WEB・モバイル2018.09.12

『真のパートナー』を目指す

名古屋
株式会社テラ 代表取締役 藤田正彦 氏
「伝説の営業マン」と呼ばれたサラリーマン時代を経て、⽣まれ育った名古屋で株式会社テラを起業した藤⽥正彦(ふじたまさひこ)⽒。アナログからデジタルに移⾏する時代の波に乗り、20年以上にわたって名古屋のクリエイティブ業界を牽引してきました。右肩上がりの成⻑の源となった同社のビジョンや、成⻑するために実践してきたこと。 さらに藤⽥さんが個⼈活動として⾏っているさまざまなボランティア活動や、クリエイターに対する熱いメッセージを伺いました。

⼊社わずか1年で営業として全国年間優勝。

独立を果たす前のキャリアをお聞かせください。

学⽣時代はデザイナーを志していたのですが、アルバイト先企業の専務から声をかけられて就職することになりました。
その企業は、デザイン系の商材や機材を製造・販売している国内の最⼤⼿。企画営業として1年後には社内コンテストで全国年間優勝をすることができました。

どのようなスタイルで営業活動を行っていたのですか?

他の営業と違ったのは、二つです。一つは、お客様のためになりたい気持ちが人一倍強かったこと。
もう一つは常に新しいモノを⾃分で探し、世に広めていったことです。
例えば屋外広告などで使われる「カッティングマシン※1」を日本語対応される前から仕入れて販売。
DTPとしては、CMYKの4⾊分解してフィルム出力する「イメージセッター※2」を実際に活⽤してパソコンから出⼒をしたのは私が最初です。
当時は印刷⼯程が今より複雑で、納品までに何週間もかかるのが普通でしたが、作ったDMがわずか数日で手元にあった時の驚きは今でも覚えていて、「時代は変わる!」と確信しました。

※1 自分で作成した文字やデザインのデータを付属のペン型カッターでカットする機械です。
※2 印画紙や印刷用の製版フィルムなどを出力する装置。

アナログからデジタルへと変わっていく時代の先駆けだったのですね。

当時のDTPはデジタルで扱える書体が明朝とゴシックの2種類しか無く、⽂字の縦組みもできない状態でしたが、確実に時代が変わることを信じて「なんとかしなければ!」と全国の営業会議でDTP時代に向けた対応を提案しました。
それがきっかけとなって全社の舵取りは変わっていったのですが、私が担当していた名古屋では社内にDTPに明るい⼈材がいなかったため苦労しました。
「私1⼈で3⼈分の売り上げをつくりますから!」と支店長を説得し、2名の部下を勉強させてメンテナンスやサポートができる体制を作らせてもらいました。
また、「Macユーザー会」という勉強会を⽴ち上げ、作品展や講師を招いた定期的な勉強会を⾏い、DTPの普及に努めました。Macユーザー会はいつしか1000⼈規模になり、人のネットワークが独⽴への⾜がかりとなりました。

独立の具体的なきっかけとなった出来事はありますか?

営業成績を認められ、東京への栄転を打診いただいたことがきっかけです。
この会社が大好きで、役員になることを目標に16年間勤めてきたのでとても嬉しかったのですが、私が上京すれば名古屋で築いてきたネットワークは消滅してしまいます。
深く悩んだ結果、名古屋に残って独⽴することに⼼を定めました。
会社の看板を持たずに、私個⼈の⼒でどのくらいやれるかを試してもみたかったのです。

クライアントが抱える課題を解決するための『真のパートナー』でありたい。

創業当時から現在までの流れをお聞かせください。

創業してすぐに⾚い軽⾃動⾞を10万円で購⼊し、それが私にとっての最初のオフィスになりました。
⾃宅にかかってきた電話を携帯に転送し、種まきのために⾛り回る毎⽇。
サラリーマン時代は毎⽉数千万の売上げをあげていた私でしたが、最初の2ヶ⽉は数千円の請求しかあがりませんでした。
しかし、5ヶ⽉目くらいから仕事が集中し始め、約1年後には法⼈化。
そこからの20数年はDTP、そしてWebの広がりとともに右肩上がりの成⻑を遂げてきました。
オフィスも4回の移転を⾏ったのですが移転のたびに倍の広さになっていき、現在は社員数が30名を超える組織になっています。

藤田社長が大切にしていることや御社の強みをお聞かせください。

私が最も⼤切にしているのが、クライアントの『真のパートナー』になることです。
ただ外注として仕事を受けることに興味はなく、ブランドを⼀緒に築き上げていきたい。
クライアントが抱える課題を解決するためのパートナー的存在でありたいと考え、今も伝え続けています。

当社の強みは、タグラインに記載している「Communication」「Design」「Network」の3つに集約されています。
コミュニケーションこそ当社の主軸であり、普遍的に社会に求められるものです。当社の使命は、⼈と⼈、⼈と企業をより良いかたちで繋ぐことです。
そして、目の前のさまざまな課題を解決するためのデザイン⼒にもこだわり続けています。
デザインはもちろん、アイデアやエンジニアリングの⾯でも全国に通⽤するレベルだと⾃負しています。
また、信頼しあい協⼒してくれる他業種のエキスパートとの強いネットワークを駆使して、ビジネスをワンストップで展開できる体制を整えています。
クリエイティブ施作だけではなく、コンサルティングの依頼が多いのも当社の特⻑であり強みです。

常に新しいものを取り入れていくことへのこだわりはありますか?

