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オリジナルブランドの展開から高度人材育成まで

京都
株式会社アイデアスプラウト 代表取締役 寺井 俊裕 氏
大学でプロダクトデザインを学んだのち、フリーのデザイナーとして活動。「”いのち”と”くらし”を豊かに彩るお土産」をコンセプトとした、持ち運べる鏡台、化粧品箱のデザインを手がけたのをきっかけに、大学を卒業した2016年10月に会社を設立した寺井俊裕(てらい としひろ)さん。自社ブランド事業やデザインコンサルティングと並行して、国境を越えて活躍できる「クロスボーダー人材」の育成プロジェクトにも参加しています。 自身がフリーランスとして苦しんだ経験から、会社を若手デザイナーのプラットフォームにしていきたいという寺井さんにお話を伺いました。

フリーランスから会社設立へ 自分の理想とする働き方を実現したい

まずは、社名の由来を教えてください。

「スプラウト」には、発芽や新芽、急速な成長という意味があります。アイデアが発芽して急速に成長するというイメージで社名を付けました。ロゴマークも、土壌の中から芽が出るイメージで、新しいでデザインやビジネスが生まれてほしいという思いを込めました。

起業のきっかけと経緯についてお聞かせください。

大学卒業後、元々はフリーランスでデザイナーをしていて、その時に現在弊社の常務である春山と出会いました。春山から東京で会社を作るのでデザイナーとして助言してほしいと言われ、そこで、今作っている「ケアバトラー」シリーズの化粧品箱のデザインを依頼されました。そのデザインが終わったタイミングで、せっかくいい物ができたので、京都にも会社を作ろうということになり、私が代表を務めさせていただくことになりました。「ケアバトラー」は元々、春山が描いていた構想を私が受け継いで始まった自社ブランドです。

元々、起業したいという思いは持たれていたのですか?

そうですね。春山と出会った頃から、いつか起業したいという話はしていました。また、フリーランスになったきっかけでもあるのですが、自分の理想とする働き方を実現したいという思いも強かったです。

寺井さんが理想とされている働き方というのはどのようなことですか?

青春ドラマではないですが、一つの目標に向かって仲間たちと日々努力し続けるようなことを実現したくて、そのための労働環境の整備など、一つずつ構築していきたいと考えています。

中学、高校とサッカー部でキャプテンや副キャプテンとして、大学では学園祭の実行委員長として、チームを作っていたことがとてもいい経験になりました。その環境構築は、デザインとはまた違った部分で生きがいにしたいものでもあります。

その国の生活や感性を深く知る必要がある“デザインコンサルティング”

現在の事業内容についてお聞かせください。

大きく分けると、自社ブランド「ケアバトラー」の事業と、デザインコンサルティングの2つです。コンサルティングの方はまだ始めたばかりなので、今後何が軸になっていくかはわかりませんが、今請け負っているのは、中国のアパレル企業が日本に支店を出すという案件です。中国で売っている物をそのまま日本で売ってもトレンドや感性が違うので、中国と日本の架け橋としてサポートしています。

デザインコンサルティングというのは、どのようなお仕事でしょうか?また、どのような展開を考えていらっしゃいますか?

普通のコンサルティングと大きく変わりませんが、例えば、中国の企業が日本に出店する場合の店舗設計の提案など、デザイン的な視点を生かしたコンサルティングです。

おそらく、依頼する側も、現状はどこの会社にコンサルティングを依頼すればよいかというのもわからず、大きな会社に依頼すれば間違いない、くらいの感覚だと思います。ただ、低コストだったり、より日本と中国のことをわかっている会社となると、依頼する側もすごく心強いでしょうし、私たちはそこを目指しています。

まだ設立したばかりなので、何でもやってみて、その中で自分たちの強みというのを強化していきたいと考えています。

中国のお客様とのやりとりはどうされているのですか?

