沖縄らしさを武器にゲームコンテンツやVTuberを企画・開発。全てに貫かれた”あしびー”の精神

沖縄
株式会社あしびかんぱにー 代表取締役社長
Yoshihiko Katagiri
片桐 芳彦

「あしびー」という言葉をご存知ですか?沖縄の方言で「遊び」という意味を持つこの言葉が社名についた「あしびかんぱにー」は、その名が表すようにエンタメの会社。ゲームコンテンツ制作を根幹に、そこで培われた技術を生かしてバーチャルYouTuber(VTuber)事業にも注力しています。作品の大きな特徴の一つとして、沖縄色を打ち出しているものが多いことが挙げられます。なぜ沖縄にこだわって作品を作るのか。その理由や、会社運営においてのモットーなどを、代表取締役社長の片桐さんに伺いました。

地方でもゲーム会社は成功できる

沖縄で「あしびかんぱにー」を立ち上げた経緯を教えてください。

岐阜のゲームエンタメ会社に勤めていたことが、この業界のキャリアのスタートです。その会社では上場を経験しましたので、地方でも十分成功できると感じられたことが沖縄での会社設立のきっかけになっています。その後「プリアップパートナーズ」という、あしびかんぱにーの親会社を設立、代表になりeコマース事業を展開する中、地方のいいものを集めるという目的で沖縄にも訪れる機会が増えました。そこで初めて、エンタメやITサービスなどの業種を沖縄に根付かせたいがうまくいかない、という県の課題を知りました。当時から福岡などはエンタメ事業でかなり成功していましたし、私自身岐阜の会社での経験がありましたので、沖縄でできない理由はないと感じ、あしびかんぱにーを設立し、スタートさせました。

当時沖縄では他社がまだ成功していなかったとのことですが、不安はありませんでしたか?

成功の定義にもよりますが、私の思う成功は「永くチャレンジを続けられる会社を作ること」だと考えていますので、そういう意味で成功する進め方について迷いはありませんでした。弊社では一緒に働いてくれる皆を「人材」ではなく「人財」だと考えております。当時沖縄県内の他社は、会社を早く成長させることに主眼をおいて中途採用や県外からの人員の採用を進めていました。しかしそもそもゲーム、エンタメ業界がまだ十分に発展していない状態でしたので、人財が不足しておりうまくいかないのではと私自身は感じていました。それを回避するためには、私たちがゼロからしっかりと人財を育成すればいいわけです。一貫して新卒者を採用しているのはそのためで、おかげさまで会社設立から5年目を迎えまもなく30人ほどの規模となりますが離職者もほとんど出ず、皆が順調に成長してくれています。

新卒者を育てるのは時間がかかりそうですが、長い目で見てその方がいいと思われたのですね?

その通りです。時間さえかければ、弊社で腰を据えて活躍してくれるスタッフを育成できます。設立当時はそのような同業他社はあまりいませんでしたので、競合も少なく、ゲーム系の専門学校との信頼関係をしっかりと築けたことも、いい人財が集まってくるようになった理由の1つです。社員の皆が成長した後には、沖縄県内でも存在感のある会社になれると考えていました。

VTuberもゲームコンテンツも、沖縄らしさが武器になる

現在の事業内容を教えてください。

柱の1つは、スマホや家庭用などのゲームコンテンツ制作です。オリジナルタイトルの制作はもちろん、ローカライズ、移植なども行い、様々なタイトルを国内・国外へ展開しています。もう1つ、最近は特に大きな柱になっているのが、バーチャルYouTuber、つまりVTuber事業です。

VTuberについて、詳しく教えていただけますか?

「根間ういちゃん」というVTuberを生み出しました。 沖縄出身の女の子で、根間ういちゃんが沖縄に関することを体験したり、発信したりする「おきなわ部」という展開で、YouTubeを中心に動画配信を行っています。

なぜ沖縄に特化したキャラクターにしたのですか?

「沖縄からエンタメを世界に発信する」というのが弊社の大きなテーマだからです。沖縄出身ではない私から見ると、歴史や風土、自然を含め、沖縄ほどいろいろなコンテンツを持っている県はないと感じます。沖縄だからこそ持つその価値を作品作りに生かした方が、もっと沖縄の魅力を多くの人に届けられると思っています。

沖縄らしさを出すことで、実際多くの方が興味を持ってくれていると感じますか?

強く実感しています。根間ういちゃんは沖縄の方言で話すのですが、それを県外の方々を中心に、新鮮だったり興味を引いているとリアクションを見て感じています。YouTube公式チャンネルを半年前に開設して以来、コツコツと動画配信を続けていますが、アカウント数は3万人を超えてまいりました。日本中には1万人ほどVTuberがいる中で、トップ300に入るほどに人気が出てきました。

すごいですね!根間ういちゃんが沖縄の広告塔のような存在になりそうですね。

ご当地ゆるキャラと近い存在だと思っています。しかもVTuberの場合、映像さえあればどこへでも簡単に移動できるのが長所です。弊社は技術的に十分それが可能ですので、先日は「全島エイサーまつり」という沖縄の大きなイベントで、ネットテレビのサブMCに器用されたり、沖縄の人気テレビ番組に生出演したりと、活躍の場が広がってきています。

「あしびー」の精神を大切に、エンジョイしながら努力する

御社のモットーがあれば教えてください。

社名に冠した「あしびー」という言葉は「遊び」、つまり「楽しむ」「エンタメ」という意味だと捉え、楽しみながら仕事をすることをモットーとしています。しかし決して「楽(らく)」をするわけではなく、あくまでエンジョイです。エンジョイするためには苦労も伴いますが、その分作品ができたときの喜びは大きいものです。若いスタッフたちが苦労しつつも楽しみながら何かを作れば、その喜びは溢れ出て人に伝わります。それを続けていくことでヒット作も生み出せて、永く続く会社にしていけると思っています。

将来の展望を教えてください。

設立から5年を迎え、多くの優秀な人財が育ってきました。会社としての第1成長段階は終わたっと考えています。さらにあと5年で、沖縄を代表するエンタメの会社にしていきたいですね。
沖縄の抱える問題として、若い人の就業率の低さや、離職率の高さが挙げられます。そんな状況の中で、弊社で働く若いスタッフたちが、若い世代の希望の星になってくれたらいいですね。沖縄の活性化の旗印となれるような会社にしていきたいです。

最後に、ゲーム業界を目指す方へのメッセージをお願いします。

特に地方で志す方にお伝えしたいのが、ITやゲームの業界なら地方でもチャンスがたくさんあるということです。地方だからといって情報格差が減ってきている現在であればむしろどっしりと開発等に専念できるような会社が地方にも多く存在しています。スマホゲームに関していえば、世の中に広まり始めたのはこの10年程ですので、若い方のアイデアの方がよっぽどいいと感じます。弊社が沖縄という地方にこだわるのも、そんな若い方の活躍の場を提供し続けたいからなんです。東京で武者修行せずとも地方で十分に力をつけられる時代ですので、ぜひ志高く目指して欲しいですね。

取材日:2019年9月18日 ライター:仲濱 淳

株式会社あしびかんぱにー

  • 代表者名:代表取締役社長 片桐 芳彦
  • 設立年月:2014年7月
  • 資本金:800万円
  • 事業内容:ゲーム制作事業、VR事業、沖縄推進事業
  • 所在地:〒900-0014 沖縄県那覇市松尾1-19-1 ベルザ沖縄2F
  • URL:http://ashibi.jp/index.html
  • お問い合わせ先:098-917-2562

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