当社はWebが強いと思われていますが、DTPが主の頃から新しい技術を積極的に取り⼊れることで成⻑してきました。
メディア⾃体のありかたも変わっていくでしょうから、当然新しいものを取り⼊れる姿勢は持ち続けています。
その⼀⽅で、すぐ消えていくものも多いです。
なんでもかんでも取り⼊れるのではなく、しっかりと⾒極めることが必要だと考えています。

クリエイターが持つスキルを「自分が住んでいるまち」に活かしてほしい

御社の今後の展望についてお聞かせください。

名古屋には、9年後にリニアが開通します。そこで懸念されているのが、⼈材が東京に流出してしまう「ストロー現象」です。
しかし、私は「逆ストロー現象」もあるのではと考えています。
⾃然が多くて住みやすく働きやすい名古屋で、じっくりと仕事に向き合える環境を整えれば、きっと東京や各地からクリエイターが集まってくると思います。
会社の規模として無理に拡⼤する予定はありませんが、これまでのように質を落とさず、ゆっくり成長できればいいですね。

また、会社を⽴ち上げて20数年が過ぎました。
私⾃⾝もサラリーマンなら引退する時期が近づいていますので、次の世代にバトンを渡す動きを進めています。
その⼀⽅で、⽣まれ育った名古屋をより良くする個⼈活動を精⼒的に⾏っています。

どのような活動をされているのですか?

『ナゴヤを感性育むクリエイティブなまちにするために』をテーマに、名古屋をさらに魅力ある都市にするための取り組みを⾏っています。
例えば名古屋市には、かつては“東洋⼀の運河”と称された中川運河がありますが、近年は忘れ去られた存在でした。
その運河や倉庫を活⽤し、アートやクリエイティブの⼒で魅⼒的な⽔辺空間に再⽣させたいと活動する⼀般社団法⼈「中川運河キャナルアート」の理事⻑を務めています。
それ以外にも全国の⼥⼦学⽣が都市や建築、インテリア、プロダクトなどの卒業制作でトップを競う「デザイン⼥⼦No.1決定戦」の実行委員や、誰もが参加できる「みんなのファッションショー」の代表をしています。
お正⽉に突かれる東別院の「初鐘」に国際的なアーティストが⼿がける「D-K(デジタル掛け軸)」を組み合わせたイベントの実行委員長&総合プロデューサーも⾏っています。「東別院 初鐘×D-K Live デジタル掛け軸」と言うこのイベントは6年目、毎年数万人の方々にご来場いただいています。

これらのボランティア活動においても、私の考えに共感してくれた当社のスタッフ達がデザインやクリエイティブの⾯で気持ち良く協⼒してくれています。

最後に、クリエイターへのメッセージをお願いします。

みなさんには「⾃分の生まれたまち」や「住んでいるまち」があると思うのですが、その地域の発展を「誰かがやってくれている」とか「誰かがやるでしょう」と言える時代は、とうに過ぎていることを感じてほしいです。
ほっておいたら、クリエイティブな仕事は東京だけに集中してしまうかもしれません。
『⾃分が関わらなくちゃ!』『⾃分には何ができるのか?』という意識でまわりを⾒渡してみてください。
デザインやクリエイティブの⼒を必要としている団体や人たちが、きっと⾝近にいるはずです。
そこに⾃ら⼿を上げて、できる範囲でいいので魅⼒的なまちづくりに貢献して欲しいと思います。

取材日:2018年7月25日

株式会社テラ

  • 代表者名:代表取締役 藤田 正彦
  • 設立年月:1996年10月
  • 事業内容:コンサルティング(CI、VI/採用、コミュニケーション/メディア戦略)/Webブランディング
         Web戦略コンサルティング/Webプロモーション企画/ソーシャルメディアのコンサルティング・企画・運営
         コンテンツ企画・設計/デザイン制作/システム設計/サイト運用/サーバ構築・保守
         印刷物の企画・編集・デザイン制作/サインボードや車輌などのデザイン・施工/展示会の企画・デザイン・施工
         ビデオ映像の企画・撮影・編集
  • 所在地:〒460-0011 名古屋市中区大須4-1-18 セイジョウビル3F
  • TEL:052-684-6611
  • URL:http://www.cdn-tera.co.jp
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