弊社は、春山が代表を務めている「株式会社クロスボーダーエイジ」という会社とパートナー的に事業展開を行っているのですが、そちらに中国人のスタッフが2人おりまして、翻訳作業や、イベントで通訳が必要になった時などは同行してもらっています。

クロスボーダーエイジが主体となって取り組んでいる「クロスボーダー・エンゲージメント」というプロジェクトがありまして、弊社も参加しています。これは、ひと言で言うと「クロスボーダー人材の育成」ですが、クロスボーダー人材というのは、言語ができるだけではなく、例えば、日本と中国それぞれについて理解が深い人材です。その国の人の生活や感性を理解しているイメージですね。

このプロジェクトで、9月からまた4人中国人の方が来ます。日本語検定1級ですごく流暢に日本語が話せますが、日本でビジネスをするために必要なMBAを取ってもらおうと考えています。MBA大学院で勉強しながら会社で働いてもらう代わりに、学費や家賃などはこちらが全て負担するという一貫したプログラムを「エンゲージメント」と呼んでいます。言語関係はそういった方にお願いしています。私も中国語を勉強しないといけないと思いながらなかなかできず、今は情けないですがスタッフ頼りですね。

中国の会社が日本に来たい場合もあれば、日本の会社が中国に工場を作りたい場合もあるので、双方のやりとりに携わりたいと考えています。

ちなみに、アジア圏であれば他にも国はありますが、なぜ中国だったのでしょうか?

春山が中華圏のマーケティングリサーチをずっとやってきて、中国は大きなマーケットを持っていて日本に来る方もすごく多いので、今後も成長するだろうと考えてのことです。日中間のモデルができたら、韓国や東南アジア、アメリカというように応用できると考えています。

お化粧の時間と空間をデザインする「ケアバトラー」の誕生

先ほどのお話にもあったオリジナルブランド「ケアバトラー」が誕生したきっかけについてお聞かせください。

元々このブランドには薬箱と化粧品箱があります。海外の方が日本で化粧品や医薬品を買われますが、持ち帰った後に雑然と扱われていたりするんです。例えば中国の一人暮らしの方はすごく家が狭くてお化粧専用のスペースがなかったりするんです。

また、中国の方は薬を詰め込むクセがありまして、タンスのような収納棚の3段くらいが全部薬だったりするんです。その中に日本から買ってきた薬も入れていて、いざ薬を飲もうとすると何が何かわからなくなり、間違った薬を子どもに飲ませるなど、年間40万人が病院に運ばれるということが起きてます。

医薬品の問題もそうですし、美しくなるための道具が雑然と扱われている現状に対して私たちで何かできないかと思い、収納箱を作って問題を解決したいと思いました。そこで、「”いのち”と”くらし”を豊かに彩るお土産」ブランドとして「ケアバトラー」を立ち上げました。

「ケアバトラー」は春山が名付けたのですが、生活のサポートや新しい提案ができるという、いわば心遣いの行き届いた「執事」(バトラー)のイメージですね。ロゴマークは、元々中華圏をターゲットにしているので、わかりやすく桜の紋章と水引で贈り物らしさを表現しています。

医薬品の飲み間違えのような問題が起こる背景には、例えば国民性みたいなところもあるのでしょうか?

それはやはりあると思いますね。中国には日本にあるような収納の技術がありません。日本には、見せる収納という考え方など、収納に対する美意識があります。

また、日本では、掃除や物を整理する人を達人とかプロと呼ぶことがありますよね。これは日本ならではの特徴で、外国を見ても家の中の掃除を専門にする会社なんてないですよ。国民性の違いもありますが、それを無理やり相手に押し付けるのではなくて、こういう収納をすると生活がより魅力的になるんじゃないかという提案を通して、国境を越えた新しい文化の創造を目指しています。

「ケアバトラー」のこだわりはどういった部分でしょうか?

