映像2019.07.24

「実在の街コロール」

第47話
とりとめないわ
Akira Kadota
門田 陽

梅雨の最中。仕事(撮影)でコロールに行ってきました。と話した相手全員からコロールってどこ?と聞かれました。ですよね。僕も行くまで全く知らない所でした。

コロールは日本から南に約3000㎞にあるパラオで一番大きな街(首都はマルキョク)です。といっても人口約1万人。国全体でも屋久島くらいの広さです。このコロール、何といっても響きがかわいい。まるで中世ヨーロッパで一時代を築きその後滅びたかのような、或いはRPGで助けに行くヒロインが迷い込んだ架空の都市の名のような。理屈抜きで頭を撫でたくなるような名前です。

パラオは第二次世界大戦前は日本の委任統治下で悲しい歴史の地でもありますが、現在でもとても新日な国で「ダイジョウブ」や「イソガシイ」や「ツカレタ」や「マタアシタ」がその意味のままパラオ語として使われています。さらに今回仕事中に驚いたのはパラオの人たちの名前。日本人と同じ名前が性別問わずに付けられているのです。「ミノル」や「シゲオ」や「ナツコ」や「フジコ」や「カトウ」や「イノウエ」。さらにさん付けのままの名前もあって「オガワサン」や「ワタナベサン」という人もいます。その中でも一番は「サイトウサイトウサン」という男性。姓がサイトウで名がサイトウサン。日本なら漫才師のコンビ名のよう。あ!僕の大好きな現代歌人「斉藤斎藤」と同姓同名とも言えますね(笑)。いや~、今回のロケでの唯一の後悔。サイトウサイトウサンと名刺交換しとけばよかった(悔)。

次にコロールでのうれしい驚きは食べ物。
海外に行ってまず気になるのは三度の食事。
口に合わない国が多い中、コロールのご飯は安定していました。おいしかったです。肉も魚も野菜も日本と同じような調理法ですし、刺身は醤油とわさびで食べます。お昼のいわゆるロケ弁は東京でも人気が出そうな内容でした(※写真①)。スーパーマーケットに行って納得しました。豊富な食材と日用品。お菓子売り場はそんじょの日本の量販店よりも充実のラインナップでキャベツ太郎までありました(※写真②)!!


写真①

写真②

街なかはほどよい交通量。コロールには信号機はなく横断歩道の標識もどことなくゆるめのタッチ(※写真③)。明らかに日本から払い下げたと思しき中古車が多く(※写真④)、また荷台に乗る人たちの姿は古き良き昭和のあの頃のようです(※写真⑤)。ふと見ると小学生の姉妹が力を合わせて大きな木に登ろうとしています(※写真⑥)。スマホがなくても元気な声で遊んでは笑っています。いいものを見た感じ。もう探すことも忘れていた大切な落とし物を偶然見つけた気分です。ノスタルジックで幸せな心地。しかしこの国にもう一度行きたいか?と問われると、そうでもないかなとこの時までは思っていました。


写真③

写真④

 


写真⑤

写真⑥

撮影の後半、大雨の日。この街で還暦を迎える男性の誕生日会に伺いました。パラオの平均寿命は69才。大勢の人がドシャ降りの広場に集まっています。広場には屋根がある部分の他にテントが立てられ、その下には20~50代の女性(お母さん達)ばかりが10人程と主人公の男性が入っています。そこに大音量でカラオケが鳴り響き若い男(ミュージシャン風)が歌い始め、それに合わせてお母さん達が踊り出したのです(※写真⑦)。雨足が強まる中で異様な迫力満点のダンス。還暦の主人公はいつの間にやら蚊帳ならぬテントの外で濡れています。聞けばこの国の大半の家庭は典型的なかかあ天下なのだそうです。確かに見た目も声も女性のほうが大きいのです。さらにこのダンスは続きます。いつの間にかお母さん達は片手にお酒、もう片方の手には1ドル札を握っています。そして曲が終わるとそれまでテントで歌っていた若い男にそのお札を渡していくのです。人間カラオケマシーンです!いや~、お母さん達の激しさと逞しさにド肝を抜かれました。いくつになっても初めて見聞きすることは楽しいです。また来たい国のひとつになりました。

 

写真⑦

ところで、コロールの街は犬が多くて(※写真⑧⑨⑩⑪)、僕はどの犬のことも「コロ」と呼びましたとさ、という話はまたの機会に。

 


写真⑧

写真⑨

写真⑩

写真⑪

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