WEB・モバイル2019.08.28

便利さよりも、楽しさを提供したい。エモーショナルなEC体験を目指して

沖縄
株式会社EC-GAIN 代表取締役CEO
Kaoru Murata
村田 薫

沖縄ではほとんど類を見ない「ECコンサル」に特化した会社が、今回ご紹介する株式会社EC-GAINです。代表取締役の村田薫さんは、元は楽天市場で腕を鳴らしたECコンサルタント。沖縄のEC業界の問題点を目の当たりにし起業を決意したという情熱の持ち主です。便利さを追求することがスタンダードなECの世界で、あえてエモーショナルな「楽しさ」を追求したいと考える村田さんに、そのモチベーションの源泉と、自社開発の新しいECサービス「temite(てみて)」について伺いました。

沖縄のEC業界を発展させ、子供に誇れる社会にしたい

村田さんのキャリアを教えて頂けますか?

新卒で楽天株式会社に入社しまして、しばらく楽天市場のECコンサルタントとして働いていました。その後東京でフリーランスとして独立し、沖縄にたまたまクライアントができたことを機に移住しました。特に強い思い入れが沖縄にあったわけではなく、ノリと勢いで移住したという感じです。

フリーランスのECコンサルタントから、なぜ会社を起業されたのですか?

楽天市場時代の先輩が沖縄でイーコマース協議会という組織の立ち上げに関わっていて、そこでご紹介頂き沖縄のEC事業者をサポートするお手伝いを始めました。その活動を通して感じたことが、ECに取り組んでいる沖縄の中小企業の課題の多さです。

どのような課題があったのですか?

まず、工場を持っている会社が少なく、生産能力が首都圏のメーカーに比べると低いことです。少ない人数で、いわば家内制手工業のように製造しているので生産量が少なく、商品の価格も高くなってしまいます。さらに、沖縄なので物流費用がかかり送料が高くなるので、本土で買えるようなものの場合、沖縄からわざわざ買うというユーザーが少なくなります。そんな不利な環境の中でも沖縄のメーカーは頑張っていたので、なんとか一緒に解決したいと考えるようになりました。しかし私個人だとできることに限りがありますし、時間もかかってしまいます。協議会という組織体の場合、合意形成だったり、リスクをとって物事を進めたり、不確実性の高い活動になる場合難しいため、思うように進みません。自分の会社であればリスクを取れますし、スピーディーに進められると感じ、会社を設立しました。

沖縄のEC業界への危機感から企業を決意されたのですね?

危機感というよりは、事業者さんへの共感からと言えるかもしれません。それと、私自身が子供を持つ立場になったことも、起業の理由の一つです。子供が将来沖縄の経済に関わるようになったときに、今よりも経済が発展していて欲しいと心から思いました。その経済成長の一端を私も担ったんだと、子供に胸を張って言えたら嬉しいですね。

ソーシャルECサービス「temite(てみて)」とは?

御社の事業の主軸はECコンサルタントとのことですが、具体的にはどのようなサービスをされているのでしょう?

ECに取り組む事業者さんに対して、いわば医者のような役割を担っています。楽天市場のようなモールに出店したばかりなのでどうすればいいのかわからない、つまり症状も治療法もわからないクライアントへのアプローチと、ECはかなりやっているので症状はわかるが治療法がわからないクライアントへのアプローチとは違います。しかしどちらの場合でも、まずは現状を理解するために過去のデータを遡って分析し、対処法を提案し、結果をウォッチしながら改善を進めていくのが主な仕事です。

一方、課題も解決策もわかっているものの、自社のリソースではカバー仕切れないクライアントもいます。そのような場合は、弊社のリソースである実行部隊を提供し、解決することも可能です。

「temite(てみて)」という自社サービスをスタートされたと伺いました。これはどのようなサービスですか?

ソーシャルECという領域のプロダクトです。既存のECサービスは、ユーザーが自ら欲しい商品を探して買う、というが基本の流れですが、ソーシャルECは、SNSを経由して販売を促進するマーケティング手法です。「temite(てみて)」では、「アンバサダー」と呼ばれる人が商品の紹介することによって、そのアンバサダーとつながりのあるユーザーがその商品を発見し、購買につなげる仕組みを作りました。

なぜ「temite」を作られたのですか?

従来の検索型のECサービスだけでは、中小企業が勝てないと痛感したからです。例えばグーグルで検索すると最初の1ページ目で検索順位が10位まで表示されますが、この1ページだけで全体の57%のクリックが取れらます。また、アマゾンでは検索結果1ページ目の12位までで売上の半分を占めています。これでは中小企業が作る認知度の低い商品は、検索してもなかなか上位表示されないため、ユーザーに知ってもらうことすらできません。さらに、そもそも単純想起できないような商品を作っている場合も多いため、最初の検索さえもしてもらえないんです。

単純想起してもらえないとは、どのような商品でしょうか?

