世界中を100のビジネスでつなげる

札幌
株式会社シンク 代表取締役 小泉 僚鶴 氏
札幌で老舗の映像制作会社を前身とするプランニング会社「株式会社シンク」。現在ではモンゴルにもオフィスをおき、世界各地のビジネスパートナーと様々な事業展開を行っています。「海外とのビジネスで100の事業を作りたい。まだ1/100だけどね。」そう笑う代表取締役の小泉僚鶴(こいずみ りょうかく)氏に、前身の映像制作会社から新たな企業を立ち上げた経緯や札幌のプランニング会社としては珍しい海外事業や医療系案件、今後の展望などについてお話を伺いました。

音響会社から制作業界のキャリアをスタート

起業までのキャリアを教えてください

学校卒業後は上京し、フジサンケイグループの音響会社に入社し、イベントやコンサートの音響担当として働き始めました。元々音楽やラジオなど音響関係に興味があったので楽しく働いていたのですが、そのうちに腰を痛めてしまって退職。札幌に戻った後は友人の紹介でCMやプロモーションビデオなどを編集する映像編集会社に就職しました。これが映像制作の仕事との出会いです。そこは編集技術の会社で、仕事は一連の作業の最後のフィニッシュ部分。制作の過程や全体像が見えない中での作業で次第につまらなく感じるようになり、企画から携わる制作プロダクションへ転職しました。

映像制作の仕事は札幌でスタートだったのですね

制作プロダクションではADからスタートしてディレクターになり、地元テレビ局の番組やCMの制作などを主に行っていました。ちょうど新しいテレビ局が開局した時期でもあり、新しいテレビ局の番組制作にも多く携わりました。ある時、クライアントとケンカをしてしまって当時のプロデューサーに怒られたことがあるのですが、その時に「人に怒られたり使われたりするのは嫌だ」と感じてプロデューサーを目指し、ちょうど30歳でプロデューサーになりました。プロデューサーになると制作だけではなく、広告代理店を回って仕事を獲得するという業務が中心となっていきました。

偶然の重なりで会社を引き継ぎ代表となる

その後2002年に最初の独立をされているのですね。

2002年に今の会社「株式会社シンク」の前身である「株式会社スタジオシンク」の社長に就任したのですが、これは偶然の巡り合わせです。株式会社スタジオシンクは元々、とあるデザインプロダクションの映像部門が独立して法人となったものです。2000年に法人として立ち上げられたのですがその2年後に初代社長が事故で亡くなり、株主の一人だった私に会社を引き継いでほしいと声がかかったのです。ちょうどその時、私自身も独立するつもりで前の会社を退職しようとしているところでした。しかも退職後は少しゆっくりしようと独立後の仕事なども全く入れておらず、スケジュール帳も真っ白な状態だったんです。会社が落ち着くまででいいから経営を引き継いでくれと言われて代表を引き継ぐことになりました。落ち着くまでと言いながら、進行中の仕事も従業員も多く抱えている状態ですんなり落ち着くわけもなく、2002年に代表を引き継いでから現在の会社「株式会社シンク」を立ち上げるまでは14年かかってしまいました。

すでに映像制作会社を経営している状態の中で、現在の会社を新たに立ち上げた理由を教えていただけますか?

株式会社スタジオシンクも設立から10年以上たち、それ以前の歴史もあって札幌の映像業界では知らない人がいない老舗企業となっていました。そうすると会社の色というかイメージというか、そういったものが出来上がってくるんですね。当時は札幌の映像業界もとても狭く、取引き中のクライアントや広告代理店の意向もあり、株式会社スタジオシンクとしてはなかなか新しいチャレンジがしづらい状態にありました。その中で新しい事業や新たなチャレンジをする場として株式会社シンクを立ち上げることにしたのです。

株式会社シンクを新たに立ち上げるにあたってご苦労されたことはありますか?

2016年に株式会社シンクを立ち上げた時点で、スタジオシンクは設立16年が経っていました。良くも悪くも歴史と実績のある企業です。株式会社スタジオシンクから社員を引き継いでスタートしたのですが、新しい企業であるシンクは一言で言えばベンチャー企業。私も含めスタッフの大半が同じではありますが、新たな仕事を新たな考え方で新たな方法で進めていきたいと考えていましたが、長くやっていた仕事を今まで通りのやり方で進めたいと考える社員もいました。しかし、近年は映像業界も大きく様変わりしています。映像の舞台はテレビからPCやタブレット端末などに変わり、一般の方が低予算で気軽に動画コンテンツを制作、公開できる時代です。今までと全く同じ考えでいればいずれ行き詰まることは明らかなのです。新しい考え方ややり方に賛同できない方は去り、一方で賛同してくれる新しいスタッフが加わり、現在では株式会社スタジオシンク時代のスタッフは残っていません。それでも株式会社シンクはまだまだできたばかりの会社です。労務人事の部分なども含めて現在も新しい体制を構築している最中です。

海外でのビジネス展開にチャレンジ。遠く離れたヨーロッパのマーケットも舞台に

株式会社シンクでの新しいチャレンジとは具体的にはどんなことでしょうか?

