WEB・モバイル2010.05.06

陶芸に見る東京とNYのクリエイティブ

Dig It! NYC Vol.19
Dig It! NYC 藤井さゆり
12th Tokyo-New York Friendship Ceramic Competition

12th Tokyo-New York Friendship Ceramic Competition

クリエイターなら一度は興味を持ったことがあるかもしれない、陶芸。 私も一度やったことがあり、集中するし面白いのですが、結構難しいんですよね。それに、かなりクリエイティブ度も高いのです。

先日、タイムズスクエアから近くの57丁目にある日本ギャラリーで「12th Tokyo-New York Friendship Ceramic Competition」という、NYと東京から応募された陶芸作品のコンペティションが行われました。「陶芸作品を通じたNYと東京の文化的連携の促進」という目的のもと1996年から始まり、今回で12回目。

カルチャー、ライフスタイルは似ている側面もありながら、それぞれ特殊な個性を持つ大都市、東京とNY。両都市から出品された約100点の陶芸作品は、プロ、アマ問わないとは言え、クオリティが高く、かつオリジナルでユニークなものが数多く揃いました。

とくにアメリカ人の作品にユニークなものが多く、私にとって「陶芸=渋いデザインの茶器や湯飲み」というイメージがあったので「これって陶芸?!」というものも。両都市のクリエイティブの表現の違いが見られ、非常に興味深いものでした。

Takuro Kuwada ”Funpun”

Takuro Kuwada ”Funpun”

私が気に入った作品は、こちらの作品。 グランプリを惜しくも逃してしまいましたが、First Prizeとして入賞。日本人の作品です。基本シンプルなのですが、このシェイプ、美しいの一言に尽きます。どうでしょう、この器に水を張って桜の花びらを浮かべるのは…。剣山を置いて普通にお花を生けるのもよさそうです。

Kristen Wicklund “Lace Bowl”

Kristen Wicklund “Lace Bowl”

こちらはアメリカ人の作品。 レースのボウルだそうです。持ってみるとわかるのですが、とても軽い陶芸作品。

 
D.J. Harry Fairtlough “A Three Dimensional Picture”

D.J. Harry Fairtlough “A Three Dimensional Picture”

こちらもアメリカ人の作品。私の陶芸に対するイメージを払拭した「アメフトの試合を陶芸作品にした」というもの。この感覚、日本人ではないと思います。細部まで細かく創られていて、選手の躍動感が伝わってきます。

 

上記2作品は賞に入っていないのですが、個人的に面白いと感じたので、ご紹介してみました。

入賞作品は日本人のものが多く、技術が高いのは本場である日本のほうなのだとは思います。日本人の作品には、職人芸にも通じる作品の形状や、わびさびを感じさせる色合いがたいへん素晴らしく、実際に家のリビングに置きたいな、と思わせるものが結構ありました。反対に、アメリカ人の作品には創作における自由さがうかがえました。

陶芸作品というと、「心を無にしてろくろを回す」というような、ある種極めなければならない芸の道のようで敷居が高い気がしますが、英語で陶芸は“セラミックアート”。NYでアートは人々にとって身近なものであり、誰でも気軽に始められます。アメリカ人の作品からは「面白いものを、自分が創りたいものを、セラミックで表現してやろう」というアーティストの気合いが感じられました。だからこそ、アメリカ人の作品はアートの要素が高く、自由度が高いような気がします。

もちろん、東京とNY、どちらの作品にもそれぞれの素晴らしさがあります。今回、このコンペティションは、陶芸は自分が思ったよりも自由度が高いのだと気づかせてくれました。 私の持っていた先入観「陶芸=渋い茶器」だけではなかったように、当たり前だと思っていたことはもしかしたらそうではないかもしれない。そう疑ってみると、今までとは違う新しいクリエイティブに出会えるのではないでしょうか。

クリエイターのみなさま、新しい趣味として陶芸を始めてみる、というのはいかがでしょう。陶芸を通じてまた新しいアイディアがひらめくかもしれません。

CaFa-Ceramic Artist Friendship Competition www.cafaceramiccompetition.com

Profile of 藤井さゆり

藤井さゆり

東京生まれ、アメリカ在住。日本とアメリカでの職務経験あり。
東京丸の内にある公益法人にて8年間勤務の傍ら、友人が企画したクラブイベントのフライヤーや、CDジャケットのデザインを行う。
公益法人では「地方の街づくり・街おこし」支援事業の一環で、ウェブサイト業務に携わる。 公益法人退職後、2004年より4年間、都内商業施設のサイト更新・管理、販促サイトのキャンペーンページ企画と取材・撮影を含めたライティングワーク、ウェブデザインを経験。
2008年ニューヨークに移住。ニューヨークではウェブマーケティング、サイト管理を企業にて経験、それと共にウェブデザインとライティングワークをフリーランスとして行う。現在は日本の着物をインスパイアしたオリジナルTシャツブランド「Foxy Lilly」を立ち上げ、オーナー兼デザイナーを務める。
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