職種その他2012.07.11

Art Trail meets Art Trial?

London Art Trail Vol.1
London Art Trail 笠原みゆき

はじめまして。笠原みゆきと申します。コウヅマさんにかわりLondon Art Trailと題して皆さんと一緒にロンドンのアートを体験していきたいと思います。

現在私は、移民の多い東ロンドンのハックニー区に住んでいます。ここには、コックニーと呼ばれるロンドン子以外に、トルコ人、クルド人、アイルランド人、カリブ人、ベトナム人、アフリカ人、インド人、バングラディッシュ人、パキスタン人のコミュニティがあり、また超正統派ユダヤ教徒のコミュニティはNY、イスラエルに次ぐ規模。日曜にもなると伝統的な黒い帽子、黒スーツに長い髭のユダヤ人男性の脇を、熱帯魚のように華やかなドレス姿のアフリカ人女性が通りすぎる、そんな光景も目にすることができます。

先日Jenny Matthewsという、ハックニーに住む移民の写真インタビュープロジェクト『Hackney All Nations』を続けている、ハックニー歴30年のイギリス人写真家に出会いました。“このプロジェクトは本当に面白い。何故ここ(ハックニー)に居るのかという理由が一人一人全く違う”と彼女は言っています。既に45カ国を制覇、世界中の全ての国の人をハックニーで見つけられたらと意気込む彼女。出版物におこした際はまた是非紹介したいと思います。

ハックニーはまたアトリエも多く、アーチストの住む地区としても知られているようです。アートイベントも毎日のように出没しています。大抵は無料です。

早速、最近行ったイベント[ T・R・I・A・L ](www.cosmicmegabrain.com/)を紹介します。

会場はとあるフォトグラフィー・スタジオ。イベントは7:30pm-2:00pmの一夜限り。入り口では列が出来ていて、強面スーツ姿のおにいさんが先頭の女性に“本当に入っていいのか?心の準備は出来ているのか?”と聞いています。女性は”何よこれー、コスミックメガブレインのエキショビジョンじゃないのー“と叫んでいます。“T・R・I・A・L Is this a warning?”と表に書かれた小冊子が手渡されます。ここで思い浮かぶのはフランツ・カフカの審判(The Trial)でしょうか。何やら少し不気味な感じになってきました。

Jim Woodall/Sweetheart, don’t be sad...

Jim Woodall/Sweetheart, don’t be sad...

最初に目に入ったのはJim WoodallのSweetheart, don’t be sad...コンクリートブロックがトーテンポールのように積み上げられ、路上のゴミと新聞紙が段ごとに噛ませてあります。コンクリートには実際、静的破砕剤と呼ばれる時間を掛けて膨張する力で硬質な対象物を破砕する薬剤が含まれて、周りには柵も何もありません。これは危ないなあと思っていた矢先、パンという音とともに中程のブロックに亀裂が入り、砂埃が辺り一体を曇らせました。作品のすぐ近くでワイン片手におしゃべりをしていた女性が、端正な顔を引きつらせトイレに駆け込んで行きました。

Fantich and Young/Duble Games, Red in Tooth and Claw

Fantich and Young/Duble Games, Red in Tooth and Claw

続いてこちらはFantich and YoungのDouble Games, Red in Tooth and Claw。この天井から吊るされた登り綱、よく見るとカッターの刃でできていて、50000個のシェフィールド製のカッターの刃を繋げたもの。

暫くすると照明が落とされ中央のステージにEmer O’BrienのBarbaraが現れました。

Emer O’Brien/Barbara

Emer O’Brien/Barbara

ガスバーナーが教会の祭壇にある蝋燭のように並べられた器械にコードでコンピューターが繋がれています。音楽が流れると音に合わせて炎が揺れ動く。実はこれ、物理学の実験器具でハインリッヒ・ルーベンス博士が1904年に発明したRuben’s Tubeを模したもの。音楽に合わせた炎のダンスを見ていると何だか神聖な気持ちにさせられます。

Ben Fowler/New-Neolithic Melon

Ben Fowler/New-Neolithic Melon

次にスポットライトが当たったのはBen FowlerのNew-Neolithic Melon 見ての通りギロチン台です。 ごろりと横たわる大きなスイカに、アーチストによって刃が振り下ろされると歓声が上がります。ぐしゃっりと嫌な音がしたので思わず、うわっ、リアルと叫ぶと隣に居た人に“欧州のラジオ番組では人の頭を割る音の再現にスイカを使う伝統があるのだよ。”と言われました。

アートパフォーマンス後にスイカに集まる人々

アートパフォーマンス後にスイカに集まる人々

パフォーマンスが終わると皆がスイカを求めてわらわらと集まっていきます。夏はやっぱりスイカですね。

コスミックメガブレイン(www.cosmicmegabrain.com/)のキュレーターの一人、フランチェスカは、“T・R・I・A・Lはシリーズ化するつもり、次は9月”とのこと。 次回がまた楽しみです。

※コスミックメガブレインのサイトは安全性が確認できていないたURL表記のみとさせていただいております。ご了承下さい。

Profile of 笠原みゆき(アーチスト)

笠原みゆき

©Jenny Matthews

2007年からフリーランスのアーチストとしてショーディッチ・トラスト、ハックニー・カウンシル、ワンズワース・カウンシルなどロンドンの自治体からの委託を受け地元住民参加型のアートを制作しつつ、個人のプロジェクトをヨーロッパ各地で展開中。
Royal College of Art 卒。東ロンドン・ハックニー区在住。

ウェブサイト:www.miyukikasahara.com

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