VRタレント・時田麻衣を運営するCG制作会社Forces11

東京
株式会社Forces11
代表取締役
仁平 孝佳
 
 

2D/3D・ゲーム/映像を問わずさまざまなジャンルのCGを制作する株式会社Forces11の代表・仁平孝佳さんにお話を伺った。実力主義を徹底する会社にも関わらず、社内の雰囲気はとても和やかだ。相反するイメージの「実力主義」と「良い空気」を両立させる手腕に迫った。さらに、今回は「Forces11」のVTuber事業に注目する。アマチュアの活躍も目立つVTuber事業で、プロがやる意義、狙いは何なのか?その意図を詳らかにしたい。

 

ハウスメーカーの営業マンからゲームデザイナーに転身

まず、これまで歩んでこられたキャリアを教えていただけますか?

もともとは大学卒業後、地元でハウスメーカー「セキスイハイム」の営業マンをしていたんですが、昔から好きだったゲームを作りたくて東京に上京しました。専門学校を卒業してから、小さな開発会社に3年、そのあと転職して「セガ」に7年半ほどいました。そこで自分の会社を作りたいと考えて、「Forces11」を立ち上げたのか大体5年半ぐらい前です。それから宮崎県でも「日向屋」というCG制作会社を立ち上げて3年半ほどになります。

ハウスメーカーの営業マンからゲームデザイナーに転身

ゲームの専門学校では、何を専攻されていたんですか?

そのときはキャラクターデザインでした。そこで生まれて初めてちゃんと絵を勉強したので、もっと早く勉強したかったなとは思いますね。
地元が福島県の田舎なので、絵で食べていくような、そういう世界が芸能界に入るような扱いなんですよ。「絵で食べていけるわけない」という感じ。営業の仕事で結構な成績は収めていたし、田舎者の自分にとって東京に出るのは決死の覚悟が必要でしたが、最後には「何か好きなことに挑戦して死ぬんだったらそれでいいかな」と思って上京を決めました。

 

では自分の貯金で専門学校に入って、卒業・就職して……。会社を立ち上げようと思ったキッカケは、なんだったのでしょうか?

会社の大小にかかわらず、自分の好きなものってなかなか作らせてはもらえないんですよね。それで一緒にいる優秀なデザイナーたちが、思う存分暴れまわれるような会社を作りたいって思ったのがキッカケです。年功序列が好きじゃないので、実力主義のチームを作りたいという思いもありました。

向上心がある人じゃないと逆に居づらくなる会社かも

 

御社のWebサイトを拝見しても、「STAFF」ページが格闘ゲームのキャラクター選択画面のようで、ユニークだし、社員さんたちへの愛を感じました。この紹介ページには、一人一人の性格や趣向を表すパラメーター表示がありますよね。「クレイジー」や「スマイル」など項目はそれぞれ異なりますが、この項目はどのように決めていらっしゃるんですか?

あれはもう、本人の自己申告です。

つまり、「僕はクレイジーで」って人がいらっしゃるんですね! 楽しそうな職場が思い浮かびますが、実際はどんな雰囲気でしょうか?

外部の方が見に来られたときに「すごく雰囲気が良い」とよく言われます。ここは本当にスタッフに感謝してます。 僕は、「会社」って言葉は使わないようにしています。会社は「チーム」と呼んでいて、「従業員」という言葉も使いたくないから、同じ意味ですけど「スタッフ」と呼んでます。スタッフとは友だちでは決してないし、馴れ合いもしたくないんです。言うなれば全国を目指すレベルの部活のような形で、スタッフを仲間だと感じてます。実は、最初は会社を「ファミリー」と呼んでいたんですけど、家族って良いことも悪いことも全てのまなければいけない団体だと気づいたんですよね。それは違うなと思ったので、途中から言い方を変えて「チーム」と言うようにしました。お互い切磋琢磨する人たちというイメージです。だから雰囲気はとても和やかなんですけど、自分から「すごくなりたい」「もっと上を目指したい」っていう向上心がある人じゃないとたぶん居づらくなります、逆に。そういうチームですね。

デザイナーの意思で作りたいものを作れる環境

現在の事業内容を教えてください。

今はゲームや、CM、映画、ミュージックビデオ、VR・ARなどの制作ですね。とにかくCGって名の付くものは、2D・3Dを問わずだいたいやろうという姿勢です。変わり種としては絵本を作ってみたり、焼酎のCMを制作するなかでその世界観を伝えたいと考えて、スマホで読める縦読み漫画を作ったりもしていますね。

CGの総合デパートのようですね。実際に動画を制作されている方は、何人くらいいらっしゃるんですか?