意識したのは、表が展開する観音開きによって一覧できるところです。お薬の飲み間違いなどの問題の原因として、今までの薬箱ではパッと見た時の情報量が少ないので、医薬品パッケージの正面と上面が見えるように意識しました。 あとは、お客様が入れる物によって棚を動かして中をカスタマイズできるようにしています。折りたためるように全部マジックテープでくっついていて、お化粧の作法に合わせて自分の使いやすいように調節していただけます。競争力の確保や、類似品の防止として、意匠登録と実用新案は取らせていただいています。

なるほど。日本でも十分に需要がありそうですね。

中華圏だけでなく、実際に日本人女性のお化粧空間を見ると、昔は鏡台でしていたのが、今はダイニングテーブルや洗面台でされていることが多いです。お化粧は美しくなるための行為ですが、その時間と空間があまりデザインされていないなと感じます。本当の意味で美しくなるためには、お化粧をする時間と空間も美しくないといけないというコンセプトの下、自分を見つめ直すというか、今日も頑張るぞと思えるようなツールになればと考えています。

外の生地はかなり丈夫な素材でできていますね。

着物の帯地を使っています。提案をもらった時に、開発の条件として、全てをリサイクル材で作りたいと言われました。というのも、クロスボーダーエイジの事業のメインがリサイクルで、使用済みの化粧品ボトルのアップサイクル品としてこの「ケアバトラー」を作ろうという一連のストーリーがあります。今は新しいバージン材を使っていますが、今後はリサイクル材で作れるような設計をしています。それに加えて、使わなくなった帯地などを利用することで、より商品としての魅力が増すと考えています。

なぜ化粧品のボトルかというと、日本で買った化粧品の使用済みボトルを中国や台湾などで不法に回収する業者がいて、回収したボトルに全然違う化粧品やアルコールなどを入れて販売しているんですね。そこでブランドの価値が下がるなどの問題が起きているのですが、どの会社も手を打てていません。それを私たちが代わりに集めることで、ブランドの維持をしていこうというところです。
※廃材などをただ再利用するのではなく、商品としての価値を高めるような加工を施すこと。

自身の経験から、若手デザイナーのプラットフォームを作りたい

今後の展望についてお聞かせください。

京都はとくに芸術系の学校が多く、学生や、いきなりフリーランスになったという若手のデザイナーも多いです。弊社はデザイン会社として、そういった人たちが集まるプラットフォームを作りたいと思っています。私自身、フリーランスで苦しんだ経験があり、というのも、社会に出たばかりのデザイナーは実績がないので、仕事をいただくことがすごく難しいんですね。ただ、若手ならではの感性やスキルというのは絶対にあると思うので、それが特徴と言えるような会社になりたいと考えています。若手のデザイナーが集まって何かプロジェクトを組んでみたり、案件を請け負ったりできればと考えています。現在、デザイナーは私一人ですが、今後はインターンなどで若いデザイナーや学生を入れて、いくつもプロジェクトを回すのが理想です。

「ケアバトラー」は今後どのように展開されるのでしょうか?

ブランド自体は、「“いのち”と“くらし”を豊かに彩るお土産」をコンセプトにしています。場所が固定されていたお化粧空間を、持ち運べる鏡台で楽しくする化粧品箱のように、新しいライフスタイルを提案する商品を作っていきたいと思っています。そして、お土産ブランドとして日本の生活の知恵や文化(収納の技術、収納を美とする考え方)を盛り込んでいきたい と考えています。

取材日:2017年7月26日 ライター: 垣貫由衣

株式会社アイデアスプラウト

  • 代表者名:代表取締役 寺井 俊裕
  • 設立年月:2016年10月
  • 資本金:1,500万円
  • 事業内容:インバウンド・トラベルリテール・越境EC・輸出向け製品・サービス開発・デザインコンサルティング
  • 所在地:〒606-8305 京都市左京区吉田河原町14番地 京都科学技術センター本館地階B11号室
  • URL:http://ideasprout.co.jp
  • お問い合わせ先:TEL)075-708-3148
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