例えば「クマさん型の工具」がtemiteの商品であるのですがこういった商品は、その商品自体が知られていなかったり、思いつかなかったりするため検索されません。つまり、アマゾンや楽天市場のような検索型のECサイトでは一生ヒットしないんです。しかし、そんな単純想起できないような商品でも、「temite」であれば、認知度を高められ、購買に繋げられる可能性が高まります。

どのような方法をとるかというと、まずアンバサダーにその商品を実際に使ったりしてもらい、SNS上で広めてもらいます。それを見たアンバサダーのフォロワーの記憶に残れば、すぐには買わないかもしれませんが、認知度を向上でき直接検索される可能性が高まりますし、SNSなので世界中に販路を拡大できます。さらに検索型サイトで勝負をしないのでSEO対策のための費用を抑えられ、広告費の縮小もできます。

なるほど!中小企業でもECの世界で勝てる可能性が出てきますね。今現在、どのぐらいの事業者が「temite」を利用されているのでしょう?

昨年の12月にローンチして以来、毎月150%ずつ増え、今では135ブランドと360人ぐらいのアバサダーさんがいらっしゃいます。6ヶ月続けてきてわかってきたことは、ユーザーがそもそも探そうと思っていないけれど、見せてもらったり教えてもらったりすることで、買う気になる商品はたくさんあるな、ということです。

もし具体的な成功事例があれば、教えていただけますか?

あるメーカーさんが作ったデザイン性の高い「しおり」を、購買につなげたことがあります。「しおり」というワードを検索して買おうとしている方は少ないとは思いますが、ツイッター上で「読書家」という肩書きの方にアンバサダーになっていただき、そのしおりを広めていただきました。すると、その日のうちに数十人の方が購入されたのです。このように、単純想起しづらい商品であっても、アンバサダーさんと趣味嗜好が近いフォロワーさんに広めることによって、購買に繋がったり、知るきっかけを提供したりできると思います。

SNSでのインフルエンサーマーケティングと少し近い印象を受けますが、どのような点が異なるのでしょう?

信頼度だと思います。インフルエンサーは影響力は強いのでリーチ数は取れるとは思いますが、だからこそユーザーからみると「広告費もらっているからお勧めしているんだろう」と、その商品の良さが疑われてしまうのではないでしょうか。アンバサダーなら、その商品を本当にいいと思っていることが、フォロワーと趣味が近いからこそしっかりと伝えられると思います。その信頼性をどこまで「temite」というシステムの中で担保できるかは課題ですが、だからこそ、それを追求することで従来のインフルエンサーマーケティングとの差別化を図れると思っています。

エモーショナルな購入体験を通して、買い物に楽しさを。

御社のHPトップに「お買い物に、便利さよりも楽しさを」と掲げられていましたが、それはなぜですか?

楽天市場で働いていた頃、「ショッピングイズエンターテイメント」というキャッチコピーが掲げられていました。とても共感していたのですが、いつしか楽しみよりも利便性、つまりお届け日数の縮小や低価格化などを追求する方針に変わっていきました。アマゾンもしかりです。利便性の追求はいいことだと思う反面、世の中のECが全てそうなったら面白くないとも感じました。どうやったら楽しい「お買い物体験」をユーザーにしてもらえるのかを、私たちは考えていきたいと思っています。

楽しいお買い物体験として、具体的に何か取り組んだことはありますか?

父の日にアロハシャツやかりゆしウェアを送る、という企画を、沖縄の事業者さんとしたことがあります。せっかく沖縄から送るのであれば沖縄らしさを出そうということになり、サンゴに南国らしいアロマの香りを付け、アロハシャツに添えて梱包しました。

素敵ですね!

普通に梱包するよりコストはかかるのですが、価格競争だけになってしまうと、消耗戦しか待っていません。事業者さんには価格競争よりも、できるだけエモーショナルな購入体験をユーザーにしていただけるような企画を提案しています。

今後の目標やビジョンを教えていただけますか?

沖縄という場所から、世界で戦える企業にしていきたいですね。私がいた楽天市場は、全国の中小企業をエンパワーメントすることを社是としていました。実際、地方のおじいちゃんのお米屋さんが月商1000万円になったとか、シャッター街が復活したとか、ECドリームと呼べるようなことがどんどん実現し、会社も事業者も熱量の高い時期に私は在籍させてもらっていました。それを経験していますので、今度はその熱量を「temite」という別の方法で作り出したいんです。「temite」を使ったら世界中のアンバサダーさんと接点が持てて、販路が世界に広がるという夢を感じてもらいたいし、それを実現できるサービスを提供して行きたいですね。

最後に、どのような方と一緒に働いてみたいですか?

弊社はスタートアップ企業ですので、柔軟性や成長意欲を強く持っている方がいいと思います。成長を強要されますので(笑)。やったことのない仕事が次から次へと舞い込んでくるので、無理にでも自分ができる範囲を広げないと、対応できません。覚悟を持って仕事に臨めるタフな方と一緒に働きたいですね。

取材日:2019年7月3日 ライター:仲濱  淳

株式会社EC-GAIN

  • 代表者名:代表取締役CEO 村田 薫
  • 設立年月:2016年4月
  • 資本金:1545万円
  • 事業内容:自社サービス開発、ネットショップコンサルティング、EC店舗構築、EC運営代行、WEB制作
  • 所在地:〒901-2300 沖縄県中頭郡北中城村アワセ土地区画整理事業区域内4街区 オンモール沖縄ライカム5F Howlive
  • URL:https://ecgain.com/
  • お問い合わせ先:info@ecgain.com

TAGS of TOPICS

日本中のクリエイターを応援するメディアクリエイターズステーションをフォロー!

風雲会社伝をもっと見る

TOP