海外のマーケットで仕事をしてみたいと思っていました。日本とは異なる仕事観やはっきりものを言いスピード感のある仕事の進め方などがいいなと思って。現在はモンゴルのウランバトールにあるテレビ局の中にサテライトオフィスをひとつ置いていて、現地のビジネスパートナーと一緒に仕事をしています。モンゴルで関わった仕事で一番大きなものは大規模タウン開発のヨーロッパ投資家向けブランディングとプロモーションです。北海道や札幌の企業でインバウンドなど海外に向けてのプランニングやプロモーションを行っている企業はたくさんありますが、大部分がアジア向けです。ヨーロッパ向けのプロモーションを得意としている企業は少ないのではないでしょうか。前身である株式会社スタジオシンクは純粋な“映像制作会社”であったのに対して、株式会社シンクは映像を得意としたプランニング会社と言え、ヨーロッパに向けた事業展開は今後もまだまだ拡大の余地があると思っています。

医療系の分野にも造詣が深いとお聞きしました

こちらは映像制作事業になるのですが看護師や理学療法士など医療系専門職の教材用動画や、患者向けの説明動画などの制作をしています。医大の先生から頼まれて始めた分野ですが、医療系動画の制作には高い専門知識が必要なのでかなりハードルが高く最初はとても苦労しました。ただ、教材用動画は一通り作ってしまった後はもう増やす必要がないのです。新しい技術が増えていくものといえばあとは医者の術式ですが、現在は術式の研修用教材としては映像ではなくVRが主流ですから。

大変だったわりにはマーケットに広がりがないということでしょうか?

いいえ、医療系映像制作に関してはコンシューマー向けの分野にマーケットを広げていくつもりです。例えば病気自体や薬に関する啓蒙の映像や、ヘルスケアや未病に関わる企画を提案していきたいと思っています。超高齢化社会を迎える日本では高齢者の生活やヘルスケアといった分野は新たなトレンドとなっていますからね。

海外ビジネスに特化し、新たな事業展開を目指す

御社の強みはどんな部分だと考えますか?

海外に対するアプローチの部分ですね。海外でのビジネス展開や海外向けのプロモーションが得意なので、今後もここを特化していこうと思っています。先ほどお話しした通りモンゴルにサテライトオフィスを置いている他にも北京をはじめ様々な国にビジネスパートナーがいますし、社内でも外国人スタッフが働いてくれています。彼らはとても優秀ですよ。日本語と英語と中国語を駆使して世界中の情報を集めることができます。現在は中国とハンガリー出身の2名の外国人スタッフがいますが、今後も優秀な外国人スタッフの採用を進めていきたいです。今はどの企業でも優秀な人材不足は大きな課題になっています。札幌や日本に限定して採用活動をしていたってなかなか優秀な人は集まりません。当社はテレワークもOKなのでゆくゆくはサテライトオフィスで世界各地に拠点を作って世界中でビジネス展開できる体制を作りたいと考えています。テレワークは人材不足の解消と経緯削減を同時に解消できる方法の一つだと思います。将来的には社内の外国人スタッフの割合を8割にしたいと思っています。

今後の展望を教えてください

当社の強みである“海外”という部分にとことん特化して、海外のビジネスで100の事業を作りたいと思っています。私がいる間でなくてもいいんです。色々な国で新しいことにチャレンジして世界中で100の事業部を立ち上げたいです。そのためにも世界各地にビジネスパートナーを増やしてパイプを強化し、拠点も作っていきたいですね。現在はモンゴルにオフィスがありますから1/100、残り99個です。10個でも50個でもなく、100個!それが今の夢です。

取材日:2019年2月12日 ライター:小山 佐知子

株式会社シンク

  • 代表者名:代表取締役 小泉 僚鶴
  • 設立年月:2016年3月
  • 資本金:1,000,000円
  • 事業内容:プロデュース事業・ラーニング事業・映像制作事業など
  • 所在地:〒060-0042 北海道札幌市中央区大通西16丁目2-3 ルーブル16 2F
  • URL:http://www.studiocinq.jp/

TAGS of TOPICS

続きを読む
TOP