甘酸っぱくて優しい味わいの、ちょっと不思議な青春恋愛映画『子供はわかってあげない』

東京
フリーランス記者・作家
スーパーいわちゃんねる!クリ目版
岩崎

30代に突入してから生クリームたっぷりかけたパンケーキのような甘いものがダメになったが、食べ物に限らず映画やドラマでも同じ現象が起こるようになった。純愛1000%のあま〜い作品を見ると、原因不明の体調不良に襲われる。これがアラサーぼっちの生態である。

『子供はわかってあげない』も、ポスターの雰囲気で「そっち系か……」と思い込んでしまった。レビュー書きます!なんて言わなきゃよかった、と後悔しながら見てみたら……

冒頭に流れてきたのはなぜか美少女アニメ「魔法左官少女バッファローKOTEKO」。しかもセメント伯爵と呼ばれる変な生き物と子どもたちと感動の再会シーンで、恐らく原作(があるとすれば)ファーストシーズンで1番盛り上がるところのはず。

あれ? 作品間違えた? と不安になりながら見ていると、そのアニメを見ながら目を潤ませている朔田さん(上白石萌歌)が登場。

なーんだ! 主人公オタクじゃん! こっち側の人間じゃん! よかったー! と安心していたのも束の間、次のシーンでは夏休みの部活で美しい背泳ぎを見せ、引退を控えた3年生と並んで2年生唯一の大会出場者であることが知らされる。

えっ? 運動神経抜群でオタク? そんなのアリ? 聞いてないよー!

そんな中、朔田さんが屋上でKOTEKOの絵を描く門司くん(細田佳央太)に出会う。同じアニメを愛するもの同士、一瞬で意気投合しオタクトークが止まらない。線が細くて大人しい門司くんは、明らかにこっち側の住人である。

そうかそうか、仲間ができてよかったね……と思っていたら、朔田さんが門司くんの家にお邪魔することに。門司くんの両親は不在。2人の間に何が起こってもおかしくない状況である。

開始早々フラグ立てやがったな!! リア充爆発しろ!! と思って構えていたら、朔田さんが持っている謎のお札と同じものが門司くんの家に大量にあるのを発見。まさかのミステリー展開に。

謎のお札は、ある日朔田さんの実の父から突然送られてきたもの。実は朔田さんの両親は朔田さんが5歳になるまでに離婚しており、現在同居しているお父さんはお母さんの再婚相手だった。「実のお父さんに会ってみたい!」と思い立った朔田さん。門司くんのお兄(お姉?)さん・明大(千葉雄大)の力を借りて、お父さんを探しに行く……。

おや? 想像していた青春恋愛映画と違うぞ? 途中で門司くんフェードアウトするし。だけどなんだかワクワク。

離婚した親を持つ子どもは、一度は離れてしまった親に会ってみたいと思うものである。私も実は母子家庭で、一度だけ父が働く職場にこっそり行って遠くからその姿を見たことがあるが、母に「パパ元気そうだったよ」とはすぐには言えなかった経験がある。悪いことをしているわけではないのに、その事実を母が知ったらどのような気持ちになるか予想できなくて謎の遠慮があった。

親同士にとって別れたパートナーは他人だが、子どもから見たら血のつながった親。一緒に暮らしている家族は大事だけど、たまには向こうを心配することを許してほしい。朔田さんのそんな気持ちに共感してしまって、実の父に再会してからの後半パートは涙腺崩壊しっぱなしだった。

朔田さんの実の父・友充(豊川悦司)はとある宗教団体の教祖だったが、訳あってとある場所に身を潜めていた。部活の合宿と嘘をついて父と過ごす朔田さん、そして娘を知って理解していくことで段々と父になっていく友充の姿にほっこり、そしてちょっぴり切ない。

あるトラブルで音信不通になってしまった朔田さんを心配した門司くんが友充の家を訪ねるが、友充が一升瓶を出して「君が私から美波をさらっていくからだよ、飲みなさい」と圧をかける。これは俗に言う娘かわいさゆえの「娘は嫁にやらん!」の一種だが、恐らく再婚した方の新しいお父さんからはこのセリフは出てこないだろう。そして友充の圧に負けじと挑む門司くん、かっこいいぞ!

……あれ? まだ告白とかしてなかったよね? お父さん落ち着いて! 門司くんストップ! と制止してくれる人はいない。シュールだが微笑ましいやり取りが続く。そういえば、女の子はお父さんに似た人を好きになる傾向があるという話を聞いたことがあるが、門司くんと友充もどこか似てるかも? と考えてみたり。

 

で、結局朔田さんと門司くんの関係はどうなるのか!? 結末はぜひ映画館で。

 

 

原作は田島列島氏が手がけた同名のマンガ。劇中で朔田さんが「何でもかんでもマンガをアニメ化すんなよ」と発言しているが、とんでもないメタ発言のブーメランである。

監督は「おらおらでひとりいぐも」の沖田修一氏。現実とファンタジーが混ぜ合わさり、訳ありの人たちが織りなすどこか不思議であたたかみのある世界観を見事に表現した。

上白石萌歌ちゃんのフレッシュさ、細田佳央太くんの陰キャな動き、豊川悦司さんのワイルドさはもちろん、ぜひ注目してほしいのは千葉雄大さんのファッション。性転換をした男性役ということで、てっきりケバい化粧に派手なワンピースを着てくるのかと思いきや、表参道にいそうなナチュラル系とトラッド系を足して二で割ったようなオシャレスタイル。う、美しい……。

この映画、記事冒頭のように食べ物に例えるなら「缶詰のパイナップルをトッピングしたヨーグルトゼリー」または「みかんが入った牛乳寒天」である。甘酸っぱいが優しい味わいで、安心して楽しめる。

 

8/13にテアトル新宿で先行公開し、8/20に全国公開とのことなので、残暑をさわやかに吹き飛ばす一作になること間違いなし。エンドロールの最後に超重要な(?)メッセージがあるので、最後までご堪能あれ。

あ、制作サイドの皆さま! 魔法左官少女バッファローKOTEKOの完全版はDVD&ブルーレイの収録特典になりますよね!? ぜひ入れてください! お待ちしております!(笑)

 

 

『子供はわかってあげない』   

8月20日(金)全国ロードショー

🄫2020「子供はわかってあげない」製作委員会 🄫田島列島/講談社

配給:日活

 

出演:上白石萌歌 細田佳央太

千葉雄大 古舘寛治 / 斉藤由貴 / 豊川悦司

監督:沖田修一

脚本:ふじきみつ彦 沖田修一

音楽:牛尾憲輔

原作:田島列島『子供はわかってあげない』(講談社モーニングKC刊)

企画・製作幹事:アミューズ

制作プロダクション:オフィス・シロウズ

公式サイト: https://agenai-movie.jp/

プロフィール
フリーランス記者・作家
岩崎
フリーランス記者・作家。メディア関係の仕事を経て、書いて撮って編集・デザインして発信できる「平面系マルチクリエイター」を目指す平成元年生まれ。巳年・蠍座の女。本家ブログ&連絡先は「スーパーいわちゃんねる!」で検索。宮城県出身、東京都在住。身体能力のピークは高校2年生。こんな青春したかった。

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