だいたい30人です。

多様な事業内容で、CGと一口に言ってもいろいろなジャンルがあると思うんですけれど、ジャンルによって制作チームが分かれていたりするんでしょうか?

 

なんとなく分かれてます。ゲームも作りたいけど動画も作りたいという人は兼任してますし……。その辺りは、好きこそものの上手なれだと思っているので「やりたいやつやれば良いよ」という感じですね。

では本人の意思で、作りたいもののチームに入るんですか?

そうです。ただ、自由にやるってことはそれだけのレベルを求めるってことなので、そこはもう頑張らないと自由にはできないですよね。

絵本などの新しい仕事は、スタッフさんの提案から生まれることもあるのでしょうか?

ありますよ。もともと、自分がアイディアを出すのが好きだったんです。これは本当にありがたい話なんですけど、セガに居たときもただのデザイナーではなくて、企画出しやディレクターもやらせてもらっていました。そのおかげで今、クライアントさんに対して企画書を提出させていただくようなことをやれているんですね。
そういう背景もあって、オリジナルのVRお化け屋敷を作ることもできたんです。

VRお化け屋敷「呪刻シリーズ」は、仁平さんから提案した企画だったんですか?

あれはうちの完全オリジナルで、クライアントさんがいるわけじゃないんです。でも、続けるうちに「一緒にやろうよ」と声を掛けてくれて、宣伝周りを担ってくれる協力会社さんができたんです。おかげさまで、東京ゲームショウなどにも出展できました。さらに、「VRお化け屋敷」をゲームセンターに筐体として置きたいと言ってくれる会社さんも出てきました。VRお化け屋敷は、今では皆で分担してやっている感覚ですね。

スタッフの力が会社の財産だから、頑張るスタッフを「えこひいき」します!

そんな多様な事業をこなす御社の強みとは、なんだと思いますか?

スタッフの一人一人が、「これだけやっていればいい」という意識がないことですかね。

みんな上を目指して、できる幅を増やそうとしています。例えば、キャラクターモデラーだから、キャラクターモデルだけやってればいいでしょっていう頭ではないんです。各々が「もっといろんなことをやりたい」っていう頭を持っているのが、うちの強さです。

まさに、人材は宝ですね。そういう熱心な方の見つけ方ってあるんでしょうか?

 

それは運ですね。でも、大事なのは熱意だと思っています。会社ごとにやり方が違うなかで、僕は即戦力なんてあり得ないと思っているので、本当の熱意があるかどうかが大事なんです。「俺やる気あります」ってウソでも言えるじゃないですか。だから短い面談の中では人間性を重視しています。
ただ、やっぱり知り合いづては多いかもしれません。自己PRより、誰かからの評判って説得力がありますよね。

雇用するとき、そこにスキルが伴っていればもっともっと雇用条件を良くしています。これはうちの特徴だと思うんですが、「えこひいきをします」って公言してるんです。
僕は学校教育に納得がいかなかったんですよ。勉強が遅れた生徒に合わせて授業を展開させると、勉強を頑張ってる人はずっとそっちに合わせることになるじゃないですか。それって公平ではあるけれど平等ではないですよね。僕は、一人一人が輝くような形にしたいと思って、「えこひいきします」と言っています。だから活躍すればするほど、その人は割と好き放題できるんです。給料やボーナスにも差が出るようにしています。大事なのは活躍することであって、みんなを平坦にすることではないと思うんですよ。

異なる業種でキャリアを積んできた経験が、この動画制作業界・エンタメ業界で、強みになっているなって思うことはありますか?

今は営業活動もしているので、営業マン時代に学んだものが生きていると思います。それから、すごく楽しんで仕事できているのもこの経歴のおかげかも。今はラフな恰好していますけど、営業マン時代は許されないどころか、言葉遣いから身のこなしから一挙手一投足全部気をつけろという世界でしたから。でも、こちらではみんなが自由で、良いものを作れば正義って感じがします。いま、僕は最高に楽しいんですよ。毎日が楽しくて、月曜日が楽しみで仕方ないんです。でもそれって、たぶん初めからこの業界に入っていたら、おそらくそう思えてないんですよ。

仁平さんが仕事で一番楽しいことはなんでしょうか?

