が情熱的に仕事をしている姿勢を学べて本当に感謝しています。

 今年からはFellows Creative Academyの映像編集講座で講師を務めさせていただき、編集の楽しさやプロのテクニックを伝えることにも力を入れています。

具体的にはどんな映像を制作されているのですか

音楽系は札幌を始め全国で活躍しているシンガーソングライター、バンドのライブを撮影したPVやMVを制作しています。DTMの普及により同人音楽サークルや個人でもSoundCloudに格好良い楽曲をアップする作曲家が多く、ボーカロイド作品のリリックビデオなども制作しました。

教育系は過去に合同企業説明会のPR動画や新入社員向けの仕事内容や先輩インタビューをまとめた研修動画など、テレビ番組では北海道で起きた事故や事件のほか、四季折々のイベントや観光名所など風物詩を紹介する様々なニュースを編集しています。

映像制作時にこだわっているポイントはありますか?

訴求点を定めた構成を最も重要視しています。例えばMVはサビの盛り上がりで明るさや希望を表現するご要望がある場合、イントロで虚無や退廃感を詰め込み緩急をつけることで人間の心理変化を描きます。穏やかな楽曲に海や山など自然を多用すると癒しを求めている人の心に響きますし、ロックなバンドサウンドには細かなカットをテンポよく入れて疾走感を演出し飽きさせない工夫としたり。その楽曲を最後まで聴いてもらうために「何を視聴者の心に訴えかける」のかストーリーを綿密に作り込みます。類似した演出があると困るので、他の方の作品も膨大な量を研究しながら気をつけて構成を練ります。自由度が高いジャンルは意図的に抽象的な作品にしがちで、どのようなメッセージが伝わっているかは不明ですが。(笑)

ニュースでよくある期間限定のイベントや収穫もの、動物園に新しく生まれた赤ちゃん紹介などで最初に印象的な音声やインタビューを持ってきて「これは何の話だろう?」と視聴者の意識をこちらに向けさせる手法はよく使われます。

セミナー告知動画なら「こんな前代未聞な講座は受けたことがない」など受講者の声を最初に持ってくると、学びを欲している人はワクワクするのではと思います。

クオリティの追求は時間があればあるだけキリがないところで、報道やウェディングのエンドロールなど制限時間に追い込まれて作るものでも、作り手のこだわりや人間性が垣間見える部分もあるので視点を変えて映像を観るのは面白いです。

遠藤さんの強みとはどんなところだと思いますか

映像を専門学校で学んでおらず現場での経験もインターンの1年だけ、技術をほぼ独学で身につけてきたという点は当初こそ不安でした。めげずに続けてご縁をいただき、現場で基本を改めて学ぶことのできた今では逆に独学からのスタートを強みと考えて活動しています。独学だからこその型にはまらないオリジナリティと、臨床心理学の視点を活かした訴求点設定で他にはない作品として差別化を図りたいです。

これから映像制作を始めたい人は、手当たり次第に撮影や編集をしていくのもありかもしれませんが、構成を深く考えることの大切さと楽しさを知っておくと視聴者への伝わり方が大きく変わると思います。編集技術は後からでも身につけられますので。

また、音楽、教育、報道、婚礼など全く異なるジャンルの制作方法を比較検討し、それぞれ特徴を分析した結果を活かすという考え方も強みになると信じています。

ジャンルや作り手の思い、伝えたいことが異なるように最適のカメラも編集ソフトも制作工程も多種多様です。

広い視野を持つことで担当できる仕事の幅も広がったのは確かな事実です。

札幌を拠点に全国を飛び回って活躍するクリエイターを目指す

遠藤さんは札幌出身ですが、東京で働こうと考えたことはありますか?