一番楽しいのは、お客さんが笑っているとき。あとはスタッフが、作ったものを見て面白がっているときですかね。「作って良かった」「ここに来て良かった」って言われると会社を作って良かったと思うし、幸せを感じます。

アマチュアも多い「VTuber業界」で実力を見せつけるプロフェッショナルが作る「VRタレント」の狙いとは

VTuber事業もされていると伺ったのですが、VTuberはこれまでの動画制作事業とは少し異なるジャンルなのではないでしょうか。始めたきっかけを教えていただけますか?

もともとはクライアントさんからVRタレント制作の依頼があって、それを一緒にやらせて頂いたのが始まりです。
自分は、VRを日本で広めたかったんですね。VRってすごい可能性を秘めてるんですけど、日本はちょっと遅れてるんです。海外――例えば韓国では2000万円くらいの補助金が出るところを日本はそんなものはないし。
今、僕は宮崎と東京で無償で講演会をやってるんです。「VR とは何なの?」という話をしてます。日本がスマホのように遅れをとって欲しくなくてやってる講演なんですが、やっぱり言われるんですよ。「一過性のものでしょ」だとか、「今流行ってるだけでしょ」だとか。このままじゃヤバいと思ったんです。それで何か面白いコンテンツがないか探していたときに、VTuberを知りました。
VTuberの最大の弱点って、会えないことだと思うんですよ。強みは、死なないし、歳をとらない。不祥事も起きない。向こう側の人(中の人)が結婚しようが何しようがわからないじゃないですか。それは最高の強みだと思うんですけど、でも決定的な弱点は会えないこと。ただ、「VR だったら会える」んですよね。もともとやっていたVRと合致して、これも世の中に広めるべきだって思ったので始めました。

VTuberを制作するにあたり、大切にしていることってなんですか?

クライアントさんと進めているVTuberとは別に、うちでオリジナルのVRタレントを運営しているのですが、そこで大切にしているのは「実在感」です。本当に存在しているかのようっていう。うちで運営しているVRタレントって、イラストで描いてるんですよ。3Dもあるんですけど、3Dだと味がなくなっちゃうっていう意見があったので、インスタグラムを中心に2Dで活動しています。
VRタレント・時田麻衣は、ファッションモデルなんです。この子が着てる服、全部本物なんですよ。髪形をウィッグで変えたり、実際に存在しているレストランで食事したり、すべて実在する本物だけを使うようにしています。

時田麻衣は、「VRお化け屋敷」にもお化け役として登場しているんですよ。「天孫降臨」という焼酎のCMにも、女の子役で登場しています。

実在するタレントの女の子が、別でお仕事をしているみたいですね。

 

だから彼女へのDMでも、「この子は本当にいるんですか?」っていう質問が飛んでくるんです。そこですね、一番大事にしているのは。「本当にいるんじゃないか」って思ってもらいたい。

この事業の目標を教えてください。

これはもともと営業目的で始めた一面もあるんですよ。時田麻衣のインスタグラムを見てもらえれば、うちのイラストのレベルの高さがわかるでしょって言う。今流行りのVtuberにしても、「うち作れますよ」と見せることができて、営業の一環だったんですけど……。ありがたいことにフォロワーが2万人を超えてきたので、何かできたらいいなとは思っていますね。
実は、今あるテレビ局の方から、番組にレギュラー出演してくれないかっていう依頼ももらっています。叶ったら嬉しいですね。

それは続報が楽しみですね!ファッションモデルということは、今後は雑誌への進出なども考えているのでしょうか?

そうですね。雑誌は出てみたいなと思ってます。

この子の目指したところのもう一個が、「一般の方が見ていて恥ずかしくない」を狙ったんですよ。例えば、ジブリやディズニーを電車の中で喋っても恥ずかしくないですよね。今いるVTuberたちって、多くはかわいらしい日本のアニメの見た目をしていると思ってて……自分もオタクなのでそれを否定するわけではなくて、それってニッチな存在になってしまうんじゃないかなと思ったんです。VTuberっていうカテゴリー自体が、VRと同じで新しい未来を築けるものなのに、VTuberって言ったらアニメでしょ? みたいに海外で思われたくない。だから、この子の広告を出しているのも全部海外なんですよ。日本には一切広告をかけないようにしています。

取材日:2019年3月4日 ライター:渡辺 りえ

株式会社Forces11

  • 代表者名:代表取締役 仁平 孝佳
  • 設立年月:2013年7月
  • 事業内容:ゲーム、映画、CM、VRコンテンツなど、CGにまつわる様々なコンテンツの制作
  • 所在地:〒101-0032 東京都千代田区岩本町3-9-17 スリーセブンビル5F
  • URL: http://www.forces11.com/
  • お問い合わせ先::上記サイトのCONTACTよりお問い合わせください。

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