音楽分野の依頼を最も欲しているので、東京は有名アーティストのMVを手掛けている制作会社もフリーランスの映像制作者も多く魅力的な場所です。東京の会社に入らないといけないと思っていた時期もあり、そう言って上京していった仲間もたくさんいます。

でも今は東京に移住しないといけないかというと、そうは思っていません。

例えば札幌で活動中のシンガーソングライターやバンドに対してMVやライブ映像で知名度アップさせるお手伝いができればいいなと。そもそも自分の好きな音楽はマイナーなので、少数派でもいいから自分の作る映像を良いと思ってくれる、共鳴してくれる方々を大切にしながら本当に好きな仕事を継続的にやりたい気持ちが強いです。

映像制作の中でも編集は比較的どこに住んでいても可能ですし、職種を問わず同じように環境に縛られることなく働ける仕事は増えてきたはずです。

生まれ育った札幌を拠点としながら全国の仕事をしていきたいです。家族に何かあっても同じ札幌に住んでいればすぐ駆けつけられますし、何だかんだで札幌が好きなのかも。

どこにいても自由に好きな仕事をする、この考え方がこれからもっと主流になれば良いなと思います。好きでいくらでも情熱を注げることのできる仕事は突き詰めれば誰にでもあるはずで、女性だからとか、若いからと性別や年齢だけで判断するような時代遅れな見方はやめて輝けるフリーランサーがもっと増えればいいなと思っています。

今後取り組みたいことを教えてください

まだまだ勉強不足の未熟者なので現状ワンオペの映像制作には限界があるため、今は構成と編集メインとなっていますが、本当はもっと撮影にも携わりたいです。周りにドローンを始めるよう勧められて検定も取得したのでMVの空撮も積極的に自分でしたいですね。

札幌にいる以上は、今までよりもっと地域密着型の仕事にも挑戦して社会貢献を果たしたいです。札幌は特に「札幌のために何かしたい!盛り上げたい!」と考えている方が多いと感じます。

映像制作セミナーで伝えられる内容も増やしていきたいです。フェローズさん主催のCreative Academyで講師をさせていただいて、やっぱり教える仕事が大好きなことを改めて実感しました。

将来的にはセミナーも全国で開催できたらいいなと思います。編集ソフトの操作方法だけならYouTubeの動画にいくらでもありますし、最近はオンラインサロンの流行があるので、どうやって付加価値をつけていくかは学ぶ場所の多様化という側面も含めて今後もっと勉強しなきゃと思います。同世代の若手クリエイターチームに誘われているのもあり、色々な方と作品づくりができたら学ぶことも多いですよね。

塾講師の経験も活きているのですね

セミナーでは「構成を強化して訴求力を高める」という点に主軸を置いています。今や映像制作はPCやスマホひとつで簡単にでき、小学生が将来の夢にYouTuberを挙げる時代です。思い通りの映像を作って趣味や娯楽として楽しむこともできますし、芸能人が活躍の場をテレビからYouTubeに移行して自由なトピックスで語るように、映像を自己表現の方法として使うこともできます。私自身が偶然の巡り会いでこの世界と出会ったように、映像を幸せや感動を届けるツールとして使って自己表現する大切さや楽しさをたくさんの人に知っていただけたら嬉しいです。幸せや感動を届けるツールとして。

構成を重要視しているので編集ソフトの種類も、iMovie、Final Cut Pro、Premiere Pro、EDIUS Pro、DaVinci Resolve、様々ありますが全て完璧に教えられるようになりたいです。

セミナーを通して多くの方々と関わり成長し、他の編集やカメラマンと一緒に高め合いながら仕事ができると、これから更に夢のある映像制作ライフを送れると思います。

取材日: 2019年9月10日 ライター:小山 佐知子

プロフィール
映像ディレクター、エディター
遠藤 秋穂
札幌出身。大学時代のインターンにて映像制作に出会う。大学卒業後は塾講師として働きながらフリーランスで映像制作の仕事も始める。3年後の2018年には映像制作一本に。現在はMV、ライブ映像、企業PR動画、ウェディングムービー、ニュース編集など多岐にわたる分野にて活躍中。複数の映像編集ソフトを場面ごとに使い分け、独特な視点から切り込み「心に響く映像制作」を目指すセミナーも好評。

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